ヤクザ警察アーシャちゃん 異世界に転生したらやりたい放題

竹丈岳

文字の大きさ
23 / 76

ヤクザ警察24時⑤

しおりを挟む
 ハッと目を覚ますと、私は路地裏に運ばれていたようだ。

 周りにゴミが散らばりネズミが徘徊し、およそ、清潔さとかけ離れた場所に、私は寝かされていたようだ。そのおかげか、人も寄り付く印象がない。

 未だに頭がぼんやりとして、起きているのか寝ているのかさえ区別のつかない状態ではあるが、私の召喚獣は命令を遂行できたのだろう。

「すまない。起きた。ところで、あなたに名前はあるのか? これから呼ぶ時が大変だ」

「私は大衆のイメージから作られた存在。名前などありませんよ」

 私が起きたのを見て、武者が刀を納める

「イメージ?」

「この世界の東洋の者たちは私のように神速の使い手ですからな。そのようなイメージから私が召喚されたのでしょう。召喚獣とはイメージそのものですからな」

「東洋の人間はあなたのように強い者が多いのか。私の自信も無くなっていくな」

「ははッ。なんという謙遜。最高位である日神級の私を呼んだのですから実力は本物だというのに」

 武者は、鬼の面をカタカタと言わせて笑う。

「日神級? 召喚獣にもランク以外の分類があるというのか?」

「もちろんありますとも。日神級ともなれば喋ることはもちろん。自由意志を持ってして、疎通を図ることも可能ですからな。並みの術者では私を呼ぶことすらもできないでしょう」

「そうか。数字にばかり目がいっていたが、そうか。そういうことか。それなら少しは自信がつくというものだ」

「恐れ多くも私から一つ進言を。自信は慢心に変わりやすく、常に最悪の想定に対処できるようにすべきかと」

「そうだな。過度な評価は良くない。しかし、これからは反撃と行かせてもらはなくてはな」


 アレクサンダーの研究室に戻るが、やはり、既にもぬけの空だった。
 鳥かごに鳥の姿はなく、研究資料も無くなっていた。慌てていた様子が思い浮かぶほど、椅子や引き出しが投げ出されていた。

 しかし、私もここまでは想定していた。逃げたとなれば、不利な状況であるということを私に知らしめているようなものだ。
 奴を捕えるため、私は自分の姿を鳥に近づける。
 練習に慣れていないため、長時間の飛行は難しいが、短時間であれば滑空を繰り返して周りを見渡せるだろう。

 空高く飛び回り、逃げる奴の姿を大通りで見つける。手には大きな鞄を抱え、息を切らし、必死に逃げている様子があった。

 少し泳がせて、家に帰りついたところで目の前に降り立ち変身を解く。

 私は自分の服を素敵な中二服に変えて、鞄から警棒を取り出す。
 幼女の私が、素敵な笑みを振り撒いてあげているというのに、アレクサンダーは、私を見て、どこか怯えた様子で自分の荷物に引っ掛かって転んだ。

「どこへいかれるんですか? 先生?」

「くっ……!」

「おしおきの時間ですよ?」

 アレクサンダーがクロスボウのような物を取り出したので、重力場を強くして物ごと手を地面に叩きつける。

 それでも、しぶとく立ち上がろうとするので、私は姿を消す。

「クソッ! どこへ行った!?」

「教師が生徒に負けてちゃだめじゃないですか?」

 今度は後ろに回り込み、警棒でアレクサンダーの足をぶん殴る。
 転んだ拍子にアレクサンダーの腕が地面についてそのままへし折れたが、きにする必要もないだろう。

「ぐあっ!」

「生徒たちはどこへいます? 答えなさい」

 背中を踏みつけ、髪の毛を引っ張って頭を持ち上げ、警棒を首に引っ掛けると、そのまま強引に海老反りにさせる。

「だれが……! 言うものか……!」

「強情ですね。でも、強情な人は好きですよ? もっと叫んでください」

 アレクサンダーの背骨がミシミシと音を立てている。顔を真っ赤にして、私の体を掴もうと必死に腕を後ろに回そうとしているが手が届かないようだ。

「こんなことをしてただで済むと思うなよ!」

「おや? もう魔力切れですか。雑魚ですねえ。ところで、私も苦しい人生を送ってきましたから人の苦痛には敏感なんです。もっと苦痛を上げて私を楽しませてください」

 私は自分の体を成長させると、瀕死のアレクサンダーを引きずって、家に押し入り、風呂場に体を沈めさせた。

 衰弱したところで何度も持ち上げてアレクサンダーが息を吹き返すたびにまた沈める。
 それでも、口を割らないので、今度は煮詰めたコーヒーを漏斗で飲ませ続ける。

 コーヒー10杯も飲めばカフェインによる中毒症状が始まって心臓が異常な動きをしているころだろう。脳内物質であるセロトニンが低い体質であれば、このままアカシジアかパニック障害に至るはずだ。

 椅子に縛り付けられたアレクサンダーが体をよじり始める。

「私に何をした……!」

「おや? もしかして、体がそわそわしますか? 苦しくて辛くて、解放されるために死んでしまいたいと思いますか?」

「助けてくれ……! なんだこの変な感覚は!!」

「それはそれは……素晴らしい! それはおそらくアカシジアという症状です。カフェインの作用によってノルアドレナリンが大量に出たことによって、ドーパミンやセロトニンで制御しきれなくなった状態なんです。恐怖が凄いでしょう? どんな大男だってその症状には耐えられません。私も一度経験したことがあるから分かります。アカシジアはこの世の地獄です。なんだって恐怖そのものなんですから」

 アレクサンダーが子供のように泣き喚き始める。解離性の症状が出るまで追い詰められていた精神状態はセロトニンやドーパミンが低く維持されているはずだ。
 さらに、ナイフで切りつけ、痛みを神経に送ることで、セロトニンやドーパミンを消費させていく。

 暴れるせいで、縛り付けられた椅子ごとアレクサンダーは床に倒れる。
 頭を打ったようだが、そんなことに構う余裕すらもないようで、必死に助けを求めて叫んでいる。

「無駄です。今のこの部屋は何層にも重なる鉄の膜が覆っています。音が外に漏れることはありません。その苦しみから解放されたければ私に許しを請って、洗いざらい全てを話すことです」

「悪かった! 助けてくれ! 死にたくない!」

「良いでしょう。でも、その前に全てを話すことです」

「分かった話すから!」

 それからアレクサンダーは召喚獣となった生徒たちの行方を話していく。
 一つ何かを話すたびに、指を折って本当かどうか問いただすから、悲鳴が止むことはない。

 生徒たちはこの町の全体に解き放たれて私の監視の役目を追っていた。その鳥たちを集めて、私は召喚の解除を行っていく。

「研究室の隠し部屋から察するに、学校もなんらかの形でかかわっているのでしょう?」

「校長は私の研究を国に売って軍事利用するつもりだったんだ!」

「なるほど、いかにも三下が思いつきそうなことですね。しかし、どうやって警察の捜査を拒んだんですか? ろくに捜査もされていなかったようですが?」

「それは校長がやったことだ! 私は知らん! 早く治してくれ!」

「聞きたいことはそれくらいです。あとは、私の奴隷になりませんか? お茶くみ等の雑用に、財産の全てを私に対して共有する簡単なお仕事です。この条件が飲めれば治す方法を教えましょう」

「分かった!! なんでもするから!」

 アレクサンダーは、恐怖で頭が一杯だとでも言わんばかりに必死に私にそう訴えてくる。

「違うでしょう? 分かりました。アーシャ様でしょう?」

「わ……、分かりました……。アーシャ様」

「あと、素晴らしく美しいも」

「素晴らしく美しいアーシャ様……。お願いです。薬をください……」

「よろしい。では、治すための薬を調合してあげましょう」

 調子に乗った私は、次々にアレクサンダーに無理な要求をしていく。そんな要求が通るのも、このパニックの恐ろしいところだ。

 しかし、薬を調合するといっても、所詮はただの水だ。薬っぽく苦みを付け加えるために、そのへんでとってきた野草を少し煮詰めて飲ませる。

 薬と言って渡して飲ませると、アレクサンダーは少し落ち着いた様子を見せた。
 プラシーボ効果というやつなんだが、この症状にはある程度有効に働いてくれる。

 残念ながらアカシジアの症状に治す有効な薬は今までのところ無い。運動によってノルアドレナリンを消費する以外にないのだ。

「いつになったらこの症状は治まるんだ?」

「一日は無理でしょうね。軽くなるとしたら半日は必要です。それに、毎日運動は欠かさないようにしてください。じゃないとまた再発しますから」

「分か……、りました……」

「ちなみに、私を裏切ったらどうなるかわかっていますよね? またその地獄を味わうことになりますから」

「分かっている……」

「まっ、信じられないので、結局監視はおくんですがね」

 私がニヤニヤと笑っていると、アレクサンダーは煮え湯を飲まされたような顔で私に頭を下げる。

「私はこれからどうなるのだ……?」

「それはあなたの態度次第です。罪は償ってもらわないといけませんがね」

「くっ……」

 さて、後はこいつらだな。

 見渡せば、悪さばかりをしていたとされるクソガキが17人ほど倒れている。
 こいつらの更生も兼ねて私の元で働いてもらわねばならないし、とっとと起きてもらいたいのだが、十数分経っても起きる気配がない。

 水をかけて起こすと、ようやくクソガキどもが起き上がった。 
 いずれ、私がこの国の権力を握り差別をなくすためには沢山の手駒がが必要だからな。今のうちから教育しておきたい。

 クソガキの1人を蹴りつけ、挨拶をする。

「おはよう。クソガキども。教育の時間だ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

この世界、イケメンが迫害されてるってマジ!?〜アホの子による無自覚救済物語〜

具なっしー
恋愛
※この表紙は前世基準。本編では美醜逆転してます。AIです 転生先は──美醜逆転、男女比20:1の世界!? 肌は真っ白、顔のパーツは小さければ小さいほど美しい!? その結果、地球基準の超絶イケメンたちは “醜男(キメオ)” と呼ばれ、迫害されていた。 そんな世界に爆誕したのは、脳みそふわふわアホの子・ミーミ。 前世で「喋らなければ可愛い」と言われ続けた彼女に同情した神様は、 「この子は救済が必要だ…!」と世界一の美少女に転生させてしまった。 「ひきわり納豆顔じゃん!これが美しいの??」 己の欲望のために押せ押せ行動するアホの子が、 結果的にイケメン達を救い、世界を変えていく──! 「すきーー♡結婚してください!私が幸せにしますぅ〜♡♡♡」 でも、気づけば彼らが全方向から迫ってくる逆ハーレム状態に……! アホの子が無自覚に世界を救う、 価値観バグりまくりご都合主義100%ファンタジーラブコメ!

転生先はご近所さん?

フロイライン
ファンタジー
大学受験に失敗し、カノジョにフラれた俺は、ある事故に巻き込まれて死んでしまうが… そんな俺に同情した神様が俺を転生させ、やり直すチャンスをくれた。 でも、並行世界で人々を救うつもりだった俺が転生した先は、近所に住む新婚の伊藤さんだった。

借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる

しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。 いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに…… しかしそこに現れたのは幼馴染で……?

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

処理中です...