Sランクギルドの主力メンバーやっていた少女が追放されたので、うちのパーティーに引き抜こうと思う

五月雨蛍

文字の大きさ
33 / 78

第三十二話 キャロル

しおりを挟む
「奇遇だな。一人か?」
「うん。少し気晴らしに出てきただけだからね」
 俺の問いに、マルヴィナは小さく笑みを浮かべる。
 一度別れていたが、どうやら彼らはまだこの付近にいるようだ。

「ルシェフたちは何か買い物?」
「そんなところだ。良ければ、君も来るか?」
「うん。──そうしようかな」
 レオナにアイコンタクトで何らかの意思疏通をしたマルヴィナは、少し考えた後そう言ったので、五人で町を散策することになった。

「そういえば、カルレランを出るとき、あの数のスケルトンをどうやって止めたんだ?」
 街を散策する中でマルヴィナにそう尋ねる。単純に、あの現象をどうやって引き起こしていたのかが気になっていたからだ。

「ニュクスたちの力を借りて、スケルトンの視覚を奪ったんだよ。私たちの姿を消すだけにして消費を抑えることも出来たけど、あのダンジョンの性質上、見えない相手に攻撃してくるなんてことも出来そうだったから、ね」
「そうだったのか」

「うん。シルフたちに協力してもらってクラウスの手助けをした後だったから、流石に疲れたよ~」
 愚痴気味にそう言ったマルヴィナが、気だるげに自身の頭を俺の肩に寄せてくる。

「お疲れ」
 そう言って彼女の頭をくしゃりと撫でる。
 確かに、小竜スモールドラゴンなら“追い風”での加速もバカにならないなと納得する。ジャックさんたちには重さ的に使えない方法ではあるが。

「……」
 マルヴィナに対抗してか、レオナもピッタリとくっついてくる。ただ、町中ということもあり少し抵抗があるのか、それ以上のことはしてこなかった。

「あの店を見ていきませんか?」
 何か気に入りそうな店でも見つけたのか、オリビアが朗らかな笑みで一件のブティックを指す。
 二人に視線を送り、問題が無さそうだったので、そのままオリビアについていく。
 店の前まで来たところで、刃物のような鋭い視線に気づき、慌てて踵を返した。

「じ、じゃあ、俺はそこの魔道具店見てるか──」
「……」
 踵を返して小物店に向かおうとしたところで、レオナに袖を引かれた。

「レオナ、悪いけど……」
「……」
 まだ夕方だし、ごった返す程でないにしろ、ブティックもそれなりに混んでいる。間違えても、俺にはあのご婦人方戦鬼たちが視線による牽制での争いを繰り広げている売り場戦場へと繰り出す勇気はなかった。
 ご婦人方には気を見て売り場への突攻を試みる方もおり、中々に近づけるような状態ではない。
 この状態で今から割って入ってまともに買い物できるのなど、ニコくらいしかいないだろう。

 結果的に、レオナは俺の方についてきたので、ニコを含めた三人で魔道具店を見ながら二人の帰りを待つことにする。
 よく考えると、さっきからニコはレオナの傍を片時も離れようとしていない。
 ──もしかしたら、アリスたちからそういった依頼を受けているのかもしれないな。

 魔道具店に入るなり大小様々なマジックバッグが目に入るが、それ以外にもいくつかの量産された魔道具があり、疎らではあったがダンジョン産の物とおぼしき魔道具も見受けられた。

「お待たせしました!」
 三人で暫く魔道具店でたむろしていると、オリビアとマルヴィナが戻ってきた。

「ブラウンさん、どうですか?」
 早速ブティックで買った服を着ているオリビアが、嬉々としてそう尋ねてくる。

「似合ってるよ」
「ありがとうございます!」
 言いながら、オリビアが花笑む。それに釣られ、つい自身の口角も緩んでいたことに気づいた。

「……やっぱり、ブティック見てく」
 少し不機嫌そうなレオナが、ブティックの方に向かっていたので、慌ててそれを止める。
 何とかレオナを説得し、全員で近場のカフェへと入った。

「……ハッ、ルシェ──じゃないか!」
 入り口付近のテーブルに座っているがたいの良い男が、突然思い出したようにそう叫んだ。
 その見知った男の視線は俺の近くへと向いていたが、周囲を見回してみてもルシェと思われる人物は見えない。間違えても俺ではないだろう。

 そう思い、空いている席を探して店内を進もうとすると、何を思ったのか、席を立った男にガシッと肩を掴まれる。

「俺だよ、俺。もう忘れちまったのかよ!」
 勿論、この男の顔に心当たりはあったが、俺の記憶が正しければ、この男はおれに対してこのような笑みを浮かべるような奴ではなかった。

「覚えてるよ。《剛腕》鈴木剛だろ」
 俺の記憶にあった彼とはかけ離れた存在ではあるが。

「それで、何か用か?」
「“天使”からの伝言だ。『何か困ったことがあれば相談に乗りますから、頼って下さいね』だと。一週間くらいなら、王都ペリアティいるそうだ。何だったら、俺が転移で王都まで連れていっても良いが、どうする?」

 用事があったなら、俺の名前くらいは覚えていて欲しかったな……。それにしても、“天使キャロル”の方からその申し出があるとはな。
 俺からしたら手間が省けて助かるが、向こうがどこまで俺たちの状況を知っているのかを考えると、少し怖いな。

「剛、転移で王都まで俺たちを連れていくのは、“天使キャロル”の指示か?」
「いや、ただのサービスだ」
 俺の問いに、剛は神妙な面持ちでそう答えた。

「そうか。、こっちでの用事を済ませてから王都に向かわせてもらうよ」
「わかった。王女には、その旨を伝えておく」
 剛はそれだけ言うと、近くにいたウェイターを呼んで会計を済ませる。その次の瞬間には、彼は店内から姿を消していた。

「どこか座りませんか?」
「あぁ」
 オリビアに促され、取り敢えず適当な席に座ることにする。

「ルシェフさん、さっきの人って?」
 目でマルヴィナを牽制して隣に座ったレオナに尋ねられた。

「鈴木剛。アメリアと同じ、西の国の国家公認冒険者だ」
 俺の知っている彼が、女性を見て何も反応がないなんてことは滅多に無いんだが……まぁ、キャロル関連の依頼では仕方ないか。

 後日、依頼を済ませた彼が、オリビアたちからの評価を上げるために花束でも持って俺たちの前に出てきそうで怖いな……。彼なら、そのくらいはしそうだ。

「そう」
 あまり興味が無かったのか、自分で聞いておいたのにも関わらず、レオナは手に取ったメニューの方へと目を落とす。

「ブラウンさんは何にしますか?」
 レオナと同じくメニューに目を落としていたオリビアが、俺の方に目を向けてそう尋ねてくる。この様子だと、いつものように何を頼むのか迷っているのかもな。

「特に決まってないよ。決まってるのは、ショコララテを頼むくらいだ」
「実は、ガトーショコラにするか、気まぐれショコラティエにするか悩んでまして…」

「両方頼めば良いんじゃないか?」
「……」
「……俺はどっちでも良いよ」
 適当にあしらわれたとでも思ったのか、オリビアがむくれた表情で見つめてきたので、諦めてそう告げる。

「本当ですか!じゃあ、私は気まぐれショコラティエにするので──」
「わかったよ。レオナはどうする?」
 言いながら彼女の持つメニューへと目を向ける。名産とはいえ、やけにショコラの使われたメニューが多いな。
 元々ペルシャンではハチミツ文化が浸透しているし、甘いものに対する抵抗は少ないが、見ていて胸焼けがしそうだ。

「私は、ショコララテとラムネパイにしようかな」
 レオナの言葉を聞いて、向かいに座るマルヴィナの方に視線を向けると、彼女が小さく頷いたので、店員を呼んで手早く注文を済ませる。

 それから十分ほどで注文したものが届き、十分に羽休めをした俺たちは再び町へと繰り出す。
 一時間程経ち、町の散策をした俺たちが宿へと戻ると、見知った男の姿が確認できた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。

織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。 父であるアーヴェント大公に疎まれている―― 噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。

白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

ウルティメイド〜クビになった『元』究極メイドは、素材があれば何でも作れるクラフト系スキルで魔物の大陸を生き抜いていく〜

西館亮太
ファンタジー
「お前は今日でクビだ。」 主に突然そう宣告された究極と称されるメイドの『アミナ』。 生まれてこの方、主人の世話しかした事の無かった彼女はクビを言い渡された後、自分を陥れたメイドに魔物の巣食う島に転送されてしまう。 その大陸は、街の外に出れば魔物に襲われる危険性を伴う非常に危険な土地だった。 だがそのまま死ぬ訳にもいかず、彼女は己の必要のないスキルだと思い込んでいた、素材と知識とイメージがあればどんな物でも作れる『究極創造』を使い、『物作り屋』として冒険者や街の住人相手に商売することにした。 しかし街に到着するなり、外の世界を知らない彼女のコミュ障が露呈したり、意外と知らない事もあったりと、悩みながら自身は究極なんかでは無かったと自覚する。 そこから始まる、依頼者達とのいざこざや、素材収集の中で起こる騒動に彼女は次々と巻き込まれていく事になる。 これは、彼女が本当の究極になるまでのお話である。 ※かなり冗長です。 説明口調も多いのでそれを加味した上でお楽しみ頂けたら幸いです

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

処理中です...