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しおりを挟む物珍しさに店内を見回している間にエレン嬢が買う品を決めたようだった。
「決まりました」
綺麗な色の刺繍糸に、いくつかのボビンレース。若い女性が好みそうな可愛らしいものだった。
やはり年頃の少女らしく、人並みにこういった色合いも好きなのだと思い直した。レースはハンカチの縁取りに使うのだろう。
「では、私が支払おう」
「お願いします」
受け取って支払いに進むも、表示されたあまりに少ない額に私は目を疑った。
ドレスや宝石に及ばない額であることは確かに納得できるのだが、これではあまりに少ない。
刺繍糸など今まで買ったことがないから、目算できなかった。これでは私が今まで贈ったことがある一番安価な宝石の足元にも及ばない。
「ありがとうございます」
それにも関わらず、お礼を言う彼女の笑顔に複雑な心境になった。
「……君はそれで満足だろうか。もっとほかのものを贈ってもよいのだが……」
暗にもっと高価なものを贈らせてほしいと伝えるが、彼女は首を振った。
「こんなに買ってもらえたんですから、これだけで充分です」
「……そうか」
何とも言えない気持ちを拭えないまま、店をでる。
そうして少し先にあった露店を目にして彼女が振り返る。
「少し見ていってもかまいませんか」
「ああ」
露店は若い女性が好みそうな可愛らしいアクセサリーを並べていた。
露店という店構えから、扱っている商品は決して高価なものではない。
それにも関わらず、エレン嬢は熱心に見ている。
「あの――」
エレン嬢に声をかけられれば、その手の内にあるものに気づく。
どうやらイヤリングのようだった。
「ほしいのか」
「はい……」
遠慮がちに頷く彼女。
もしかして私のさっきの態度で、そんなことをするのだろうか。
彼女のことだから、何か買ったほうが良いのだろうと思ったのかもしれない。
「……わかった。――店主、これをひとつ貰おう」
本気で貴族の令嬢がこのような安物をほしがるわけがないと思いつつ、けれど彼女がほしいと頷くなら立場上財布を出さないわけにはいかなかった。
「ありがとうございます……」
か細く礼を言って、そのピンクの貝殻がついたイヤリングを身につけた彼女を見た瞬間、私は自分の間違いを悟った。
「……似合いますか」
頬を紅潮させて、恥ずかしそうに目を伏せる彼女。はにかみながら微笑むその姿が本当に嬉しそうで……そして愛らしく、私は虚をつかれた。
「……フェリシアン様……?」
エレン嬢の言葉で自分が固まっていたことに気付く。
「――ああ。……君によく似合っている」
はっとしてそう返せば、彼女の顔がぱっと笑顔に変わる。
その笑顔にまた目を奪われる。
彼女のひとつひとつの仕草や笑顔に何故こんなにも心が動かされるのか。
未知の感情に戸惑いながらも、彼女の笑顔をいつまでも見ていたいと思った。
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