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しおりを挟むいくらドレスを買えなくても、ずっとお茶会に参加しないのはまずかったから、それ以後も最低限は参加するようにしていた。
その席で『フェリシアン様』という名前があがるたび、自分でも可笑しいくらいに耳をそばだててしまう。
『フェリシアン様が違法賭博場を摘発した』
『フェリシアン様が最年少で、次々と功績をあげられている』
『フェリシアン様がどこそこの令嬢の誘いを断った』
『フェリシアン様が警備団の副団長に任命された』
『フェリシアン様はまだ婚約者を作らないみたい』
『フェリシアン様が――……』
私の中で、色んな『フェリシアン様』がいくつもいくつも折り重なっていく。
でもどれほど築いても、私とフェリシアン様の距離は縮まらない。
相変わらず赤の他人のまま。
街に出掛けた時、二度だけ巡回中のフェリシアン様を偶然見かけたことがある。
一度目は出会ってからちょうど一年経とうとしていた頃。
彼の姿が突然目に入った途端、鼓動が煩く音を立てた。この心臓の音に彼が気付くんじゃないかと思った程だった。
でも彼は何事もなく通り過ぎていく。
フェリシアン様は美しさをそのままに精悍さが増していた。
火照った顔に手をやり、彼の後ろ姿を見送る。
もうその時には、彼に恋をしているのだと気付いた。
二度目はさらにそれから一年半後のこと。
十八歳のフェリシアン様は、大分逞しく、そして美しさも増していた。
堂々と白馬に乗るそのお姿が眩しくて。
久しぶりに見たせいか、やはり鼓動が煩いほど音を立てた。
周りから黄色い声援が飛ぶ。
けれど、彼は涼しい顔で。
でも、私は知っている。
そのお顔が柔らかく微笑むのを。
もう一度、笑いかけてもらえたら――。
ここ一年、私はそればかり考える。
恋人にも友達にも、ましてや知り合いにもなれない。
だから、もう一度あの笑顔が見れたなら。
そのときはその笑顔を自分だけの宝物にして、神様が願いを叶えてくれたかわりにすっぱり諦めようと思うのに。
それから更に日が経って私は十四才となり、二十歳のフェリシアン様は史上最年少で王都警備団の団長に任じられた。
そんなある日、王都警備団がすぐ近くに来ていると人々が噂をしているのを、ちょうど街に来ていた私の耳が偶然捉えたのだった。
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