ヤクザ警察アーシャちゃん 異世界に転生したらやりたい放題

竹丈岳

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ヤクザ警察24時⑦

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 アレクサンダーによると、パーティーが開かれるのは夜の九時。
 しかし、入るには招待状が必要だそうだ。

 証拠を掴むにしてもまずは潜入だろう。姿を変え、体を成長させる。

 私の部屋を掃除させていたエイジャックスを無理やり連れ出し校長室を訪ねる。

「おい! なんで俺が!?」

「お前のことが好きだからだ。当然、いつでも手もとに置いておきたい」

「だからって俺には何もできないぞ! 魔力だって平均しかないし! ついて行ったって足を引っ張るだけだ!」

「やってみなくては分からないだろう? それに従順な手足が必要なんだ。他の奴らでは役に立たん」

「だからって!!」

「姿は隠してやる! 堂々としていろ!」

 扉をノックもなし開けると、驚いた校長が椅子から飛び跳ねた。

 脂ぎった、いかにもといった風貌に私は変な偏見を持ちそうになる。

「やってくれマーラ!」

「うん!!」

 校長の周りにあられもない姿をした3人の美女が現れる。
 普通は状況の飲み込めない事態であるはずだが、美女の誘惑によりなんの抵抗もなく陥落する。

「招待状はこれだよ! 今度は何をしてくれるんだい!?」

「縛りプレイなんてどうかしら?」

「いいねえそれ!」

 校長から差し出された招待状を奪い取り、美女たちが痴態を縛り上げる。

「ねえ、あなたの知ってる警察の弱みってなあーに?」

「あいつらの元長官がうちで働いているんだよ! 警察とはそれで懇意にさせてもらっていてね! 大概のことはもみ消してくれるんだ!」

「その元長官って誰なのかしら?」

「ここの副校長だよ!」

「そう。ありがとね」

 縛り上げた校長をそのままロッカーにしまい込む。用が終わったら助け出してやろう。民衆の目の前でな。

 9時に開かれるパーティーは、下水を通った地下にあるらしい。

 場所も招待状も受け取った。招待状に同封されていた仮面を付け、魔法で複製したものをエイジャックスに与える。

「なあ、本当に俺がついて行かなきゃいけないのか?」

「そんなに嫌なのか?」

 顔は良いくせにおどおどとした様子のエイジャックスの姿に、たまらなく私は可愛さを感じる。もう少し意地悪をしてみたい気持ちに駆られる。

「だって……、乱交とか殺人とか、普通ありえないだろ……」

「玄関の前で待っていれば良い。今回は確認をするだけだ。まだ計画さえも整っていないのだからな」

「そんな行き当たりばったりで校長を縛っているのか……」

「平気だ。お前は顔を見られていないし、私は姿を変えている。その気になればマーラの姿だって変えられる。リスクはそれほどではない。どのみちこの校長は証拠が固まり次第制裁を加える予定だ。監禁していようがそれまでバレなければ問題ない」

「証拠が手に入る保証だってないだろ? どうしてそんな危険を冒す必要がある?」

「君は実に頭が固い。物事にリスクの無いものなどありはしない。そのために最悪の事態を想定して回避をするのだ。それに、今の私には優秀なボディーガードもいるしな。身の危険など、それほど多くは無い」

「ボディーガードって……、俺か!? 無理だぞ! 俺なんかが勝てるわけがない!」

「さて、どうだかね?」

「クソっ……」

 私の言葉にエイジャックスは煮え切らないものを含んだ顔をしつつ私への不満を態度に出す。
 元々幸の薄そうな顔が、どんどんと陰を落としていく。そんな姿に私は少しだけ興奮していた。

 夜の9時を回ろうかとしている時間。下水から続く通路に金属質の扉を見つけた。

 開くと、さっそく2人の見張りが出迎えてくれた。

「招待状はお持ちで?」

「これだろ?」

 懐から取り出した招待状を見せると、見張りは何やらリストに書き込む。それが終わると私を中に通してくれた。

 エイジャックスが怯えてきょろきょろと辺りの様子を伺っているので、背中を叩いてやる。

「いっ!」

「堂々としてろ。でないと怪しまれる」

「分かってる……」

「どうだかな。とりあえずここで待っていろ。なぜここで待っているのか聞かれたら、下水の臭いにやられたとでも言っておけ」

「分かった」

「素直な子は好きだ。あとでご褒美をやろう」

「ご褒美?」

「何でも言え。好きなものをくれてやる」

「約束だからな。あとで、何を要求されても拒否するなよ」

「分かった。約束だ」

 頭をくしゃくしゃにしてやると、エイジャックスは不満そうな顔をして私を見送った。

 中に入る前から漂っていたが、扉を開けると本格的に甘ったるい臭いが嗅覚に纏わりついてきた。

 まだ、奥の方に扉があるというのに、そこを隔てていてもなお沢山の男女の嬌声がここにまで響いてくる。
 おそらく、体液の臭いを隠すために甘い香りを強くしているのだろう。

 更に進んで行くが、まだ殺人は始まっていないようだ。しかし、拘束された妊婦の女性と、近くに大砲があることからいずれそういったものが始まるのだろうと分かる。
 拘束された妊婦は助けを求めて叫んでいた。

 屈強な男の手によって妊婦の女性が大砲に込められようとしている。

 いや、もう始まるのか。クソッ。時間がない。ここで助けることになるか。

 ステージの裏から回り、屈強な男の肩を叩く。

「すまないが来てくれないか? どうにも怪しい奴がいる。警察か何かかかもしれない。仮面も付けずに私たちの様子を隠れて観察していた。だが、相手の体格が大きすぎる。助けが必要だ」

 私がそう言うと、屈強な男は、首を縦に振って付いてきてくれる様子を見せた。

 その屈強そうな男が、闇に重なった瞬間、

「気絶させてくれ」

「了解」

 武者が姿を現し、男の首に峰打ちを行う。倒れた男の下に簡単な魔法陣を描き、召喚獣へと姿を作り変える。
 小鳥となった男を、物陰に隠させる。

 今度は私が屈強な男の姿に変え、妊婦を抱えてステージの裏へと持っていく。

「落ち着け。助けにきた」

「助け!?」

「シー……」

「……」

「これからあなたの姿を男の姿に変える。そうしたら、あの扉を通って仮面を付けた男の子を見つけなさい。頭までローブを羽織った男の子です。その男の子に、この世で最も美しい女性から2人で家に帰るように言われたと言いなさい。それで分かります。分からなければ、また召喚獣に戻すぞと脅しなさい」

「分かりました……」

 妊婦の女性を招待客の一部に変装させ、出口まで送り届ける。

 私は一人で、奥の方へと侵入し、中の様子を探っていく。
 と、同時に部屋の構造を頭に叩き入れ、逃走経路を組み立てていく。

 そうしていると、主催者らしき姿がステージに立った。妊婦が逃げたことが分かり、室内が騒然とするかと思いきや、誰もが笑って代わりを出せと言うのだ。
 しかし、代わりが出せないことが分かると、また全員が行為に勤しみ始める。

「失礼ですが公爵、なぜ、誰も妊婦を追いかけないので? ここが見つかると危険なのでは?」

「私に言っているのかい? 公爵だなんて照れるな。そんな心配はしなくとも、ここの主催者は警察の長官だからね、誰も気にしないさ」

 状況を聞くため、下半身を曝け出した丸々と太った男に話しかける。が、あまりの体液の臭さに一瞬、鼻を顰めそうになる。

「なるほど。高貴な雰囲気がありましたので、つい、そう言ってしまいました。少々ここの臭いにやられて今は休んでいるのですが、気分が治ったらあなたとお相手させていただきたいものです」

「構わないよ。その仮面の下からでも分かるように君は間違いなく美人だ。こちらからもぜひと頼むよ」

 クソでも食っていたような口臭を発しやがるおっさんに探りを入れ終えると、私はすぐさま態勢を立て直すべく家に戻った。
 アデ先生は私の分の食事を作り終えて、私を待っていた。

「ただいま」

「おかえりなさい。どうだったの? 何か分かった?」

「主催者が警察だったことぐらいだな」

「警察!?」

「警察が絡んでいたことは分かり切っていたことだ。今更驚くな」

「でも、どうやって証拠を握るの? 誰も警察は捕まえられないよ?」

「何も捕まえる必要は無い。別の手段を考えてある。そのための準備がある。そのためには紙が必要だな」

「紙ならあるけど?」

「嘘も時と場合によっては真実にもなるからな。民衆に信じ込ませれば良い。この街一帯にビラを巻いて呼び集め、民衆が目撃する中で長官の仮面を剥ぎ取る。そうなれば何が嘘だろうと全てを信じ始める。そうして、私の有利に働くよう全てをでっち上げる。それで私の勝ちだ」

 



 
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