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ポリコレポリス魔法学校入学⑤
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「自分で術式を作ってみる?」
と言われたのは意外だった。魔法というものは呪文を知ることで初めて行使できるものだと思い込んでいた。
警察の代わりに私が聞き込みをしようにも、この姿では相手にされることもないだろう。そうアデ先生に相談すると、敷き詰められた本棚の中から一冊のページを私に開いて見せてくれたのだ。
なぜかうきうきとした様子のアデ先生から懇切丁寧に教えてもらい、ある程度のレベルまでは術式の理解ができた。
術式は魔方陣を伴い、回路を構築する。
魔方陣は設計図、術式は魔方陣に書き込んだ完成したものを指す。
魔力は例えるなら水で、水を流して受け止める皿が魔法の発動というものだ。
コンデンサーのように貯めた魔力を一気に放出する術式は、水で例えるならししおどしだ。
水が一定以上貯まれば、水の重さによって傾き、貯めていた水を一気に流す。
直列や並列、その他術式を構築する上での回路の組み方はあるが、水流の例えで実現できるものであれば、だいたいが可能だ。
これらによって、違う魔法を同時に使用することもでき、自分に成長の魔法と、幻覚の魔法を駆使し、自分が望んだ成長した姿に変貌することもできるというわけだ。
ただし、この術式というものは、魔力が送られている限り有効なものであり、魔力が途絶えれば途端に効力を失い、元の姿に戻る。
今回は大人の体に変装することが目的であり、元に戻ることは丁度良いといった具合だ。
私は自分で術式を組み、自らの姿を変えることにした。
年はある程度取っている方が良いだろう。この際だ、イメージしやすいようにアデ先生と同じ年にしてやることにした。
今回は単純に私の体つきをそのまま成長させた姿を作って見せると、アデ先生が見惚れた様子で涎を飲み込んだ。
「さて、鏡はあるか?」
「手鏡ならここに……」
そう言ってアデ先生が恐る恐る私に手鏡を渡してくる。手鏡を見れば、自分のイメージした通りの姿が映っていた。
「これはなんとも……、一言で言えば……、エロいな」
「めっちゃエロい」
引き締まった体に張り出た胸、幼さなかった顔つきが、引き締まり、気品のある顔立ちに変わっていた。
足が長く、癖の残った髪の毛は未だに愛らしさがある。私は思わず自分の姿に見惚れていた。
服装もなんとも、露出の多いスタイルの出た格好だ。
ふっくらとした唇が桜色に発色し、染み一つない。肌と整った顔立ちは、まさに理想を体現した姿と言えた。
「この姿なら使い勝手も良いだろう。ありがとう先生」
「アーシャちゃん。わりとマジで本気で私と恋人になって欲しいんだけど……」
切なそうな顔をしたアデ先生が、私の両手を包み込んでくる。
「ダメだ。元から私は性欲が強すぎる。一人の相手で満足するような質ではない。不誠実な行為でアデ先生を傷つけるわけにはいかないよ」
「別に愛人でも構わないんだけど……」
「まあ、いずれは考えておく。だが、性欲に翻弄されて自分を見失ってはいけない。私はそのような失敗をした両親の元に生まれたからな」
「でも、それでデートはしてくれるの? それっておかしくない?」
「お互いを知るためだ。理解と許容はどんな関係においても必要なことだ。理解をするまでもなく相手を切り離すという選択肢は私の中には無いよ」
「アーシャちゃんって本当に子供なの?」
「違う。私は子供ではないよ」
「じゃあ大人?」
「その話はデートの時にしよう。話すことが無くなるのも困りものだからな」
「そうね」
服装のイメージを定めて、水神級魔法のナチュラルフォースで植物由来の糸を使った服を作っていく。そして、相手に威圧感を与えないように落ち着いた配色を施していく。そうしていると、マーラが私の足に抱き着いてきた。
「ママ。私も連れてって」
マーラが寂しそうに私を見上げてそう言った。
マーラは少し涙目になっているようで、今にも泣き出しそうな雰囲気に私の方が参ってしまった。
私のズボンが涙で濡れて、じんわりと暖かくなってくると、私まで悲しくなってしまう
「仕方がない。分かった。ママと遊びに行こうな。ただし、私の傍を離れないって約束できるか?」
「うん!!」
「そうか。マーラは良い子だな」
私がマーラの涙をハンカチで拭うと、マーラは一転して嬉しそうに顔を変えた。
ふにふにとした柔らかい頬を撫でると、自分を必要としている子どもに、私はこれ以上酷いことはできなくなっていた。
「ねえ、その子にママって呼ばせてるの?」
アデ先生がニヤニヤとした顔つきで私の方を見ていた。
「そうだな。私はきっとこの子のママなんだよ。さて、じゃあ私は行くよ。遅くとも、六時くらいには帰ってくる予定だ。先に帰っていてくれ」
「行ってらっしゃいママ」
「ああ行ってくるよ」
正直なところ、もう、マーラを手放す気はこれっぽっちも無くなっていた。
私がこの子のママでいられる限り、優しくしてあげようと決めていた。
マーラと手を繋ぎ街へ繰り出すと、ちょうど、屋台がならび始める時間帯で、私とマーラは物珍しさに浮かれていた。
先に行方不明となった生徒たちの家を訪ねねばならないが、終わったら少しマーラを遊ばせても良いだろう。
一番最初に、ここから近いフィレンツェ家を訪ねることにした。
ーーーーーーーー
チャイムを鳴らして少しすると、家の奥から返事が聞こえ、ドアが開いた。
中から初老の女性が現れ、私を見て少し警戒した様子を見せた。
「どちら様でしょうか?」
「はい。突然の訪問に驚かせてしまい申し訳ありません。私共は探偵です。失礼ですが、行方不明となった生徒さんについてお聞きしたいことがあります」
「そうですか……。ところでその子は?」
「この子は私の娘です。私の息子も学校内で行方不明となり、探偵業を営んでいた私が自ら息子を探しているのです」
「私の息子は学校内で行方不明となったのですか?」
初老の女性は驚いた様子で、警察からなにも聞かされていないことが分かった。
「これは内密にしてもらいたいのですが、警察の調べではそのようです」
「やはり、警察は私に嘘をついていたのですね」
「誠にすみませんが、中に入れてもらってもよろしいでしょうか?」
「家の中ですか?」
「はい。あまり周りに聞かれては困ることなので」
「そうですね。おあがりください」
私の話を聞いている間、初老の女性は寂しそうな顔をしていた。
「すみませんが時間を急ぎます。警察は行方不明者の多くを隠蔽しているようです。警察からはなんと聞かされましたか?」
「ほとんど何も……」
「そうですか。息子さんは行方不明になる前に何か変わった様子はありましたか?」
「変わった様子というのは特に何も……」
「妙に機嫌が良かったり、家に帰る時間が変わったりなどはありましたか?」
「そう言われると、確かに楽しそうでした。研究会に入ってからというものの、家に帰るのも遅くなっていました」
家に帰るのが遅く……? 行方不明の条件と一致するな。なぜ、遅くなったのだ?
「何時ごろに帰宅するようになっていましたか?」
「9時とか10時とか。そのくらいです」
「なるほど。そんなに遅くなるまで、息子さんは何をされていたのでしょうか?」
「アレクサンダー先生の手伝いをしていたようです」
あのアレクサンダーか? 私も知っているあの先生が何かしたのだろうか?
教師は当然行方不明者の存在を知っていた。それで、夜の10時になるまで学校にいさせたとは、正直不自然な話だろう。
間違いなくアレクサンダーが怪しい。
「では、行方不明となった当日、お母様は何をされていましたか?」
「いつものように食事を作り、息子を待っていました。そういえば、あの日、妙な音が鳴り響いていました」
「妙な音?」
「はい。あれはとても大きな音でした。雨でもないのに雷のような大きな音がしてびっくりしたのを今でも覚えています」
「なるほど。他には?」
「いえ、思いつくことは何も……」
「分かりました。また、進展がありましたらお伝えしに来ます。息子さんを見つけるためにもお互いに頑張りましょう。今は生きていることを信じて待っていてください」
「分かりました」
話を終え、メモを整理し、次の家へと向かう。
全ての家を周り、調査を終えると、やはり、重大な共通点を見つけた。
誰もが研究会に所属し、帰りが極端に遅くなり始めていた。
それに、行方不明になった日の前後には、外で大きな雷のような音がしていた。
行方不明となった生徒たちの研究会の所属先は誰もが違うが、なぜだろうか、逆に妙な違和感があった。
ここまで所属する研究会が違うことがあるだろうか?
一人くらい被る可能性があってもいいのに、綺麗に所属先の研究会がバラバラだ。
これらは、意図的なもののような気がしてきた。
私はノートに調査をまとめて書き上げる。
と言われたのは意外だった。魔法というものは呪文を知ることで初めて行使できるものだと思い込んでいた。
警察の代わりに私が聞き込みをしようにも、この姿では相手にされることもないだろう。そうアデ先生に相談すると、敷き詰められた本棚の中から一冊のページを私に開いて見せてくれたのだ。
なぜかうきうきとした様子のアデ先生から懇切丁寧に教えてもらい、ある程度のレベルまでは術式の理解ができた。
術式は魔方陣を伴い、回路を構築する。
魔方陣は設計図、術式は魔方陣に書き込んだ完成したものを指す。
魔力は例えるなら水で、水を流して受け止める皿が魔法の発動というものだ。
コンデンサーのように貯めた魔力を一気に放出する術式は、水で例えるならししおどしだ。
水が一定以上貯まれば、水の重さによって傾き、貯めていた水を一気に流す。
直列や並列、その他術式を構築する上での回路の組み方はあるが、水流の例えで実現できるものであれば、だいたいが可能だ。
これらによって、違う魔法を同時に使用することもでき、自分に成長の魔法と、幻覚の魔法を駆使し、自分が望んだ成長した姿に変貌することもできるというわけだ。
ただし、この術式というものは、魔力が送られている限り有効なものであり、魔力が途絶えれば途端に効力を失い、元の姿に戻る。
今回は大人の体に変装することが目的であり、元に戻ることは丁度良いといった具合だ。
私は自分で術式を組み、自らの姿を変えることにした。
年はある程度取っている方が良いだろう。この際だ、イメージしやすいようにアデ先生と同じ年にしてやることにした。
今回は単純に私の体つきをそのまま成長させた姿を作って見せると、アデ先生が見惚れた様子で涎を飲み込んだ。
「さて、鏡はあるか?」
「手鏡ならここに……」
そう言ってアデ先生が恐る恐る私に手鏡を渡してくる。手鏡を見れば、自分のイメージした通りの姿が映っていた。
「これはなんとも……、一言で言えば……、エロいな」
「めっちゃエロい」
引き締まった体に張り出た胸、幼さなかった顔つきが、引き締まり、気品のある顔立ちに変わっていた。
足が長く、癖の残った髪の毛は未だに愛らしさがある。私は思わず自分の姿に見惚れていた。
服装もなんとも、露出の多いスタイルの出た格好だ。
ふっくらとした唇が桜色に発色し、染み一つない。肌と整った顔立ちは、まさに理想を体現した姿と言えた。
「この姿なら使い勝手も良いだろう。ありがとう先生」
「アーシャちゃん。わりとマジで本気で私と恋人になって欲しいんだけど……」
切なそうな顔をしたアデ先生が、私の両手を包み込んでくる。
「ダメだ。元から私は性欲が強すぎる。一人の相手で満足するような質ではない。不誠実な行為でアデ先生を傷つけるわけにはいかないよ」
「別に愛人でも構わないんだけど……」
「まあ、いずれは考えておく。だが、性欲に翻弄されて自分を見失ってはいけない。私はそのような失敗をした両親の元に生まれたからな」
「でも、それでデートはしてくれるの? それっておかしくない?」
「お互いを知るためだ。理解と許容はどんな関係においても必要なことだ。理解をするまでもなく相手を切り離すという選択肢は私の中には無いよ」
「アーシャちゃんって本当に子供なの?」
「違う。私は子供ではないよ」
「じゃあ大人?」
「その話はデートの時にしよう。話すことが無くなるのも困りものだからな」
「そうね」
服装のイメージを定めて、水神級魔法のナチュラルフォースで植物由来の糸を使った服を作っていく。そして、相手に威圧感を与えないように落ち着いた配色を施していく。そうしていると、マーラが私の足に抱き着いてきた。
「ママ。私も連れてって」
マーラが寂しそうに私を見上げてそう言った。
マーラは少し涙目になっているようで、今にも泣き出しそうな雰囲気に私の方が参ってしまった。
私のズボンが涙で濡れて、じんわりと暖かくなってくると、私まで悲しくなってしまう
「仕方がない。分かった。ママと遊びに行こうな。ただし、私の傍を離れないって約束できるか?」
「うん!!」
「そうか。マーラは良い子だな」
私がマーラの涙をハンカチで拭うと、マーラは一転して嬉しそうに顔を変えた。
ふにふにとした柔らかい頬を撫でると、自分を必要としている子どもに、私はこれ以上酷いことはできなくなっていた。
「ねえ、その子にママって呼ばせてるの?」
アデ先生がニヤニヤとした顔つきで私の方を見ていた。
「そうだな。私はきっとこの子のママなんだよ。さて、じゃあ私は行くよ。遅くとも、六時くらいには帰ってくる予定だ。先に帰っていてくれ」
「行ってらっしゃいママ」
「ああ行ってくるよ」
正直なところ、もう、マーラを手放す気はこれっぽっちも無くなっていた。
私がこの子のママでいられる限り、優しくしてあげようと決めていた。
マーラと手を繋ぎ街へ繰り出すと、ちょうど、屋台がならび始める時間帯で、私とマーラは物珍しさに浮かれていた。
先に行方不明となった生徒たちの家を訪ねねばならないが、終わったら少しマーラを遊ばせても良いだろう。
一番最初に、ここから近いフィレンツェ家を訪ねることにした。
ーーーーーーーー
チャイムを鳴らして少しすると、家の奥から返事が聞こえ、ドアが開いた。
中から初老の女性が現れ、私を見て少し警戒した様子を見せた。
「どちら様でしょうか?」
「はい。突然の訪問に驚かせてしまい申し訳ありません。私共は探偵です。失礼ですが、行方不明となった生徒さんについてお聞きしたいことがあります」
「そうですか……。ところでその子は?」
「この子は私の娘です。私の息子も学校内で行方不明となり、探偵業を営んでいた私が自ら息子を探しているのです」
「私の息子は学校内で行方不明となったのですか?」
初老の女性は驚いた様子で、警察からなにも聞かされていないことが分かった。
「これは内密にしてもらいたいのですが、警察の調べではそのようです」
「やはり、警察は私に嘘をついていたのですね」
「誠にすみませんが、中に入れてもらってもよろしいでしょうか?」
「家の中ですか?」
「はい。あまり周りに聞かれては困ることなので」
「そうですね。おあがりください」
私の話を聞いている間、初老の女性は寂しそうな顔をしていた。
「すみませんが時間を急ぎます。警察は行方不明者の多くを隠蔽しているようです。警察からはなんと聞かされましたか?」
「ほとんど何も……」
「そうですか。息子さんは行方不明になる前に何か変わった様子はありましたか?」
「変わった様子というのは特に何も……」
「妙に機嫌が良かったり、家に帰る時間が変わったりなどはありましたか?」
「そう言われると、確かに楽しそうでした。研究会に入ってからというものの、家に帰るのも遅くなっていました」
家に帰るのが遅く……? 行方不明の条件と一致するな。なぜ、遅くなったのだ?
「何時ごろに帰宅するようになっていましたか?」
「9時とか10時とか。そのくらいです」
「なるほど。そんなに遅くなるまで、息子さんは何をされていたのでしょうか?」
「アレクサンダー先生の手伝いをしていたようです」
あのアレクサンダーか? 私も知っているあの先生が何かしたのだろうか?
教師は当然行方不明者の存在を知っていた。それで、夜の10時になるまで学校にいさせたとは、正直不自然な話だろう。
間違いなくアレクサンダーが怪しい。
「では、行方不明となった当日、お母様は何をされていましたか?」
「いつものように食事を作り、息子を待っていました。そういえば、あの日、妙な音が鳴り響いていました」
「妙な音?」
「はい。あれはとても大きな音でした。雨でもないのに雷のような大きな音がしてびっくりしたのを今でも覚えています」
「なるほど。他には?」
「いえ、思いつくことは何も……」
「分かりました。また、進展がありましたらお伝えしに来ます。息子さんを見つけるためにもお互いに頑張りましょう。今は生きていることを信じて待っていてください」
「分かりました」
話を終え、メモを整理し、次の家へと向かう。
全ての家を周り、調査を終えると、やはり、重大な共通点を見つけた。
誰もが研究会に所属し、帰りが極端に遅くなり始めていた。
それに、行方不明になった日の前後には、外で大きな雷のような音がしていた。
行方不明となった生徒たちの研究会の所属先は誰もが違うが、なぜだろうか、逆に妙な違和感があった。
ここまで所属する研究会が違うことがあるだろうか?
一人くらい被る可能性があってもいいのに、綺麗に所属先の研究会がバラバラだ。
これらは、意図的なもののような気がしてきた。
私はノートに調査をまとめて書き上げる。
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