どこまでも続く執着 〜私を愛してくれたのは誰?〜

あさひれい

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封印を解かれたダンス

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アマリアがアルバートンにエスコートされてホールに戻った時、会話や笑い声、音楽に靴の音など、様々な音が響き渡っていたのに、さざ波のように静まりかえっていった。

皆様…公爵様を見つめていらっしゃる…?

アマリアでも気づくほどの突き刺さる視線は、隣に立つアルバートンに注がれていた。
当のアルバートンは露ほどにも気にしていないようで、優雅にそのままホールの中央へと足を進める。
音楽がちょうどワルツに変わるタイミングだった。
アルバートンにぐっと腰を寄せられ、手をしっかりと握られた。

アマリアは少しだけ、逃げようかな…と思っていたのが、バレてしまったのではないかと冷や汗をかいた。

「さぁ、お母上の名に恥じないダンスを披露して」

「はい、公爵様」

アルバートンが緊張を解すように微笑むと、アマリアもにっこりを笑顔になる。
美男美女のダンスが始まる。それは、会場中の誰もが息をのんだ。

二人のそろった美しいステップが奏でられる音楽に更に優雅に映える。時折、仲睦ましげに微笑む二人。
そして、そこにいた全ての人が理解した。

アルバートン公爵が、花嫁を決めた――と。


アルバートン公爵は、公爵家の嫡男で、期待を一身に背負ってきた。そして、それに恥じない業績を次々に残し、若干25歳で公爵位を引き継いだ。国王、皇太子ともにその覚えもよい。
この国の根幹を成す一人である。
そのアルバートンは、公爵位についた2年前に公言した。

「私は、今後、婚約者となる者以外とは誰とも踊るつもりはない」

夜会に出ることが避けられないが、次々と申し込まれる令嬢とのダンスやその親類縁者たちからの猛攻に辟易したアルバートンが顔をしかめつつも大々的に宣言したのだ。
それから、2年。アルバートンが誰かの手を取ることが一度たりともなかった。

それが、今夜その封印を解いたのだ。その相手が、名ばかり侯爵の娘、アマリアだった。

今夜社交デビューしたばかりのアマリアは知るよしもない。
そんななか、優雅に踊り続ける二人を驚愕のまなざしで見つめていたのはアマリアの父、エドワードだった。
エドワードは当然、アルバートンの公言を知っていた。だからこそ、驚きのあまり、声も出ず、その場から一歩も動けなかった。
あの煌めく中で踊っているのは確かに私とミリーのアマリアだ。しかし、その手をとっているのは…

何度見ても、アルバートン公爵にちがいなかった。

やがて、一曲が終わると礼をして、アルバートンは再びアマリアをエスコートして、エドワードのもとへと一直線にやってきた。
ダンスの合間に自分の位置を確認していたのだろう。隙のまったくない動きだった。
呆然と二人が近づいてくるのを見つめるしかなかった。
その二人に会場中の視線が注がれる。音楽は流れているものの、ホールではもう誰も踊ってはいなかった。

「さぁ、アマリア。約束通り、お父上のもとへ送り届けたよ」

「ふふっ。ありがとうございます、公爵様。夢のようなひとときでした」

「こちらこそ。やっと念願がかなったよ」

「え?それはどういう…」

アマリアをエドワードのもとへ送り出すと、その視線をエドワードに向ける。

「後日、正式に使いを送ろうと思う。スタンリール侯爵、よろしいだろうか」

エドワードのほうが遥かに年上でも、爵位でも実力でも、アルバートンは格上だった。断ることなど想定にもない。
そして、受け入れるということは、つまり、そういうことだった。

「お、お待ちしております、アルバートン公爵」

定型文をようやく口にするとエドワードは深々と頭を下げた。

「お父様…?」

不思議そうに父を眺めるアマリアにアルバートンは一歩近づき、そっと自分のほうへ引き寄せて、頬にキスをした。

「えっ?」

「アマリア嬢、また会うことになるだろう。すぐにね。でも今夜は疲れただろうから、もう、お戻りなさい」

「は、はい。今夜はありがとうございました。」

「失礼するよ、スタンリール侯爵、アマリア嬢」

そのままくるっと背を向けてアルバートンは去って行った。

「ア、アマリア。すぐに。すぐに帰ろう」

「お父様?」

去っていったアルバートンとは逆方向に、いつもでは考えられないほどの力強さでぐいぐいと手を引っ張られた。聞きたいことはたくさんあるのに、有無を言わせない雰囲気の父にただついていくしかなかった。
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