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奴隷商人と皇太子
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「ねぇ、空杜ちゃん息子になってよ。」
週2回のお茶会が恒例になった頃、突然そんなことを言われる。丁度カフェオレを飲んでいたので、思わずむせてしまう。
マイラ皇后陛下が落ち着かせるように背中を撫でてくれる。
「っ、けほっ、ありがとうございますっ。でも、まだ諦めてなかったんですか?」
「当たり前よ!だって、何が不満だったのよ?私が言うのも何だけど、リアムってかなりの有料物件だと思うのよ。」
これを親バカと言えないのが現実である。確かに玲於はこのログナート帝国一、モテるだろう。家柄や性格、そして才色兼備と、俺から見ても全てを金揃えていると言える。
「だから、婚約の話はないことになったでしょ!それに、皇族なのに男同士がくっついてどうするんですか?皆んなから批判がきますよ!」
「皇族は関係ないわ!それに、周りの考えが古いのよ。今時、男同士でも恋愛を認めるべきだわ!せっかく、空杜ちゃんと家族になれると思ったのに…」
寂しそうに視線を伏せられて、胸がチクリと痛む。こんな俺でも家族になりたいと言ってくれるのは有り難い。でも、俺は、もうこの人達のことが大好きなんだ。だから、俺みたいに災いをもたらす奴が長く居座ってはいけない。
マイラ皇后陛下は品のある仕草で紅茶が入ったティーカップを口に運んだ。
「でも、アレツのせいだわ。アレツのせいですぐに、家族になれたのに逃してしまったわ。」
「皇帝陛下のせいじゃありません。俺のせいですよ。でも、そう仰って下さってありがとうございます。俺にとって、マイラ皇后陛下はまるでお姉さんみたいな存在ですよ。」
「あら、そっちの方が空杜ちゃんと年齢も近くて良いわね。」
1ヶ月程前、決闘が行われた翌日こと。アレツ皇帝陛下が決闘で願ったことは皇族側の方が利益になるため、なかったことにしてくれた。だから、俺は玲於が下して来た3つの罰の1つをなかったことにした。
1つ目の家族の悪行に関する調査は手伝ったし、2つ目の専属騎士も受け入れた。でも、3つ目の婚約は、今後のことを考えるとやっぱり無理だと思った。だから、婚約の話をなくす形でお願いした。
今でも、その時の玲於の顔を思い出す。寂しそうに、でも辛いのを我慢するような表情が目に焼き付いている。
それからというものの、玲於の優しさが変わることは決してなかった。時折、寂しさを含んだ眼で見られるため、自分も辛くなる時がある。
「空杜ちゃん。」
「はい?」
いつの間にか下がっていた視線を上げると、マイラ皇后は優しく微笑んでいた。太陽の光が金色の髪を更に輝かせるので余計に眩しく見える。
「私たちはね、あなたが大好きなの。だから、ずっとここに居て欲しいと本気で思ってるわ。」
その言葉に空杜は泣きそうになった。何もかもお見通しなのだろう。さすがに自分が何を隠しているのかは知らなさそうだが、自分の考えていることがまるで分かっているようだった。さすが、人を見分けてきただけある。これでも、それなりに考えが読めないことで有名だったのにな…。
「俺も大好きですよ。」
それだけ、伝えると空杜は残っていたカフェオレを全て飲み干した。
「では、訓練がありますので本日は失礼致します。」
「ええ、またお話ししましょう。」
「はい。」
ウィルから習った皇族に対する礼を行うと、空杜は身体を翻して部屋から出た。そして、そのまま真っ直ぐ騎士の訓練所となる場所に向かっていると、視線の先に見覚えのある後ろ姿が見える。
空杜はそれだけで嬉しくなって、彼の元に駆け寄った。そして、背後から彼の首に両手を回すと抱き付いた。
「うわあっ!」
間抜けな声が聞こえてくる。そして、凄い形相でこちらに視線を向けると幼馴染である青年は驚いたように自分の名前を叫ぶ。
「空杜?!」
「ノア、久しぶり!」
約1ヶ月ちょいぶりの再会だ。俺は嬉しくて満面の笑顔を浮かべたが、ノアは仮面を貼り付けたような笑みを浮かべる。その姿を見て、あっ、ヤバいと思った時には頭に拳を叩き込まれた。
「イッてえええぇ!」
「てめえ、まじでふざけんな!あんな別れ方しといて、明るく抱き付いてくんじゃねえ!すぐに無事を報告しにこいよ!」
「…だって、俺、ほぼ軟禁状態だったんだもん。」
口を尖らせると、ノアが再び拳を握り締めて首を傾げる。もう1発やられそうなので、黙って押し黙る。
「たくっ、まじでこっちは心配したんだからな。コロシアムで見た時はどれ程驚いたことか…」
「へへ、ありがとう。」
笑い掛けると彼は大きな溜め息を付いて頭をグチャグチャにしてくる。なぜかここに来てから何かと髪の毛を触られることが増えた。
空杜はその理由について知らなかった。だって、鏡で見ない限り、自然と嬉しそうに笑っていることなど当の本人が気付けるはずもないから。
「ほらっ、行くぞ。」
「うん!」
ノアの隣に久しぶりに歩くと、彼の髪に視線が向く。これまで白髪だとしか思わなかったが、ノアの髪は少しグレイが掛かっているんだと気付いた。それに比べて、ウィルの髪はまさに純白という言葉が似合う感じだ。
「でも、空杜の制服って何でそれなの?」
「何が?」
「普通は俺みたいに胸の中央に十字架のマークが大きくついてんじゃん。それなのに空杜は付いてない。」
「ああ、俺がお願いした。」
そう口にすると、ノアは足を止めた。
「何で?」
本当は気付いているはずなのに聞いてくる。彼には隠しても意味がないことを知っているので、誰にも伝えていない理由を口にする。
「だって、俺が聖なる光を意味する十字架を背負うのは可笑しいじゃん。」
淡々と答えると、ノアに胸ぐらを掴まれる。
「お前、まだ気にしてんのかよ?」
「気にするって言うか、それが俺じゃん。邪悪の闇を秘めて「空杜!」…ごめん、何もないよ。」
自嘲するとノアは握り締めていた手を離した。
「良い加減、その考えは止めろ。お前には兄ちゃんって呼んでた人から貰った、そのネックレスがあるだろうが?」
服の下にあるネックレスを握り締める。
「…うん。」
「俺達とは何も変わらないだろが?」
「うん、そうだね。…ありがとう、ノア。」
ノアも自分の態度にようやく納得したようで、表情を和らげる。そして、また髪の毛をグチャグチャにする。
「今日は、俺と組めよ。ボコボコにしてやる。」
「え、無理だよ。俺のが強いじゃん。」
「俺だってな、昔よりは強くなってんだよ!」
久しぶりに子どもらしい一面が見えて、思わず笑ってしまう。それに拗ねたようにノアは早歩きで進んでしまったので慌てて追いかける。
ノア、ありがとう。でも、やっぱり俺は不安なんだ…。このネックレスがないと闇の魔力をあまり抑えられないから。
週2回のお茶会が恒例になった頃、突然そんなことを言われる。丁度カフェオレを飲んでいたので、思わずむせてしまう。
マイラ皇后陛下が落ち着かせるように背中を撫でてくれる。
「っ、けほっ、ありがとうございますっ。でも、まだ諦めてなかったんですか?」
「当たり前よ!だって、何が不満だったのよ?私が言うのも何だけど、リアムってかなりの有料物件だと思うのよ。」
これを親バカと言えないのが現実である。確かに玲於はこのログナート帝国一、モテるだろう。家柄や性格、そして才色兼備と、俺から見ても全てを金揃えていると言える。
「だから、婚約の話はないことになったでしょ!それに、皇族なのに男同士がくっついてどうするんですか?皆んなから批判がきますよ!」
「皇族は関係ないわ!それに、周りの考えが古いのよ。今時、男同士でも恋愛を認めるべきだわ!せっかく、空杜ちゃんと家族になれると思ったのに…」
寂しそうに視線を伏せられて、胸がチクリと痛む。こんな俺でも家族になりたいと言ってくれるのは有り難い。でも、俺は、もうこの人達のことが大好きなんだ。だから、俺みたいに災いをもたらす奴が長く居座ってはいけない。
マイラ皇后陛下は品のある仕草で紅茶が入ったティーカップを口に運んだ。
「でも、アレツのせいだわ。アレツのせいですぐに、家族になれたのに逃してしまったわ。」
「皇帝陛下のせいじゃありません。俺のせいですよ。でも、そう仰って下さってありがとうございます。俺にとって、マイラ皇后陛下はまるでお姉さんみたいな存在ですよ。」
「あら、そっちの方が空杜ちゃんと年齢も近くて良いわね。」
1ヶ月程前、決闘が行われた翌日こと。アレツ皇帝陛下が決闘で願ったことは皇族側の方が利益になるため、なかったことにしてくれた。だから、俺は玲於が下して来た3つの罰の1つをなかったことにした。
1つ目の家族の悪行に関する調査は手伝ったし、2つ目の専属騎士も受け入れた。でも、3つ目の婚約は、今後のことを考えるとやっぱり無理だと思った。だから、婚約の話をなくす形でお願いした。
今でも、その時の玲於の顔を思い出す。寂しそうに、でも辛いのを我慢するような表情が目に焼き付いている。
それからというものの、玲於の優しさが変わることは決してなかった。時折、寂しさを含んだ眼で見られるため、自分も辛くなる時がある。
「空杜ちゃん。」
「はい?」
いつの間にか下がっていた視線を上げると、マイラ皇后は優しく微笑んでいた。太陽の光が金色の髪を更に輝かせるので余計に眩しく見える。
「私たちはね、あなたが大好きなの。だから、ずっとここに居て欲しいと本気で思ってるわ。」
その言葉に空杜は泣きそうになった。何もかもお見通しなのだろう。さすがに自分が何を隠しているのかは知らなさそうだが、自分の考えていることがまるで分かっているようだった。さすが、人を見分けてきただけある。これでも、それなりに考えが読めないことで有名だったのにな…。
「俺も大好きですよ。」
それだけ、伝えると空杜は残っていたカフェオレを全て飲み干した。
「では、訓練がありますので本日は失礼致します。」
「ええ、またお話ししましょう。」
「はい。」
ウィルから習った皇族に対する礼を行うと、空杜は身体を翻して部屋から出た。そして、そのまま真っ直ぐ騎士の訓練所となる場所に向かっていると、視線の先に見覚えのある後ろ姿が見える。
空杜はそれだけで嬉しくなって、彼の元に駆け寄った。そして、背後から彼の首に両手を回すと抱き付いた。
「うわあっ!」
間抜けな声が聞こえてくる。そして、凄い形相でこちらに視線を向けると幼馴染である青年は驚いたように自分の名前を叫ぶ。
「空杜?!」
「ノア、久しぶり!」
約1ヶ月ちょいぶりの再会だ。俺は嬉しくて満面の笑顔を浮かべたが、ノアは仮面を貼り付けたような笑みを浮かべる。その姿を見て、あっ、ヤバいと思った時には頭に拳を叩き込まれた。
「イッてえええぇ!」
「てめえ、まじでふざけんな!あんな別れ方しといて、明るく抱き付いてくんじゃねえ!すぐに無事を報告しにこいよ!」
「…だって、俺、ほぼ軟禁状態だったんだもん。」
口を尖らせると、ノアが再び拳を握り締めて首を傾げる。もう1発やられそうなので、黙って押し黙る。
「たくっ、まじでこっちは心配したんだからな。コロシアムで見た時はどれ程驚いたことか…」
「へへ、ありがとう。」
笑い掛けると彼は大きな溜め息を付いて頭をグチャグチャにしてくる。なぜかここに来てから何かと髪の毛を触られることが増えた。
空杜はその理由について知らなかった。だって、鏡で見ない限り、自然と嬉しそうに笑っていることなど当の本人が気付けるはずもないから。
「ほらっ、行くぞ。」
「うん!」
ノアの隣に久しぶりに歩くと、彼の髪に視線が向く。これまで白髪だとしか思わなかったが、ノアの髪は少しグレイが掛かっているんだと気付いた。それに比べて、ウィルの髪はまさに純白という言葉が似合う感じだ。
「でも、空杜の制服って何でそれなの?」
「何が?」
「普通は俺みたいに胸の中央に十字架のマークが大きくついてんじゃん。それなのに空杜は付いてない。」
「ああ、俺がお願いした。」
そう口にすると、ノアは足を止めた。
「何で?」
本当は気付いているはずなのに聞いてくる。彼には隠しても意味がないことを知っているので、誰にも伝えていない理由を口にする。
「だって、俺が聖なる光を意味する十字架を背負うのは可笑しいじゃん。」
淡々と答えると、ノアに胸ぐらを掴まれる。
「お前、まだ気にしてんのかよ?」
「気にするって言うか、それが俺じゃん。邪悪の闇を秘めて「空杜!」…ごめん、何もないよ。」
自嘲するとノアは握り締めていた手を離した。
「良い加減、その考えは止めろ。お前には兄ちゃんって呼んでた人から貰った、そのネックレスがあるだろうが?」
服の下にあるネックレスを握り締める。
「…うん。」
「俺達とは何も変わらないだろが?」
「うん、そうだね。…ありがとう、ノア。」
ノアも自分の態度にようやく納得したようで、表情を和らげる。そして、また髪の毛をグチャグチャにする。
「今日は、俺と組めよ。ボコボコにしてやる。」
「え、無理だよ。俺のが強いじゃん。」
「俺だってな、昔よりは強くなってんだよ!」
久しぶりに子どもらしい一面が見えて、思わず笑ってしまう。それに拗ねたようにノアは早歩きで進んでしまったので慌てて追いかける。
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