Sランクギルドの主力メンバーやっていた少女が追放されたので、うちのパーティーに引き抜こうと思う

五月雨蛍

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第二十六話 救援

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「お疲れ、レオナ」
 そう言って、詠唱を終えた彼女にもスパイスドリンクを渡す。

「ありがと……」
 詠唱を終えてから小さく震え始めたレオナが、震える手でカップを受けとり、俺の横に腰掛けて肩をピッタリとくっつけてくる。詠唱中は集中しているようだったようで、この寒さにも気づかなかったのかもしれない。

 未だに降り続く雹により視界が少し遮られるが、ジャックさんとフレディには魔力探知があるから、二人の移動にはそこまで支障はないだろう。

 既に四百は確認できている前方のスケルトンたちには被害が出ていないものの、後ろのスケルトンたちの先鋒を努めていたスカルドラゴンとスカルライダーの姿はない。
 さらには、後方の地面が氷漬けになっている関係で、スカルホースは動けなくなり、後続のスケルトンたちの足止めに成功していた。

 ──レオナは、背後の地形ごと凍土へと変え、北の国を彷彿させるような銀世界を作り上げていた。

 それでも、前方から迫る四百以上のスケルトンの相手を真面目にしていたら、間違いなく後方のスケルトンたちに追いつかれるだろう。向こうの術士の中で風魔法の使える者には足場なんて関係ないからな。

「あ、あの……レオナさん、さっきのって──」
 オリビアがレオナの顔色を不安そうに窺いながらそう尋ねる。

「……言わないと不味いよね」
「別に、無理して話さなくても良い」
 俺が何かを言う前に、レオナの表情を見たニコが淡々とそう告げる。

 ニコが先にそう言ってくれて助かった。レオナに無理強いをして聞くつもりは勿論なかったが、あの魔法は俺とも所縁があるものだったため、一瞬とはいえ聞くべきか迷ってしまっていたからな。

「──それにしても、用意が良いね」
「何のことだ?」
 唐突にそう切り出してきたニコに、そう尋ね返す。

「さっきの飲み物のこと。普通なら、ここに来るのに耐寒なんて必要なかったでしょ?」
 相変わらず、彼女は勘が良い。

「別に、備えは多い方がいいだろ」
 正直なところ、レオナ程の大規模な殲滅魔法が使えるわけでもないが、俺もさっきの魔法に近い現象なら起こすことが出来た。スパイスドリンクは、そのための保険だ。
 だが、レオナの事情がわからない手前、取り敢えずはそうはぐらかす事にする。

「まぁ、そうなんだけどね」
 ニコも特に詮索はしてこなかったので、ここでこの話は打ち切りになる。
 疎らに降っていた雹が降り止んだので、一度防御壁を解いた。

「そろそろ射程圏内に入ります。──撃っても良いですか⁉︎」
 いつもの調子を取り戻した《戦慄の魔女》がそう叫ぶ。既にスケルトンの群れは彼女の射程圏内に入っているようで、俺の索敵にも七百を越えるスケルトンの反応があった。

 何ていうか、この数になると数えるのも嫌になるな……。
 状況を見るに、俺たちの知らない抜け道が使われた可能性も考慮する必要がありそうだ。地図を頼りに四層まで行ったが、それには載っていない抜け道を使って彼らは先回りをしてきた可能性がある。

「ブラウンさん?」
「あぁ、悪い。もう撃っても大丈夫だ」
 今は目の前の敵に集中するべきか。

「──ん?」
 オリビアが四重で唱えた【戦慄の光球体】を撃ち、俺も各人に【ロニゲスメイシュ】をかけたところで、索敵に高速で飛来する何かが映る。
 それからすぐ、まるで彼らの時間が静止したかのように七百を越えるスケルトンの足が一斉に止まった。

 高速で飛来する何かはすぐに視認できる距離まで近づき、それが竜種であることがわかり、それに乗る見知った顔の一行の姿が確認できた。

 初めに二人が竜の背中からこちらへと飛び移ってきた。

「よぉ、兄ちゃん。モテモテじゃねぇか!」
 エビ男を引き連れたカニ男が後方から追ってくるスケルトンの群れを見ながら、下衆な笑みを浮かべて楽しげに話しかけてくる。

「何でこんなところに……?」
 レオナを庇うように前に出てそう伝える。オリビアは、熱い視線を送ってきていたエビ男から逃げるように俺の後ろに隠れてしまった。

「今回は別に争うつもりはねぇよ。雇われて来ただけだしな」
 カニ男が、後ろへと意味ありげな視線を向ける。その視線を辿ると、《スピリッツ・サーヴァント》のメンバーを乗せた小柄な竜が、ジャックさんの隣に並び、アリスがこちらへと飛び移ってくるのが見えた。
 前回の一件があったからか、普段より険しい顔つきのアーヴィンがアリスに続く。

「アリス!」
「レオナ」
 先程まですごい形相で俺を睨んできていたアリスが花の咲いたような満面の笑顔になり、彼女の元に駆け寄ってきたレオナを抱き止める。

 隣の小さな竜に乗るマルヴィナが少しぐったりと横になっていることから、スケルトンには彼女が大規模な精霊魔法で足止めをしてくれたのだと気づいた。
 彼女の努力を無駄にしないためにも、急ぎダンジョンを出た方がいいだろう。

「すまない、手紙に気づくのが遅れた」
「……やっぱり。見てたらリティシュで会えないもんね」

「……」
 アリスとレオナが微笑ましげに会話をするなか、無言でアーヴィンと向き合う。
 カニ男たちは俺たちの様子を見て、気まずそうに向こうの竜の方へ戻っていった。

「……」
 ここにきて、いくつかの疑問が解決した。
 あのときは何故ニコが真っ直ぐに追って来られたのか疑問だったが、それ以前に、カニ男たちが西の国で俺たちの前に出てきた時点でおかしかったんだ。

 そもそも、ジャックさんでシャマまで移動した俺たちに、カニ男たちが追い付いたこと自体が異常だった。
 そのことにすら気づかなかったことに少し自己嫌悪しながらも、まだ足りないピースがあることに気づく。

 ニコについては、《スピリッツ・サーヴァント》と何らかの繋がりがあると仮定して、カニ男たちから事前に居場所を聞いていたとする。だが、奴等はどうやって居場所を特定したんだ?
 奴等が何らかの手段で俺たちに追い付いたとしても、居場所がわからなければ意味がないはずだ。
 ただ、今はそれよりも優先することがあるか……。

「マルヴィナ」
 アーヴィンの横を通りすぎて隣の竜の方へ飛び移り、彼女の元へ向かう。

「どーしたの?」
 ぐでっとしていたマルヴィナが、気怠げに起き上がった。

「ほら、カルパスの実だ」
「……ありがと」
 カルパスの実を受け取ったマルヴィナが、それを食べる。カルパスの実には、多分な魔素が含まれているため、気休め程度にはなるだろう。

 無事に第一層へと続く門を潜り、ダンジョンの入り口を目指していると、複数のスケルトンが突如出現した魔方陣から現れるが、ジャックさんたちが吐息で一掃する。
 今の魔方陣を見る限りだと、七百近くいたスケルトンたちも抜け道使ったというよりかは、転移などの可能性を疑うべきか。

 第一層に着いてからは、散発的な戦闘があっただけで、そのままカルレランを後にすることができた。

 カルレランを出たところで、フレディとジャックさんには竜化を解いてもらって状況の確認をする。
 そこで、レオナを追っていた《スピリッツ・サーヴァント》とオリビアを追っていたアンナが共謀していたことを聞かされた。俺たちの居場所については、アンナの“予想”を頼りに突き止めたそうだ。

 ニコは《スピリッツ・サーヴァント》からの依頼という形でレオナの護衛もしていたようだった。
 つまり、彼女は今回のダンジョンアタックで二重の報酬を得ていることになる。相変わらず、ニコはそういうところが抜け目ない。

 その時にアンナからの伝言として、ニコとオリビアはともかく、俺の脱退処理が終わっていないことも伝えられた。
 ──どうやら、受理される前に差し押さえられたようだ。

 《スピリッツ・サーヴァント》がカルレランに来た経緯としても、ギルドメンバーである俺の救援的な意味もあったようだ。実際助かってはいるが、アンナの珍しい行動に少し薄気味悪さも覚える。
 ギルドストルワルツの方には気持ちばかりのをしてきたので、それが効いただけだろうか……?

 レオナはレオナで《スピリッツ・サーヴァント》のメンバーと話をつけたようで、暫くは俺たちと一緒にいられるようだった。
 《スピリッツ・サーヴァント》の面々も暫くは西の国で活動するそうだが、ニコがいればレオナの方は大丈夫だろうということで、俺たちと行動を共にするつもりはないそうだ。

 俺たちはこの後、オリビア追放の原因となった魔石が売られると思われる、闇市の開催されるセンタリーに向かう予定だが、その前にスケルトン・ナイトの魔石の換金などもあるので、一度アリオンのギルドへと向かうことにした。
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