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家でぐーたらと過ごすことにした今日。窓から通り抜けて行く風が心地良くて思わず目を瞑ってしまう。


気持ちいい。


さらりと前髪が目にかかったので指で退かす。下を見るとヒスイさんも同じ状況になっていたので彼を起こさないようにそっと退かした。


…きっと、俺はこの人のためなら何でも出来る気がする。彼が望んだことをやりたいと思うし、俺の身体の一部が欲しいなら喜んで渡す。命さえも差し出したいと思う。


膝の上で眠る彼の頭を撫でていると、これまでのことを思い出す。初対面にも関わらず介抱してくれて、自分と同じ力を持っていて、自分が飛び出したら湖の底まで迎えに来てくれて…


自分を照らしてくれる太陽みたいな人だと思う。尊敬出来る憧れの人でもあるし、少し意地悪で自分勝手な要素もちらほらと垣間見える。


でも、それらを通しても結局は同じ答えに行き着く。


「…好きだな…ヒスイさん。」


ポロリと口にするとストンと心に落ちてくる。それが嬉しくて勝手に口元はにやけてしまう。


「うん、大好き。」


「俺もだよ。」


予想外の声が聞こえる。手を止め、ロボットみたいに視線を向けると目を細めて笑う彼の表情が目に入る。


驚きと恥ずかしさに苛まれて、手を離そうとするとその手を掴まれてキスをされる。


「ヒスイさん?!」


俺の顔は茹でダコみたいに真っ赤だろう。いつまで経ってもヒスイさんの悪戯に慣れないし、どちらかというと酷くなっている気がする。日に日に恥ずかしが増して行くのだ。


空いた手で顔を隠すとそれを外そうとヒスイさんは手を重ねてきた。


「嫌です!外したら暫く口をききません!」


「えー、それは嫌だな。」


本気にしていない言葉に負けた感じがして悔しかったが手を外されることはなかった。


でも、代わりに掴まれた手には柔らかい感触とピリッとした感触がする。最近、ヒスイさんはキスするだけではなく、甘噛みをするようになってきた。竜神でも歯の生え変わりがあって痒くなるのだろうか?


「痛っ!」


「え、大丈夫ですか?!」


慌ててヒスイさんに顔を向けると彼は痛そうに片目を押さえている。何があったのだろうかよりも彼の目が心配で顔を覗かせた。


そっと片手を外してみると、その手はそのまま俺の首の後ろに回る。顔を離せないように拘束されて俺は目をパチクリさせる。


「ねえ、ルカ。」


「はい。」


「俺とキスしよ?」


「はあ…いつもしてるじゃないですか?」


「違うよ。」


ヒスイさんはそう言うと俺の唇に親指でなぞる。その瞬間、彼が言っていることを理解して慌てて身体を離そうとするが無理だった。


「嫌なの?」


「…いや、じゃないですけど。」


「けど?」


「だって、唇にするのは…その、好きな人じゃないですか?」


「ルカは俺のこと好きじゃない?」


「好きですよ…でも、ここは恋人的な感じの恋愛の好きな人のことで……」


しどろもどろに言いながらどんどん恥ずかしくなっていく。自分が愛に関することを口にするとは思ってもみなかった。


「俺はルカのこと恋愛感情で好きだよ。」


驚きの声すらも出てこなかった。目を見開いてヒスイさんをみると、クスリと笑われてしまう。


「ルカとここでキスしたいし、なんならセックスもしたい。」


「セッ?!」


もう、恥ずかしさを上回りすぎて顔を隠すように目の前にある胸に顔を預けた。これ以上、自分の赤くなる姿を見せるのが恥ずかしくて仕方がなかった。


「ルカは俺のこと恋愛で好き?」


「…っ」


「ルカー」


催促するように呼ばれて頭を撫でられても、どう答えたらいいのか分からなかった。


もちろん答えなんか決まってる。でも、過去にその言葉を伝えたら嫌な目を見るような視線を向けられて殴られた記憶がある。その時のことを思い出すと口にしたいとは思えなかった。


分かってる。目の前の人がそんなことしない優しい人だということは…。でも、植えついた恐怖はそんな簡単に払拭は出来ないのだ。


「…ごめん、もう聞かないから安心して。」


ギュッと身体を抱き締められる。多分、俺の身体の震えに気付いたのだろう。どんな時も自分を優先にしてくれるヒスイさんが好きで仕方がないのに、口にするのは怖い。


……でも、彼が喜ぶことがしたい。


俺は一つ息を呑むと、そっと顔を上げてヒスイさんの頬に両手を伸ばした。そして、これが答えですと言うように彼の唇にキスをした。


「ーーっ…」


ヒスイさんの反応が怖くて目は瞑って一瞬で終わらせた。すぐに元の位置に顔を埋めていると、少ししてから身体を力一杯に抱き締められる。少し痛い程度だ。


「あー、もう!なんでこんなに可愛いの。」


珍しく声を荒げる姿に反応して顔を上げると、ごくりと息を呑んだ。あの、ヒスイさんが顔を赤く褒め上げていたのだ。いつも余裕そうで意地悪してくるのに、今回は恥ずかしそうに口元を隠している。


それが嬉しくて思わず笑顔を向けると、ヒスイさんは悔しそうに視線を外した。でも、すぐに思い直したのか俺の頭を掴むと今度はヒスイさんからキスをしてくれた。俺がしたのとは違って深いやつ。


自分の幼稚さとは違って大人ぽいキスをする彼に俺はまた更に溺れた。
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