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しおりを挟む「フェリシアン様はどうして王都警備団に入ったのですか」
串焼きを食べ終え、休憩がてら通りのベンチに腰を下ろしている時だった。
エレン嬢が私に質問を投げかけた。
そんな質問を女性からされるのは初めてのことで、驚きを込めてエレン嬢の顔を見返した。
女性が私の容姿や肩書、家柄といった『外見』に捉われることはあっても、私の『内面』に目を向けることはこれまで一度としてなかった。
何故私が王都警備団にいるかなど、気にした女性はエレン嬢が初めてだ。
「『民に常に寄り添え』」
エレン嬢のひたむきな視線に答えない理由はなかった。
「え?」
「サンストレーム家の歴史を学ぶ時、後継者がまず一番初めに教わる理念だ」
あのとき湧き起こった決意は今も変わらず、この胸にある。
「広大な領地のおかげで、我々は裕福に暮らしていける。それはひとえにそこに暮らす人々のおかげだ。彼らが毎日休まず働いているからこそ、我々は安定した生活を送れる。ならば、その働きに見合うものを我々は返さないとならない。それを忘れるなと言われた」
驚いた気配が隣から伝わってくる。
「……素晴らしい教えですね。でも、それがどうして王都警備団に?」
「我がサンストレーム家はこれまで王が仁道から外れた時は、その都度諌めてきた。王が苛政を敷けば、その負担は民にいく。しかし、民の生活のうえにいるのは我々だ。この王都にいる民も、私にとっては同じく守るべき民にほかならない。サンストレーム家の一員として、何ができるか考えた時、王都警備団に入ろうと決めたんだ。領地のほうは父が管理していて、私が出る幕はまだなかったからね」
堅苦しい話題を好む女性は今までいなかったが、何故だかエレン嬢なら理解してくれるような気がして、私は自然と笑みを向ける。
「そうだったんですか……」
目を見開いて聞いていたエレン嬢だったが、その顔つきが真摯なものへと変わる。
「素晴らしいお話をありがとうございました」
「疑問は解けた?」
「はい。あの、私も見習いたいです。……まだ自分に何ができるか、わからないけれど――」
思いもよらなかった話だったろうに、彼女はまごつきながらもそう返事を返してくれた。
「まだ婚約者なんだ。サンストレーム家の一員になったらゆっくり考えればいい」
「はい」
その心根の優しさ、まっすぐさを愛しいと思う。
――そうだ。『愛しい』だ。
彼女にこれまで何度も感じた正体不明の気持ちを今、初めて掴めた気がした。
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