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もちだ すしの

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「さくらちゃんなんか元気ない?」

俺の顔を覗き込む夢ちゃんと目が合えば優しく微笑んでくれる。あれからちゃんと光生と話せず2週間が経ってしまった。朝はたまに一緒に学校に行くだけで前みたいにうまく話せないし昼休みはなぜか毎日星くんにバスケを誘われて断る前に光生はどこかに1人で行ってしまう。

「夢ちゃん、、」

今日も放課後はこうやって部活に来ていてなんとなく見ているだけでは申し訳なくてマネージャーの仕事を手伝っている。

「うふふっ、椎名のこと考えてた?」

「え、、?なんでわかったの?」

まだなにも言ってないのに俺の考えていることがバレてしまった。

「だって椎名と同じような顔してたから!」

「……え?光生が?」

俺は今どんな顔をしていたのだろう。それに光生のそんな顔を夢ちゃんはいつ見たのかも気になるのに怖くて聞けない。

「もう!さくらちゃんも椎名もお互いに優しすぎるからもっとわがまま言い合えばいいのに!」

夢ちゃんは頬を膨らませていてなんだか怒っているようだ。

「俺優しいかな、、?この前光生のこと怒らせちゃったしそれにわがまま言うと困らせるし、、」

絶対に俺なんかより光生のほうが何倍も優しい。

「あははっ!困らせるなんて絶対にないって私、自信持って言い切れる!それにさくらちゃんは誰よりも優しいんだからそんなこと気にしなくていい!」

大きな声で笑う夢ちゃんは俺がずっと悩んでいたことを自信満々に笑い飛ばしていてかっこいい。

「夢ちゃんってたまに男前だよね、、」

「えー!ひどい!か弱い女の子なのに!」

大袈裟に傷ついたふりをする夢ちゃんはいたずらっぽく笑うと俺の肩を叩く。

「ほら!今日はもう帰って椎名に電話してわがままいっぱい言ってやりな!あいつさくらちゃんのことずっと待ってるから!」

男前と言ったからなのか口調までかっこよくなってしまった夢ちゃんがおもしろくて一瞬で元気になってきた。

「あははっ!夢ちゃんのそういうところ本当に大好き!」

「ふふっ!今の私すごいかっこよかったよね?」

「うん!かなりかっこよかった!」

2人でゲラゲラと笑い合ったあと夢ちゃんにお礼を言って急いで帰る。家に着けば親は仕事でいないしもう夕方になっていて外は暗く突然寂しくなってきた。さっきまでは夢ちゃんがいたからよかったけど一気に気分が落ち込んでくる。

「光生に電話して出てくれるかな……」

なんとなく不安でやっぱりやめようかなと思ったけど夢ちゃんがせっかく励ましてくれたんだし思い切って電話をしてみるとすぐに光生は出てくれた。

「もしもし?涼?」

最近はあまり話すことがなかったから光生の声が聞けてしかも俺の名前を呼んでくれたことに一気に気持ちが溢れてきて返事ができない。

「どうしたの?なんかあった?」

黙っている俺のことを心配そうにしている光生に苦しいくらいに胸がギュッと締め付けられる。

「光生………」

「ん?」

精一杯に出した小さな声に反応して優しく返事をしてくれた瞬間、勝手に涙が溢れてきた。

「……っ…光生…会いたい……」

こんなさっきよりも小さく呟いた俺の声なんて絶対に光生には届かない。

「ん、今から行く。」

そう思っていたのに光生は今から行くとだけ言って電話を切った。なんで今のこんな誰にも聞こえないくらいの小さな俺の声を光生は当たり前のように聞き取ってくれるのだろう。それに夢ちゃんの言った通りわがままを聞いてくれた光生は俺の不安をかき消すように優しく包み込んでくれた。
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