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本編 ~ 第三章 ~

22話 生と死の狭間 ~ひとりにしないで~

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「ねぇ……プリン……起きてよ」


 プリンの体はいくら揺すっても動かない。


 私のせいで……プリンが……ひとりにしないでよ。
 どうすればいいの? あっ……そうだ! スチムパックを使えば!


「今スチムパック使うから!」


 気が動転していた私は、スチムパックの存在すら忘れていた。
 私は急いでインベントリからスチムパックを取り出し、プリンの体にスチムパックの針をそっと当て、中の液体を注入した。

 しかし……それでもプリンは回復する様子もなく、変わらず微動だにしない。
 なんで……回復しないの?
 私の判断が遅かったのかな。もう少し早くスチムパックを使っていたら……。
 そんな事を考えると、私の中には後悔しか残らなかった。


 プリンは完全に死んでしまったのだろうか――
 私の判断が遅かったから動かないのだろうか――
 なんでもっと早く、スチムパックの存在に気が付かなかったのだろうか――



 私はプリンの体にしがみつき泣きじゃくった。


「ひとりに……しないで」


 しかしいくら泣いても、いくら体を揺すっても……結果は変わらない。
 もう私にはどうする事も出来なかった。


「どうすればいいの……大輔――」


 私はしばらくの間、安らかに眠っているプリンの横で、同じく壁にもたれかかっていた。
 広い部屋の中で、私の鼻水をすする音だけがいつまでも響いていた。





「私も……ずっとここにいようかな」


 私のせいでプリンは死んじゃったんだし、私もここで――
 大輔には会えないし、何回も私を助けてくれたプリンはもういないし……。

 私ひとりじゃ……生きていけない。



 ひとりになった私にはもう何も残っていない。
 絶望以外は何も――
 私は生きる希望を無くし、手に持っているピストルを自分の額に当てた。


 カチャ――


「大輔……ごめん」


 目を瞑りトリガーに指をかける。










「……るせぇな」


 え? 私はトリガーにかけた指を止め、ゆっくりと目を開く。


「プリン……? ね、ねぇ……プリン!」


 プリンは無理に笑顔を作って私の方を見ている。


「ははっ……うるせぇぞ……テン……」


 死んでない……死んでなかった! 私はそれが嬉しすぎて再び大声を上げて泣きついた。


「だから……うるせぇって」


 よかった……本当に……よかった。

 私はピストルを床に置き、目を覚ましたプリンの体に再びスチムパックを使った。
 そのお陰で体力は回復したみたいだけど、傷はまだ塞がっていない。


「……大丈夫?」
「一旦帰んぞ……お前ひとりで探索したって死ぬだけだ」


 そう言ってプリンはPitBoyピットボーイを見てマップを開いた。


「あぁ……外に出ねぇと飛べねぇな――うぁっ」


 傷口が痛むようだ。
 スチムパックを使ったが未だに血は止まる気配がない。

 プリンは痛みを堪え動かないであろう体を、無理矢理動かし体を起こした。
 私はプリンの腕を自分の肩に回しふたりで外へ向かった。



「……飛ぶぞ。お前も……来いよ」


 その言葉と同時に、私にかかっていたプリンの重みがなくなった。

 私もPitBoyピットボーイのマップを開き、小屋へファストトラベルした。

 ファストトラベルとは一度訪れたロケーションに一瞬で飛べる機能。
 凄く便利だけど、重量が限界で走れない時は使えない。





 小屋に着くとプリンは既に横になって寝ていた。
 私はプリンの横でベッドに腕を乗せ、その腕を枕に頭を乗せて目を瞑った。


「ごめんね……プリン」


 私はプリンの横で眠りについた。





 ――翌朝。


「んっ……」
「まだ起きちゃダメだよ」


 スチムパックを使って休んだから大丈夫だとは思うけど、まだ1日くらい安静にしてなきゃ。

 私はプリンと小屋にいた。寝ているプリンの看病をしながら。
 まぁ看病って言ってもたいした事はしてないけど。


「大丈夫だ。またあそこ行くぞ。探索の途中だ」


 え? また行くの? 私は……もう行きたくないよ。
 また同じ事になったどうすんの? せっかく生きてたのに、今度は本当に死んじゃうかもしれないし。


「もう……やだよ。死にかけたんだよ?」


 私がそう言うとプリンは真面目な顔をして話した。


「だからって諦めんのか? それじゃあこの世界で生きてけねぇぞ。それに――」


 プリンは一瞬言葉に詰まり、再び話始めた。


「まだ……お前に戦い方を教えてねぇ」


 プリンはあの研究所に行く前に、戦い方を教えると言って私を連れて行った……。
 でも……もうそんな事、もうどうでもいい。
 ……プリンに死なれたくない。


「もう……私をひとりにしないでよ」


 あの時、本当に死んだと思った。もうダメだと思った。
 でも生きてたんだよ。もうそんな思いしたくない。


「俺は死んでねぇ。これからも死なねぇ」


 死なないって言ってもそんなのわからないじゃん……。
 私はそう思ったけど、プリンの顔を見ると冗談で言ってるようには見えなかった。


「じゃあ――もうあんな事になんないように、私がプリンを守るから」
「ふっ……俺は女に守ってもらう趣味はねぇが――まぁいい」


 そう言ってプリンは、銃を肩にかけ小屋の外に出た。


 プリンを守れるように強くならなきゃ!

 私は……。
 大事な人を守れるくらい強くなる――
 そしてこの荒廃した世界で生き抜いてみせる!
 そう心に誓い、小屋の外へ足を運んだ。



 外に出るとプリンの姿はなかった。
 おそらくもうファストトラベルで移動したんだろう。
 私はPitBoyピットボーイのマップを開いて、ブトリック研究所を選択しファストトラベルをした。



 ブイン――
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