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湖の端で歩きながら、一昨日起きたことを考えてみた。ヒスイさん、婚約者が出来るかも疑惑の件だ。
片足を抱えて、反対の足を水につけながら空を見ている姿は綺麗だった。先程まで2人で水を掛け合っていたので、髪の毛や服は濡れて自分にはない色っぽさを醸し出している。
「イケメンだな。」
ぽそりと溢してみる。一度言ってしまうと、次から次へと言葉を発したくなって、口に出してしまう。どうせ、離れているのだから聞こえないだろうという安心もあった。
「何であんなに綺麗なんだろう?全てのパーツが整ってるし、スタイルも良いし…優しいし…」
試しに彼の嫌なところを探してみるが見当たらない。
強いて言うなら意地悪のところだろうか?でも、別に本気で嫌だと思ったことはないから違うかもしれない。
「うーん…」
「どうしたの?」
「へ?!」
顔を上げてみるとヒスイさんの顔が目の前にあって、思わずバランスを崩して湖に向かって倒れそうになる。濡れるって思った瞬間、身体は抱き止められる。
今、考えてみると既にびしょ濡れなのだから、焦る必要性はなかったかなとは思った。
「ありがとう、ヒスイさん。」
「どう致しまして。それで何を真剣に考えていたの?」
「…何も考えてないよ。」
「本当に?」
「…うん。」
顔を更に近付けられる。一気に心臓の音がうるさくなって、慌てて視線を外すとクスリと笑う声が聞こえてくる。この笑い方は大体意地悪な顔をしている時だって思い、恐る恐る顔を前に向けると予想通りの表情をしていた。
「イケメンだな。」
「っ!」
「何であんなに綺麗なん「ヒスイさん!」…何?」
また、俺を揶揄って楽しそうな顔をする…
それが悔しくて、たまには俺もヒスイさんのことを弄りたかったが何も思いつかない。どうしたら、あっと驚かせるんだろう…?
「ルカ?」
「ちょっと、黙ってて!」
彼の胸を押し返すとすんなりと身体は離れる。でも、腰に回された腕は手のひらへと移動した。ヒスイさんは恋人繋ぎが好きなのだろうか…?最近、移動する際は決まって繋いでくる。
「んー…」
相手を拍子抜けさせるにはどうしたら良いのだろうか。考えてもやはり分からなくてもどかしくなる。
「ヒスイさん。」
「ん?」
「どうしたら驚く?」
「え?」
あっ、驚いた!
何だこんなことで良いのかと思えて嬉しくなっていると、ヒスイさんに頬を触られる。
どうしたんだろう?
ヒスイさんの手に片手を重ねるとそっと微笑まれる。その姿にまた胸が騒ぎ出す。
「ルカがキスしてくれたら1番驚くかな。」
「キ、キス?!」
その反応にヒスイさんは歯を見せて笑う。それで、また揶揄われたのだと分かって悔しくなる。せっかく勝てたと思えたのに、またやり返された…
俺が膨れっ面を浮かべたからか、ヒスイさんはごめんねと子どもを宥めるように視線を合わせて頭を撫でてくる。
嬉しいけど、嬉しくない。
俺はムカついてヒスイさんの頬に両手を添えるとおでこにキスしてやった。どうだと思って視線を下げると、口を開けて間抜け顔を披露するヒスイさんがいた。
その姿も可愛らしく見えて、俺は満足した。ニッコリと微笑んでやると、ヒスイさんは耳まで顔を赤く染めて片手で顔を隠した。
さすがに調子に乗り過ぎたかなと思ったが、怒っているようではなかったので安心した。怒られないなら、今後仕返しとして活用していこうと心に決めた瞬間だった。
♦︎
「っ?!」
おでこに柔らかな感触を感じて、ルカが満面の笑顔を浮かべてきた。その仕草や表情が可愛くて、大人ぶっていた面が外れてしまった。
ー何で?何でこんなに可愛いんだ?
こっちがキスをしたい葛藤を抑えているのに、向こうは嬉しそうな笑っている。どうせ、俺が表情を崩したのが嬉しくて笑っているのだろう。
ああ、くそっ。見事に成功してるよ。
どんどんルカに弱くなっていく自分を感じる。一昨日は自分らしくもない嫉妬を面に出したし、今はうるさいほど胸が高鳴っている。
こっちは、少しずつ距離を詰めていこうとしているのにルカのちょっとした行いでダメにしそうになる。ルカが怖がらないように接しているつもりだが、我慢が辛い時もある。
ずっと部屋に閉じ込めて誰にも会わせたくない。自分だけを見て、綺麗な声を聞かせて欲しい。俺だけ甘えて愛して欲しい。そんな欲情を抱えていることすら、本人は気付いていないのだろう。
少しずつ少しずつ、彼に侵食出来たら良い。俺に抱く気持ちが特別になって何よりも必要で離れたくない存在になれば良い。
だから、今は我慢してルカのやりたいことを優先にするよ。
片足を抱えて、反対の足を水につけながら空を見ている姿は綺麗だった。先程まで2人で水を掛け合っていたので、髪の毛や服は濡れて自分にはない色っぽさを醸し出している。
「イケメンだな。」
ぽそりと溢してみる。一度言ってしまうと、次から次へと言葉を発したくなって、口に出してしまう。どうせ、離れているのだから聞こえないだろうという安心もあった。
「何であんなに綺麗なんだろう?全てのパーツが整ってるし、スタイルも良いし…優しいし…」
試しに彼の嫌なところを探してみるが見当たらない。
強いて言うなら意地悪のところだろうか?でも、別に本気で嫌だと思ったことはないから違うかもしれない。
「うーん…」
「どうしたの?」
「へ?!」
顔を上げてみるとヒスイさんの顔が目の前にあって、思わずバランスを崩して湖に向かって倒れそうになる。濡れるって思った瞬間、身体は抱き止められる。
今、考えてみると既にびしょ濡れなのだから、焦る必要性はなかったかなとは思った。
「ありがとう、ヒスイさん。」
「どう致しまして。それで何を真剣に考えていたの?」
「…何も考えてないよ。」
「本当に?」
「…うん。」
顔を更に近付けられる。一気に心臓の音がうるさくなって、慌てて視線を外すとクスリと笑う声が聞こえてくる。この笑い方は大体意地悪な顔をしている時だって思い、恐る恐る顔を前に向けると予想通りの表情をしていた。
「イケメンだな。」
「っ!」
「何であんなに綺麗なん「ヒスイさん!」…何?」
また、俺を揶揄って楽しそうな顔をする…
それが悔しくて、たまには俺もヒスイさんのことを弄りたかったが何も思いつかない。どうしたら、あっと驚かせるんだろう…?
「ルカ?」
「ちょっと、黙ってて!」
彼の胸を押し返すとすんなりと身体は離れる。でも、腰に回された腕は手のひらへと移動した。ヒスイさんは恋人繋ぎが好きなのだろうか…?最近、移動する際は決まって繋いでくる。
「んー…」
相手を拍子抜けさせるにはどうしたら良いのだろうか。考えてもやはり分からなくてもどかしくなる。
「ヒスイさん。」
「ん?」
「どうしたら驚く?」
「え?」
あっ、驚いた!
何だこんなことで良いのかと思えて嬉しくなっていると、ヒスイさんに頬を触られる。
どうしたんだろう?
ヒスイさんの手に片手を重ねるとそっと微笑まれる。その姿にまた胸が騒ぎ出す。
「ルカがキスしてくれたら1番驚くかな。」
「キ、キス?!」
その反応にヒスイさんは歯を見せて笑う。それで、また揶揄われたのだと分かって悔しくなる。せっかく勝てたと思えたのに、またやり返された…
俺が膨れっ面を浮かべたからか、ヒスイさんはごめんねと子どもを宥めるように視線を合わせて頭を撫でてくる。
嬉しいけど、嬉しくない。
俺はムカついてヒスイさんの頬に両手を添えるとおでこにキスしてやった。どうだと思って視線を下げると、口を開けて間抜け顔を披露するヒスイさんがいた。
その姿も可愛らしく見えて、俺は満足した。ニッコリと微笑んでやると、ヒスイさんは耳まで顔を赤く染めて片手で顔を隠した。
さすがに調子に乗り過ぎたかなと思ったが、怒っているようではなかったので安心した。怒られないなら、今後仕返しとして活用していこうと心に決めた瞬間だった。
♦︎
「っ?!」
おでこに柔らかな感触を感じて、ルカが満面の笑顔を浮かべてきた。その仕草や表情が可愛くて、大人ぶっていた面が外れてしまった。
ー何で?何でこんなに可愛いんだ?
こっちがキスをしたい葛藤を抑えているのに、向こうは嬉しそうな笑っている。どうせ、俺が表情を崩したのが嬉しくて笑っているのだろう。
ああ、くそっ。見事に成功してるよ。
どんどんルカに弱くなっていく自分を感じる。一昨日は自分らしくもない嫉妬を面に出したし、今はうるさいほど胸が高鳴っている。
こっちは、少しずつ距離を詰めていこうとしているのにルカのちょっとした行いでダメにしそうになる。ルカが怖がらないように接しているつもりだが、我慢が辛い時もある。
ずっと部屋に閉じ込めて誰にも会わせたくない。自分だけを見て、綺麗な声を聞かせて欲しい。俺だけ甘えて愛して欲しい。そんな欲情を抱えていることすら、本人は気付いていないのだろう。
少しずつ少しずつ、彼に侵食出来たら良い。俺に抱く気持ちが特別になって何よりも必要で離れたくない存在になれば良い。
だから、今は我慢してルカのやりたいことを優先にするよ。
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