Sランクギルドの主力メンバーやっていた少女が追放されたので、うちのパーティーに引き抜こうと思う

五月雨蛍

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第十五話 お茶会の誘い

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「バートリー、どうしてこんなところに……!」
「アンナちゃんからの依頼。オリビアちゃんを連れ戻して来てって」
 バートリーは、人形のように無感情な瞳で見つめてくる。

「今更何の意味があって連れ戻すんだ?」
「意味?意味かぁ……特に聞いてなかったや」
 少し考えるような素振りを見せたバートリーは、楽しそうに笑みを深める。
 理由を聞いてはいるが、話したくはないといったところか。

「おっと。──わぁ、凄い歓迎の仕方だね」
 突然、上空から轟音と共に放たれた吐息ブレスをバートリーは難なく回避する。彼女の動きに合わせて喪服のようにも見える黒のゴシックドレスがふわりと舞った。

 先程までバートリーのいた場所は地面ごと抉られている。
 それを遠巻きに見ていた数人の人間は悲鳴をあげながら姿を消し、ようやく動けるようになったらしいカニ男一行も逃げるように姿を消していた。

「ねぇ、オリビアちゃん。ちょっとお茶してかない?」
「──え?」
「オリビア、相手にしなくていい」
 バートリーとの会話は、オリビアの精神衛生上よくないだろうからな。

「酷くない?折角話し合いで済ませようとして皆と離れて一人で来たのに、私泣いちゃうよ?──それとも、戦闘で無理矢理の方が好みだったのかな?」
 愉し気に笑みを歪めたバートリーから、黒色のオーラが滲み出る。その黒色の気が何なのかを嫌というほど知っていた俺は、愛剣をしっかりと握り、バートリーと対峙する。
 甘さも手加減も許される相手ではないのは明白だった。

 彼女の口ぶりからすると、他のメンバーも来ているようなので、彼女にだけ時間をとられる訳にもいかない。
 《中央の影》がペルシャンを出ることはないと聞いていたので、それほどの事が起きているのか、それともペルシャンでしか活動していないというのが偽の情報だったのか。それを確かめる術も余裕も、今の俺にはなかった。

「──わかりました。お茶をしましょう」
「──オリビア⁉︎」
 お茶とやらをしている間に他のメンバーが集まってくるのはわかりきっていたが、それ以上に荒事にはしたくないということか。

「上の御二方もぜひ誘いたいんだけど、どう?」
 上空を見上げたバートリーは、楽し気にそう語る。

「……わかった。二人にも声をかけるよ」
「ありがとう、ルシェフ」
 彼女たちとの戦闘になることを考えると、あの二人の戦力は頼りになるからな。

「オリビア。一緒に来てくれるか?」
「わかりました」
「ルシェフさん、私は──」
 俺たちの会話を聞いていたレオナが、俺の袖を摘む。彼女には俺の意図が伝わっているようだった。

「悪い。アリスと合流して、一度ここから離れてくれ」
「でもっ!」
「大丈夫。終わったら迎えに行くから」
 涙声で訴えるレオナに、なるべく優しい声でそう伝える。バートリーが何をしたいのかは知らないが、彼女はレオナに興味がないみたいだったからな。

「──本当に?」
「あぁ。約束するよ」
「……わかった」
 レオナがアリスたちの元へと駆けていく。それを見送った後、オリビアと共に飛行魔法で旋回する黒竜の元へと向かった。

「失礼します」
 なるべく粗相がないように、一声かけてから黒竜ジャックさんの背に乗り込む。

「──?失礼します」
 オリビアは俺の行動を不思議に思いながらも、そういってジャックさんの背中に乗り込んでくれた。

「久しぶり。アメリア」
 黒竜の背に乗っていた半竜人ハーフ・ドラゴニュートの女性に声をかける。

「うん。久しぶり」
「どうして二人がここに?」
「早く会いたくて、こっちまで来ちゃった」
 俺の問いに、アメリアは屈託のない笑みでそう返す。
 間違いなく、手紙の返事がなかったのもこれが理由だろう。手紙では俺がどこにいるかはわからなかったはずだが──いや、中央の国まで来れば、気配でわかるのか……。

「来ているのは二人だけか?」
「うん。心配だったから、いつものメンバーは置いてきちゃった。お父さんがいるから、すぐに西の国には戻れるし」
「そうか……」

 アメリアの言うお父さんというのは、俺たちが乗っている黒竜の事だ。彼の名前はジャック・ハーヴィー。“竜人の里”いる里長の息子であり、アメリアの父親だ。彼は竜人ドラゴニュートであり、今は彼の持つ【竜化】のスキルで黒竜の姿をしているが、元の姿は人間のそれに近い。

 そして、俺と話しているダークブラウンに染まるセミロングの艶やかな髪が印象的な長身の女性はアメリア・ハーヴィー。《西の国の悪魔》の二つ名を持つ西の国の国家公認冒険者であり、竜人の父親と人間の母親を持つ、半竜人だ。一部地方では四分の一竜クォーター・ドラゴンとも呼ばれているが。
 彼女は俺が里で世話になるまで“竜人の里”で箱入り娘をやっていたため、少し俗世に疎いが、根は良い人だ。

「すいません。少し立て込んでいまして……一度下に来ていただいても良いですか?──その、知人からお茶の誘いを受けていまして……」

「──お茶をするような雰囲気には見えなかったが?」
「流石に察しが良いですね。──最悪戦闘になる可能性もあります。彼女とその仲間は中央の国でもトップクラスの実力者揃いです。不利と判断したら、逃げの一手が必要になることもあるかも知れません」
 突如聞こえてきた言葉に、オリビアが小さく身を震わせるも、すぐに平静を取り戻す。取り乱す事自体が失礼にあたるので、正直助かった。

「……それ程の手練れか?」
 暫く沈黙を守ったジャックさんに頷いて返す。

「……?お茶するだけなんだよね?」
「……あぁ。そうだな」
 アメリアはバードリーの異常性に気づいていないようだし、首を捻るのは仕方がないだろう。

 二人を説得したところで、ジャックさんに地上へ降りてもらい、四人でバートリーと対面をする。その時にはジャックさんも【竜化】を解いていたので、二十後半くらいの黒髪の男性へと姿が戻っていた。

「やっぱり竜人ドラゴニュートだったんだ……」
 ジャックさんに臆することもなく、パートリーは楽しげにそう漏らす。

「お初にお目にかかります。私は《中央の影》のバートリー・エルベルトと申します。是非お見知り置きを」
 バートリーは役者がかった仕草でお辞儀をする。

「人間。何故なにゆえ再会の邪魔をする」
 バートリーを一瞥したジャックさんは、威嚇するように低くそう告げる。とてもじゃないが今からお茶をしようなんて雰囲気ではなかった。

「素敵な殿方ですこと。私、お強い方に滅法目がないのです」
「バートリー、いつまでそんな茶番をしているつもりだ?」
 時間稼ぎ、なんてつまらないことをするような性格でないことは知っているが、ここで時間を取られてしまうと他のメンバーも集まって来てしまうだろう。

「私、初めの印象は大事だと思うのよ。この二人は特に食べ応えがありそうだし」
 バートリーは心底愉しげな笑みを浮かべる。当の本人にもお茶なんてする気はないように見えた。

「アメリア……⁉︎」
 一触即発の空気の中、アメリアは無警戒にバートリーの元へと歩み寄る。

「私は、アメリア。竜人の里出身で南の国に伝わる伝説の黒竜を祖父に持つ半竜人です。西の国の国家公認冒険者で、《西の国の悪魔》の二つ名で通ってるわ。よろしくね人形ドールちゃん」
「へ……?」
 微笑みながら差し出された手に、バートリーは意味がわからないといった感じに目を白黒とさせる。終いには、俺に説明を求めるような視線を送ってきていた。

 頼むから、そんな目で見ないでくれ。──俺だって彼女の行動がよくわかっていないんだから。

「……アメリア。正直なのは良いことだけど、素性くらいは隠した方が良いんじゃないのか?」
「そうなの?人形ちゃんも話してくれたし、私だけ隠すのは失礼じゃなくて?」
 うん。君ならそう答えると思ってたよ。この辺りは、おいおい話した方が良さそうだ。

 無警戒に手を差し出したまま不思議そうな顔をするアメリアを他所に、バートリーは脇に刺したナイフへ手を伸ばそうとする。
 ──そこでバートリーの動きがピタリと止まった。

 ジャックさんだ。彼が刃物へ手を伸ばそうとするバートリーを睨んでいた。ただ、それだけのことだったが、それだけでバートリーの動きを止めるには十分だった。

「少し無粋なことをしましたわ。ご容赦を」
 そう言った小さく笑みを作ったバートリーは、アメリアから差し出された手を取る。それを見て、アメリアはにこやかな笑みを浮かべた。

「じゃあ、本当にお茶にしよっか」
「本気だったのか?」
 少し意外だ。バートリーは割と戦闘を好むと思っていたから、本当にお茶をする気だったとは思わなかった。

「勿論。アンナちゃんからは、手を出されなかったら戦闘は避けるように言われてたからね。私も聞きたいことを聞ければそれで依頼は完遂だから」
「そうなのか」
 どうやら、聞き出したいことを話せれば彼女は帰ってくれるらしい。何故それだけのために腰を据えて話す必要があるのかはわからないが、今は彼女の要求を飲むのが賢明だろう。

 現状バートリーは一人だが、彼女は《中央の影》の中でも対軍戦に特化した能力を持っている。
 争いが始まれば、数の差でこちらが押し切られるのは見えているからな。
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