Sランクギルドの主力メンバーやっていた少女が追放されたので、うちのパーティーに引き抜こうと思う

五月雨蛍

文字の大きさ
18 / 78

第十七話 饒舌の魔女再び

しおりを挟む
「ただいま~」
「おかえり」
 休憩中、狼の乗り心地を確認がてら食料を探しに行っていたアメリアとジャックさんが帰ってくる。
 どうやら戦果は上々だったようで、ラムネの実などのいくつかの果実を持ってきてくれた。

「ありがとう」
「ありがとうございます!」
「……ありがとう」
 それぞれがアメリアからラムネの実を受け取り、それにかぶりつく。夕食前にはシャマに到着する予定なので、これだけあれば十分だろう。

 休憩後、フェリアエル・ウルフたちの協力もあり、十五時を回った頃には偽の依頼状でシャマの検問を突破した。

 シャマに着いた俺たちは、西側の見えるエメラルドグリーンの海を尻目に真っ直ぐに宿を目指す。
 無事に宿まで到着し、ジャックさんがチェックインをしてくれたわけだが、ここで問題が発生した。

 勿論、問題というのはジャックさんが受け付けに金貨が溢れんばかりに詰められた袋をドン!と置いて「この宿の一番良い部屋を頼む」と言ったことではない。

 ──俺たちは、単純に部屋割りで揉めていた。

「私、今日はルシェフさんと寝るから」
「そんなの駄目です!今日は私がブラウンさんと相部屋にするんです‼︎」
 俺の袖を軽く引っ張るレオナに対し、オリビアが腕ごと引っ張ってくる。

「いやぁ、モテモテだね」
 アメリアが今までに見せたことのないような良い笑顔で冷たくそう言い放つ。

「待て、俺はまだ何も……」
「……駄目?」
 俺の声を聞いたレオナは、すごく哀しそうな表情で俺の目を覗き込んでくる。

「いや、別に駄目って言う訳じゃ……」
 以前レオナを泣かせてしまった事もあり、レオナの哀しそうな表情に弱い面が際立ち、どっち付かずな返答をしてしまった。

「じゃあ、良いね」
「」

「あの、お客様。大変申し訳ないのですが、後ろに行列が出来ておりまして……」
 ジャックさんの置いた金貨を見てから、淡白な態度から打って変わった受付から、申し訳なさそうに窘められる。
 どうやら、大分話し込んでしまっていたようだ。後ろを見ると、既に何人かの客が列を作っていた。

◇ ◇ ◇

 そんなこんなで一度列を外れたわけだが、論争は荒れるに荒れ、結果的に各人に部屋が一部屋割り当てられる形で何とか話が落ち着いた。
 それから近場で夕食を摂り、再び宿に戻る。

「ルシェフ、いる?」
 俺がベッドで寛いでいると、扉の向こうからアメリアの声が聞こえた。

「あぁ」
 俺が返事をすると、ギィと扉の開く音が聞こえ、アメリアが部屋に入ってくる。

「どうかしたのか?」
 俺がベッドに座り直して尋ねると、アメリアが楽しげな声色とは裏腹に、真剣な眼差しで真っ直ぐに見つめてくる。

「どうかしたのか?って、随分とご無沙汰だね。久しぶりに会ったから、色々と積もる話があるだけだよ」
「……」
 積もる話というのは、もしかしなくても“あの話”なのだろう。自分でやらかした事とはいえ、少し頭が痛かった。

「あのときは手紙だけ残していきなりいなくなったから、皆心配したんだよ?」
「悪い……」
「何で、誰にも相談してくれなかったの?」
「……」
 理由なんて言えるはずがなかった。少なくても、話して解決するような事でもないし、アメリアに余計な心配をかけることにしかならないからだ。
 俺が答えあぐねているのを見たアメリアは、俺の前まで来ると少し屈んで俺の頬にそっと手を添える。

「まぁ、謝ってくれたし、今日はそれで良いけど、あんまり一人で抱え込まないでね」
「あぁ……」

「じゃあ、私からはそれだけ。西の国に着いたら、皆に捕まるだろうから覚悟しておいてね」
「あぁ」
 伝えたいことを伝えて満足したのか、アメリアはそれだけ言い残して部屋を出ていった。

「ルシェフ・ブラウン、いるか?」
「どうかされたんですか?」
 アメリアが去ってから数分、ジャックさんが俺の部屋を訪ねてきたようだ。

「扉を開けてくれないか?」
「すいません、すぐに開けます」
 それだけ伝えて扉を開けると、自慢げに胸を張るオリビアと、彼女の後ろからそっと部屋の様子を窺うレオナの姿を確認することができた。

「結構似てませんでしたか?……イタッ!」
 オリビアが自慢げにそう言ってきたので、彼女の頭に軽くチョップを喰らわせる。
 どうやら、先程の声真似はオリビアの仕業だったようだ。

「迷惑だった……?」
「そんなことないよ」
 レオナが俺の顔色を伺うようにそう聞いてきたので、怖がらせないようにそっと頭を撫でる。

「ルシェフ・ブラウン、いるか?」
 部屋を訪ねてきた二人と談笑していると、今度は本物のジャックさんが訪ねてきたみたいだ。ついオリビアの方を見てしまったが、勿論声真似などではない。

「はい!今開けますね」
 扉を開けると、ボトルワインを持ったジャックさんの姿があった。

「邪魔したか?」
「いえ!そんなことないです」
 部屋にいる二人の姿を確認したジャックさんがそう言ったので、慌ててそれを否定する。

「それで、どのような……?」
「何、向こうで“良い物”が手に入ったのでな。それを開けようと思っただけだ」
 ジャックさんが小さく笑みを浮かべながらボトルを軽く持ち上げる。

「そうでしたか。どうぞ」
 ジャックさんを部屋に招き入れ、人数分のグラスを用意する。

「レオナは飲めるか?」
「うん」
 あまり酒の強そうにないレオナにそう確認してみたが、取り敢えずは大丈夫みたいだ。

「これは、私もあれを出すしかないですね!」
 オリビアが、やけに自信たっぷりに自身のマジックバッグを漁り、中からリティシュで買ったと思われる、丸く整形されたチーズの塊を取り出す。

「あ、私アメリアさん呼んでくる」
 レオナはそれだけ言うと、そっと立ち上がり、部屋を出ていった。

「ズルいよ!お父さん。何で私だけ除け者にするの!」
「いや、まさか二人がいるとは思わなくてな……」
 部屋に来るなり頬を膨らませていたアメリアを、ジャックさんが少し辿々しく宥める。

「珍しいですね。ジャックさんが、さしで飲みに来るなんて」
「何、たまには良かろう?“積もる話”もあったしな」
「そう、ですね……」
 悪い顔で笑うジャックさんに、俺は乾いた笑いを返すしかなかった。

「もう、ブラウンさん!聞いてるんですか!!」
 ワインを開けてから暫く経ち、案の定、騒ぎ始めた《饒舌の魔女》に絡まれる。隣で静かにワインを煽るジャックさんが、少し引き気味に横目でオリビアの様子をチラチラと見ていた。

「その、何だ。あまり抱え込むなよ」
 レオナとアメリアが睡魔にやられ、《饒舌の魔女》が一度小休止を挟んでいた所で、ジャックさんが、ポツリとそう呟いた。

「はい。ありがとうございます」
 どうやら、ジャックさんもあのときのことを気にしてくれていたみたいだった。

◇ ◇ ◇

 時を同じくして、リティシュにある某宿屋の一室で、アーヴィン・ハスラーは、アリスから自身の所属するパーティー、《スピリッツ・サーヴァント》の今後の方針についての話を聞いていた。

「レオナを引き留めることには失敗したが、私たちも取り急ぎ西の国に行こうと思う」
「何故、このタイミングで西の国に?」
 アリスの言葉を聞いたアーヴィンがそう聞き返す。少なくても、アーヴィンにはアリスがレオナ恋しさに西の国に行こうとしているわけではないことが理解できていた。

「レオナの“監視”だ。勿論、レオナが心配だということもあるが、それが父上から私に課せられた仕事だからな。ここまで話せば、何となくわかるだろ?」
「……」
 アリスの言葉の真意を理解したアーヴィンが重々しく頷く。

 アリスから何か情報提供があったわけではなかったが、アーヴィンはレオナがアリスにとって、いや、エルフ全体にとってである可能性について考察していた。
 今回のアリスの言葉によって、アーヴィンの中でそれが確信へと変わる。
 その上、アリスは“警護”ではなく“監視”と言った。つまり、そういうことだった。

「このまま馬車で西の国を目指すのか?」
「いや、一度ペルシャンに戻る予定だ。依頼は失敗したが、その報告をしに《ストルワルツ》に寄った後、屋敷に戻ってクラウスの力を借りるつもりだ」
「成る程」

 クラウスというのは、ヴァイス家で飼育している、アリス用に育てられた小竜スモールドラゴンの名前だ。
 竜馬も普通の馬車に比べればかなりの速度が出るが、それでも小竜の比ではない。

 彼らのペルシャン行きは依頼の報告義務を果たすためということもあるが、何より、レオナたちが黒竜で移動しているため、それに追い付くためには小竜の力が必要だとアリスが考えたためだった。

「一先ずは夕食を兼ねてその事を他のメンバーにも伝えに行こうか」
「あぁ」
 アリスが椅子から立ち上がり、扉の方へと向かう。アーヴィンがそれに追随する形で、二人は部屋を出ていった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。

織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。 父であるアーヴェント大公に疎まれている―― 噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

ウルティメイド〜クビになった『元』究極メイドは、素材があれば何でも作れるクラフト系スキルで魔物の大陸を生き抜いていく〜

西館亮太
ファンタジー
「お前は今日でクビだ。」 主に突然そう宣告された究極と称されるメイドの『アミナ』。 生まれてこの方、主人の世話しかした事の無かった彼女はクビを言い渡された後、自分を陥れたメイドに魔物の巣食う島に転送されてしまう。 その大陸は、街の外に出れば魔物に襲われる危険性を伴う非常に危険な土地だった。 だがそのまま死ぬ訳にもいかず、彼女は己の必要のないスキルだと思い込んでいた、素材と知識とイメージがあればどんな物でも作れる『究極創造』を使い、『物作り屋』として冒険者や街の住人相手に商売することにした。 しかし街に到着するなり、外の世界を知らない彼女のコミュ障が露呈したり、意外と知らない事もあったりと、悩みながら自身は究極なんかでは無かったと自覚する。 そこから始まる、依頼者達とのいざこざや、素材収集の中で起こる騒動に彼女は次々と巻き込まれていく事になる。 これは、彼女が本当の究極になるまでのお話である。 ※かなり冗長です。 説明口調も多いのでそれを加味した上でお楽しみ頂けたら幸いです

処理中です...