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しおりを挟むジャスミンは眼の前に差し出された手を初めはためらうように、でも、勇気を出してくれたのか、両手で力強く握ってくれた。
抑えきれない喜びが全身を駆け巡り、衝動的にジャスミンを横抱きに持ちあげていた。
「きゃあっ」
傍目から見れば女性が女性を抱えあげるという奇妙な図だが、そんな些末なことは気にならなかった。
「良かった! そうと決まれば、こんな場所にはもう無用だな」
「待てっ!」
歩き出そうとしたら、後ろから声がかかった。
「なんだ?」
自分でもひどく冷たい表情になっているのがわかる。
「一体、何がどうなっている……?」
状況が掴めていない顔のイグナシオが、混乱した顔で、私たちを見つめている。
「殿下、この茶番が終わったら、一発か二発あなたにお見舞いしようかと思ったんですが、今の私はひどく気分がいい。もうあなたのことなんて、どうでもいいんです」
「どうでもいい」と言った瞬間、イグナシオの顔が歪んだ。
この男、まだ私を女だと思っているのか。
それとも現実を受け止めたくないのか。
別の角度から見れば、それだけ真剣だったというわけか。
この人でなしが今回失恋したことで――正しい表現かどうかわからないが――、少しでも人の痛みがわかる人間になればいいと思った。
「ごきげんよう」
「待ってくれ、レヒーナ……」
尻すぼみになって手を伸ばすイグナシオをおいて、部屋を出る。
横抱きにしたまま歩いていれば、ジャスミンが真っ赤な顔でつぶやく。
「あの、重いのでおろしてください……」
「全然重くないよ。それに学園にいる間、ジャスミンに触れるのをずっと我慢してたんだ。堪能させて」
微笑みかけると、ジャスミンの顔が更に真っ赤に染まった。
「あの、何故女性の格好を……?」
「うーん、話せば長くなるんだけど、また今度話してあげる」
ちょうどその時、窓からの日の光が私に降り注いだ。鼻先が触れ合いそうな距離であったせいか、ジャスミンが気付いたようだ。「あっ」と声をあげる。
「瞳の色が……」
室内ではわからなかったのだろう。以前、外で遭遇した折は完全に別人だと思われていたから、比較するなんて考えもしなかったはず。
今、本人だとわかって、改めてその差の違いがわかったのだろう。
「ああ、変わったんだ」
私の瞳の色は成長のせいか、それとも努力に呼応してか年々色が濃くなっていった。
今やあれほど馬鹿にしていた兄上たちの瞳の色よりも濃くなっている。
唯一あげつらう部分がなくなって、本人たちはさぞかし悔しかろう。
「この瞳の色は好きじゃないかな? 君が大好きだと言ったスミレの色でなくなってしまったから」
ふんわりと少し寂しそうに笑って問えば、顔を真っ赤にさせたジャスミンが目をぎゅっと瞑って言った。
「大好きですっ」
私は蕩けるような笑みを浮かべて、その柔らかなほっぺに口付けをした。
fin
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あとがき
最後までお読み頂き、ありがとうございましたm(_ _)m
この話はよくある断罪シーンから発想をもらいました。
婚約解消を仕組んだのはヒロイン(この話の場合はレヒーナ)だけど、本当はそれは悪役令嬢 (ジャスミン)のためだったとしたら……というふうに考えたら、この話ができました。
漫画や小説で、「女と見紛わうような」とか「女性より美しい」と形容される男性が出てきますが、この話のヒーローはまさにそんな男性です。
今はまだ十五歳で成長半ばですが、あと二三年したら体も大きくなって、美貌に精悍さも加わった見目麗しい青年に変わることでしょう。
このストーリーが少しでも面白いと思って頂けたら、嬉しく思います。
ありがとうございました。
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感想、ありがとうございます!
ロレンシオはずっと初恋を胸に生きてきたので、ちょっとだけ「ジャスミン至上主義」っぽいところがあります。なので、ジャスミンを傷つけたイグナシオに対しては悪いと思ってません(^_^;)他の相手だったら、多少同情したと思います。
イグナシオに関しては学園内では一番位が上だったので、思うところはあってもわざわざ注意する人がいませんでした。(不興を買っても嫌なので)浮気相手の女性は王子と付き合ったという箔付けの意味もあって、お互い暗黙の了解で火遊びしてたという感じです。
最後までお読みくださり、ありがとうございましたm(_ _)m
感想ありがとうございます!
ジャスミンとロレンシオは仲睦まじく幸せに暮らすことと思います。
イグナシオも反省して、性格が多少改善するといいなと思います(^_^;)
最後までお読みくださり、ありがとうございましたm(_ _)m