Sランクギルドの主力メンバーやっていた少女が追放されたので、うちのパーティーに引き抜こうと思う

五月雨蛍

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第五十七話 悪魔の兵器

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「おかえり。二人とも」
 買い出しを終えた俺たちが夕食の準備をしていると、ニコを連れて別の買い出しに出かけていたオリビアが部屋に戻ってきたので、ラム肉の方を見てて手の離せないレオナに代わって、二人を出迎えた。

「良い匂いですね~」
 機嫌の良さそうなオリビアが、吸い寄せられるようにレオナの作るラム肉のドライフルーツ煮の鍋の元に向かう。

「少し煮込むのに時間がかかるから、これはまた後でね」
「はいっ!」

「──どうした、アルマ?」
 先ほどから部屋の中を挙動不審に行ったり来たりしていたアルマに声をかける。

「いや、何か手伝えることとかないかなって……」
 少し申し訳なさそうにそう言ったアルマの頭を無意識の内に撫でていた。

「別に、無理に何かしなくても良いよ」
「……うん」
 案の定、難しい顔をしたアルマに少し煙たがられてしまったが、俺の言いたいことは伝わったようで、ゴラン達の方に合流していた。

「サンクレイア」
 夕食の支度が整ったところで食前の挨拶を済ませ、リディアが調理してくれたラム肉のステーキにワサビソースつけていただく。

「うん」
 一口大に切ったステーキを食べたニコが満足げに頷いた。
 ニコが辛いものを苦手としていることを知っていたので、大丈夫なのかと聞いていたが、本人が言うには、ワサビソースの辛味なら大丈夫らしい。
 ワサビソースは東の国発祥の調味料だし、慣れがあるのだろうか?

「ゴラン、さっきはアルマと仲良さそうだったじゃないか?何話してたんだ?」
 当たり前のようにアルマの横でグラスを煽っていたゴランに、酒の勢いに任せてそう尋ねる。

「大したことじゃあないですよ」
 少しひきつった表情でそう言うゴランに、彼が嘘を吐く人間でないことを知っていながらも、何かあったのではないかと勘ぐってしまう。

「お兄ちゃん!酔いすぎだよ?別に、何話してても勝手でしょ」
「俺はお前のことを心配して──」
「そういうの、本当に良いから」
 俺が言い終える前に、アルマが未だかつて見たことがないくらい冷めた表情でそう告げる。
 これは、少しやり過ぎてしまったかもしれない……。

「悪い……」
「このくらいで、泣かないでよ……」
 ホロリと一滴の涙を溢した俺に、アルマが呆れたようにため息を吐く。

「大丈夫?」
「あぁ」
 横にいるアメリアも、少し心配そうに声をかけてくれた。

「出来たよ」
 ラム肉やつまみを食べながらグラス片手に騒いでいると、ドライフルーツ煮の煮込み工程を終わらせたレオナが、皿を運んできた。

「あっ、手伝います」
 皿を運ぶレオナを見て、アルマも手伝いに行く。
 さて、俺も手伝いに行くとしよう。

「おいしいですね」
「あぁ」
 旨そう──というよりか幸福そうにラム肉を頬張るオリビアも同意する。

 ドライフルーツ煮は、出来上がるまでに少し待ったが、その分しっかりと味が染み込んでおり、一口食べると、肉はほろりと崩れ、果実由来の甘い風味が広がった。

 食後、食器を洗うのは自身から動いたアルマに任せ、俺は酔いつぶれたアメリアとリディア、レオナの三人を運ぶことにする。

 ゴランも意識はあったが、食事中俺が酒を勧めながら絡み続けていたからか、少しぼおっとしていた。
 少し機嫌の良さそうな《饒舌の魔女》が、何やら叫びながらゴランの背中をバシバシと叩いている姿が見える。彼女はまだ意識があるようなので、ゴランが相手をしてくれている内に寝ているメンバーを部屋に運んでしまおう。

 先にアメリアを彼女の部屋に運び、それからリディアを部屋に運ぶ。

「……ルシェフ?」
「悪い、起こしたか?」
 リディアの部屋に入ったところで、リディアが目を覚ましたようだった。

「ううん……」
 俺の言葉にリディアが眠たそうな声でそう返す。

「今日はもう寝とけ」
「うん……」
 リディアが返事をしたことを確認し、彼女をベッドに寝かせ、そのまま部屋をあとにした。

「……ぅん?」
 翌朝、何者かに揺さぶられて目を覚ます。
 目を開くと、真っ青を通り越して真っ白な顔のオリビアが目に入った。

「──⁉︎」
「ブ、ブラウンさん……酔い止めを……ガクッ」
「──大丈夫か?」
 目の前で力尽きたオリビアに声をかける。

「……」
 オリビアからの返事はない。もう手遅れのようだ。

「じゃあ、適当に朝食を買ってくるから」
「はい、ありがとうございます……」
 未だに白い顔のオリビアに酔い止めを渡すと、そのまま部屋を出る。

「おはよう」
「あぁ、おはよう」
 偶然、向かいの部屋から出てきたリディアと共に、朝食の買い出しに出かけることにする。その前に、二人で手分けして各人の部屋に赴き、起きている人間にはその事を話してきた。

「こうして二人で出かけるのも久しぶりね」
「あぁ」
 リディアと二人、センタリーの町を歩く。センタリーは闇市があるため、東の国とは異なり、朝が比較的遅い。その関係で、人通りなどは殆どなく、空いている店もまた、見当たらなかった。

「見事に閉まってるな……」
「そうね」
 朝食の調達が出来ないのにも関わらず、リディアの機嫌は何故か良さそうだ。

「悪いな……少し歩くことになりそうだ」
「気にしないで。私も話したいこと色々あったし」
 俺の言葉に、頬を緩ませているリディアが、そう答える。
 移動の馬車の中であれだけ話しておいて、まだ話足りないのだろうか?

 馬車の時と同様、舌の回るリディアと共に開いている店を探す。
 大分歩いてしまったが、数十分後には何とか開いている店を見つけることが出来た。

「昔、ウォータースライダーに乗ってたときのことなんだけど、その時のお兄ちゃんが──」
「ただいま」
 部屋に戻ると、既に起き出していたらしいアルマとレオナが、会話に花を咲かせているようだった。

 オリビアはまだ本調子じゃないのか、ベッドで横になっている。
 アメリアたちは自分の部屋にいるのだろう。

「二人ともおかえり」
「あぁ、ただいま」
 出迎えてくれたアルマの頭を軽く撫で、朝食を机に置く。

「おかえり」
「ただいま。レオナ、悪いけど、皆を呼んできてもらっても良いか?」
「わかった」
 レオナが部屋を出ていき、俺はオリビアの元に向かう。

「まだ体調は悪そうか?」
「はい……」
「そうか。ちょっと待っててくれ」
 オリビアにそれだけ伝え、机の元に向かうと、必要な道具を取り出していく。

 二日酔いにはハチミツが効くらしいので、ラムハニーを作ることにしていた。

「カップの数が足りてないんじゃない?」
「わかったよ」
 悪戯っぽく笑い、そっと自身のカップを出したアルマに、小さくため息を吐きながらも、冒険者になったからか随分としたたかになったアルマに少し安心した。

 リディアの分とついでに自分の分も含めて四人分のラムハニーを作ることにする。

「ほら」
「ありがとうございます……」
 ラムハニーを作り、横になっているオリビアにそれを渡した。

「おはよ……」
「あぁ、おはよう」
 眠たげに部屋に入ってきたニコが小さくあくびをする。
 後は、ゴランとアメリアだけか。

「おはようございます」
「おはよう~」
 無事に二人を連れてきたレオナも帰ってきたところで朝食にし、何とか歩ける程度には回復したオリビアを含め、全員で商隊と合流する。

「アルマ、ところでレオナと何を話してたんだ?」
 馬車に乗り込んだところで、アルマに気になっていたことを尋ねる。

「ウォータースライダーの話だよ。昔乗ったでしょ?」
「あ、あぁ……そうだな……」
 個人的にはあまり思い出したくない話だっただけに、少し吃りながらそう答える。

「ルシェフさんにも、苦手なものがあるんだね」
「俺にも、そのくらいはあるよ」
 小さく笑うレオナに、そう返す。悪魔の兵器ウォータースライダーが嫌いなあまりに少し淡白な返し方になってしまったが、レオナは特に気にしていないようだった。

 忘れもしない。あれは、俺が幼い頃に家族と共に東の国へと旅行に来ていた頃の話だ。

「あれ、乗ってみたい!」というアルマの言葉に、家族で東の国で開発されたらしい、十人乗りくらいの機械仕掛けの悪魔の兵器に乗ったわけだが、東の国の悪魔の兵器は他の国の物とは別次元の代物だった。

「三、ニ──」
「は?」
 悪魔の兵器に乗るなり、いきなりカウントダウンが始まる。

「一、ゴーー‼︎」
 状況の理解できない幼少期の俺を他所に、見覚えのない魔方陣により加速された悪魔の兵器は、満を持して轟音と共に発車する。

「──⁉︎」
 悪魔の兵器は速さにビビって叫んだこともあるが、俺が叫んだ理由は他にあった。

 俺の眼前には既に水面が迫ってきていたためだ。
 有り体に言えば、悪魔の兵器は用意された道を辿りながら真っ直ぐに水中へと下降していた。

 結界の展開と共に、悪魔の兵器は水中へと疾走する。──そこで、俺は意識を失った。

 初めに、悪魔の兵器には結界と呼ばれる防御魔法を展開する魔道具が取り付けられているという説明を受けていたが、つまり、そういうことだったのだろう。

 悪魔の兵器が用意された道を通って定位置に戻ってきた後、意識を失った俺を見たアルマが、俺がまだ乗りたいから降りないのではないかと両親に訴え、二周目にも乗ることになるのだが、それはまた別の話だ。
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