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第一章 第三幕 サバイバル

三十四話 疑心暗鬼

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「……キャンプが燃えてる」


 俺たちは唖然とするも、チャチャはすぐに水魔法で消化活動に入った。
 俺もチャチャ程ではないが、水魔法を使い加勢した。



 消化する事数時間。

 森林にも火が燃え移っていたから、それを消化するのに時間がかかった。


「やっと終わりましたね」


 ほっと一息つく暇もなく、俺たちにはやらなきゃいけない事が出来た。
 火事のおかげで、残りの日数の食料が全部パーだ。
 いや、おそらく火事を起こした奴らはバカじゃない。
 消化後の黒焦げになったキャンプでもわかる。
 食料がきれいさっぱりなくなっている。

 俺たちは他のクラスとほとんど関わりがなかったはず。
 なのに、俺たちが目を離した隙にこんな事を出来るなんて。
 まるで誰かが俺たちを誘導したみたいに……。


 ――誰だ?!


 イシャールか?
 いや、イシャールはこの一週間ほぼ俺と一緒に行動を共にしていた。
 イシャールが誘導するなんて無理なはずだ。
 それに今回の事は、イシャールは最後までいやりたくないと言っていた。
 もし、俺たちを誘導するとしたら一目散に賛同するはずだよな。

 じゃあユミールか?
 いや、でもそんな。
 ユミールがそんな事するのか?
 なんの為に?
 俺たちは木材を集めていたから、キャンプから目を離している事が多かった。
 だから女子たちの事はわからない。
 でも……ユミールはそんな事するような……!

 あぁ! もうわかんね。
 誰がやったんだよ?!

 チャチャか?
 チャチャはちょっとおどおどしているし、挙動不審な所もあるけどいい子だ。
 それにユミールと一緒にいる事が多かったはず。

 って事は……ニカ?!
 確かにニカは一人で狩りに出かける事が多かったし、他のクラスとやり取りしていても不思議じゃない。
 何考えてるかわからない時あるし……。

 いや、でも決めつけるのはよくない。

 ただ単に他のクラスが単独で起こした事かもしれないし。

 俺はなんて酷い事を考えていたんだ。
 今まで一緒に頑張ってきた仲間を疑うなんて……。


 ダメだ。


「……ごめん」


 俺は咄嗟にニカに目線を落とすとそう口にしていた。
 急に謝罪されたニカは察したんだろう。


「……私を疑ってるの」
「……」


 俺は何も言えなかった。
 疑いたくはない。

 でも――


「ニカ、他のクラスとグルなの?」


 ふとチャチャがそう口にした。
 それはド直球すぎるだろ。


「……わかった。出てく」
「――え?」


 ニカは突然そんな事を言い出した。

 なんで出てくんだ?
 もし違うなら、そう言えばいいだけだ。
 否定もしないと言う事は。

 やっぱりニカが?


「みんな私が怪しいと思ってる。だから私がいない方がいい」


 そう言うと俺たちに背を向けて森林の向こうへ消えて行った。
 心なしか少し寂しそうな雰囲気を醸し出していた。


「ニカ――」


 俺のその言葉はニカに届く事はなく、ニカは戻ってくる事はなかった。
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