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奴隷商人と皇太子
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両手をセスの腰に回して抱き付くと、彼も優しく包んでくれた。それが嬉しくてでも、同時に苦しかった。
何で、兄ちゃんだって気付けなかったんだろう…。その後悔が募るばかりだった。
「兄ちゃん。これからは、ずっと俺と一緒にいて。」
「いられるなら…」
「いられるならじゃないよ。これは決定事項なの。」
拗ねたように顔を上げると、セスはどこか泣きそうな顔をする。俺はセスの頭を引き寄せた。
「いつも、守ってくれてありがとう。俺、兄ちゃんのお陰で生きてるよ。これからは俺も兄ちゃんを守りたい、守るから傍にいさせて。」
肩が濡れる。セスは身体を少し振るわせて、密かに嗚咽を漏らしていた。俺はただ、肩に顔を埋めた彼を宥めるしか出来なかった。
「大好き、兄ちゃん。」
自分はどれほど、この人に辛い思いや我慢をさせてきたのだろうか。自分は生まれた時から、この人が支え続けてくれたから、辛くても乗り越えられてきた。だから、今度は俺がこの人を支えたい、甘えさせてやりたいと思った。
俺はイーサンに視線を向けた。
「俺達を、助けて下さい。お願いします。」
頭を下げていると、視界には誰かの足が映る。
「当たり前だろう。」
力強い手に撫でられ、彼の堂々とした姿を見た瞬間、俺は安心した。やはり、若くして皇帝になるだけの頼もしさはある。イーサンは満足した笑みを見せると、視線を背後に向け、今度は不敵に笑ってみせた。
「さっさと、平和条約を交わそう。」
皇帝はウィルに書類を頼むと、彼は部屋から出て少ししてから必要なものを揃えて持ってきた。
そして、唐突に長年続いていた敵対状況が終幕を迎えたのだ。
「それじゃ、行こうか。」
イーサンが立ち上がると、俺は首を縦に振った。セスの背中を2度優しく叩くと、彼は顔を上げて手を握りあった。
「空杜。」
名前を呼ばれて視線を前に向けると玲於が両手を広げて近付いてきた。セスと繋がれていた手は離れ、俺は引き寄せられるように玲於の背中に手を回した。
「なるべく早く会いに行くから。」
「うん…」
「嫌なことはやらなくていいし、やりたいことは意地でもやりなよ?あとは、身体に気をつけろよ。」
「玲於も、無理しちゃダメだよ。」
「気をつけるよ。」
身体がそっと離れると、玲於に顎を掴まれる。そして、優しいキスを交わすと最後に笑みを見せて離れた。
玲於達がラドリエン帝国に来られるのは早くても4年後とされていた。やはり、帝国民に何かと説明や準備をしないといけないため、それだけ掛かってしまうようだった。
停戦状態だったのだから仕方ないとは思うが、もっと早く再会したいと願ってしまう。
俺はたった数ヶ月だが、彼らと同じ場所で生活してきたため、離れることに違和感がある。でも、それはセスの方が感じているとは思う。
名残おしくも俺とセスは彼らと離れラドリエン帝国の馬車に乗った。
皆んなの姿が見えなくなるまで見ていると、ふと視線を感じた。視線の宿主を見ると彼はどこか不服そうな顔つきをしていた。
「何?」
「んー、まさかの恋人がいるとは思っていなかったからな。」
「俺?」
「そう」
「ラブラブだろ?」
「普通、お前のことを好きな相手に言うか?」
「…好き、なの?」
「じゃないと、わざわざ敵国に会いにこないだろ?」
「それはごめん。でも、俺は玲於が好きだから諦めて」
その言葉にイーサンは鼻で笑うと、次はセスに視線を向けた。
「そっちは?」
シーンと沈黙が流れる。
「愛想ねえな。今後のために媚び売ろうとか思わないわけ?」
「思わない。」
視線を外したセスに俺は頭を抱えた。ここまで仲が悪い雰囲気を出すとは考えていなかったからだ。
「セス、俺達は助けて貰う立場なんだから態度を改めて。」
「……分かった。」
隣の彼は大きな溜め息を吐くと、視線を目の前の皇帝に向ける。
「恋人やそんな相手はいない。」
「ふーん、やっぱりね。セスは、ソラの言うことは聞くんだな。」
「当たり前だろ。」
さぞ、当然のように答えるセスに思わず笑ってしまう。なんだが、俺が兄になった気分になる。やっぱり、セスも付いて来てくれて良かったと心から思った。1人だとやはり心細かったから。
2人はいまだにバチバチとした視線を向けている。俺は揶揄うように1つのありえない提案をしてみた。
「いっそのこと、2人が付き合ってみたら?」
「「絶対、ない!」」
一語一句完璧に揃えて来た彼らに笑ってしまう。
「ほら、息ぴったりじゃん!」
「「違う!」」
またもや揃えて来た彼らに声に出して笑うと、2人は更に邪険な雰囲気を醸し出した。
同じ馬車に乗車していたイーサンの側近は逃げるように端に寄る。
彼からしたらこの場から逃げたいほどの空気なのだろう。悪いことをしたなとは思いつつも、俺は2人の反応が面白くてその後も少しばかり揶揄って遊んでいた。
さすがに、邪悪な雰囲気によって側近が泣きそうな顔をし始めたので止めたが、なんだかんだいって、セスとイーサンは意外にも気が合うのではないかと思ってしまった。
何で、兄ちゃんだって気付けなかったんだろう…。その後悔が募るばかりだった。
「兄ちゃん。これからは、ずっと俺と一緒にいて。」
「いられるなら…」
「いられるならじゃないよ。これは決定事項なの。」
拗ねたように顔を上げると、セスはどこか泣きそうな顔をする。俺はセスの頭を引き寄せた。
「いつも、守ってくれてありがとう。俺、兄ちゃんのお陰で生きてるよ。これからは俺も兄ちゃんを守りたい、守るから傍にいさせて。」
肩が濡れる。セスは身体を少し振るわせて、密かに嗚咽を漏らしていた。俺はただ、肩に顔を埋めた彼を宥めるしか出来なかった。
「大好き、兄ちゃん。」
自分はどれほど、この人に辛い思いや我慢をさせてきたのだろうか。自分は生まれた時から、この人が支え続けてくれたから、辛くても乗り越えられてきた。だから、今度は俺がこの人を支えたい、甘えさせてやりたいと思った。
俺はイーサンに視線を向けた。
「俺達を、助けて下さい。お願いします。」
頭を下げていると、視界には誰かの足が映る。
「当たり前だろう。」
力強い手に撫でられ、彼の堂々とした姿を見た瞬間、俺は安心した。やはり、若くして皇帝になるだけの頼もしさはある。イーサンは満足した笑みを見せると、視線を背後に向け、今度は不敵に笑ってみせた。
「さっさと、平和条約を交わそう。」
皇帝はウィルに書類を頼むと、彼は部屋から出て少ししてから必要なものを揃えて持ってきた。
そして、唐突に長年続いていた敵対状況が終幕を迎えたのだ。
「それじゃ、行こうか。」
イーサンが立ち上がると、俺は首を縦に振った。セスの背中を2度優しく叩くと、彼は顔を上げて手を握りあった。
「空杜。」
名前を呼ばれて視線を前に向けると玲於が両手を広げて近付いてきた。セスと繋がれていた手は離れ、俺は引き寄せられるように玲於の背中に手を回した。
「なるべく早く会いに行くから。」
「うん…」
「嫌なことはやらなくていいし、やりたいことは意地でもやりなよ?あとは、身体に気をつけろよ。」
「玲於も、無理しちゃダメだよ。」
「気をつけるよ。」
身体がそっと離れると、玲於に顎を掴まれる。そして、優しいキスを交わすと最後に笑みを見せて離れた。
玲於達がラドリエン帝国に来られるのは早くても4年後とされていた。やはり、帝国民に何かと説明や準備をしないといけないため、それだけ掛かってしまうようだった。
停戦状態だったのだから仕方ないとは思うが、もっと早く再会したいと願ってしまう。
俺はたった数ヶ月だが、彼らと同じ場所で生活してきたため、離れることに違和感がある。でも、それはセスの方が感じているとは思う。
名残おしくも俺とセスは彼らと離れラドリエン帝国の馬車に乗った。
皆んなの姿が見えなくなるまで見ていると、ふと視線を感じた。視線の宿主を見ると彼はどこか不服そうな顔つきをしていた。
「何?」
「んー、まさかの恋人がいるとは思っていなかったからな。」
「俺?」
「そう」
「ラブラブだろ?」
「普通、お前のことを好きな相手に言うか?」
「…好き、なの?」
「じゃないと、わざわざ敵国に会いにこないだろ?」
「それはごめん。でも、俺は玲於が好きだから諦めて」
その言葉にイーサンは鼻で笑うと、次はセスに視線を向けた。
「そっちは?」
シーンと沈黙が流れる。
「愛想ねえな。今後のために媚び売ろうとか思わないわけ?」
「思わない。」
視線を外したセスに俺は頭を抱えた。ここまで仲が悪い雰囲気を出すとは考えていなかったからだ。
「セス、俺達は助けて貰う立場なんだから態度を改めて。」
「……分かった。」
隣の彼は大きな溜め息を吐くと、視線を目の前の皇帝に向ける。
「恋人やそんな相手はいない。」
「ふーん、やっぱりね。セスは、ソラの言うことは聞くんだな。」
「当たり前だろ。」
さぞ、当然のように答えるセスに思わず笑ってしまう。なんだが、俺が兄になった気分になる。やっぱり、セスも付いて来てくれて良かったと心から思った。1人だとやはり心細かったから。
2人はいまだにバチバチとした視線を向けている。俺は揶揄うように1つのありえない提案をしてみた。
「いっそのこと、2人が付き合ってみたら?」
「「絶対、ない!」」
一語一句完璧に揃えて来た彼らに笑ってしまう。
「ほら、息ぴったりじゃん!」
「「違う!」」
またもや揃えて来た彼らに声に出して笑うと、2人は更に邪険な雰囲気を醸し出した。
同じ馬車に乗車していたイーサンの側近は逃げるように端に寄る。
彼からしたらこの場から逃げたいほどの空気なのだろう。悪いことをしたなとは思いつつも、俺は2人の反応が面白くてその後も少しばかり揶揄って遊んでいた。
さすがに、邪悪な雰囲気によって側近が泣きそうな顔をし始めたので止めたが、なんだかんだいって、セスとイーサンは意外にも気が合うのではないかと思ってしまった。
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