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第一章 第三幕 サバイバル

三十三話 競争

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「する事ないね……」


 俺たちは、魔法で何でもやっていた。
 しかしある問題が立ちはだかる。
 それはやる事がなくて暇な事。

 何日も先の食料まで確保していた俺たちにはもう仕事はなかった。

 いっその事残りの日数、遊んで過ごそうか。
 そんな俺の些細な一言だった。
 別に本気なわけじゃなかった。

 それなのに――


「それいいね」


 なんと、一番興味なさそうなニカが乗っかってきたのだ。
 そしてチャチャも。


「私も遊びたい」
「いいですね。ふふ」


 ユミールまでもが賛同し、イシャールはニカに強要される形で参加する事になった。


「森林を抜けて先に向こうの浜辺に着いた人の勝ち。最後の人は今日のご飯抜き――よういドン」


 ニカは淡々と喋ると、自分だけ先にスタートを切ってもの凄いスピードで走って行った。


「あっ……ニカずるい」
「ふふ。お先に失礼しますね」


 チャチャとユミールもそれに続いて森林を抜けて行った。
 そして――


「エデン……頑張れ。僕は先に行ってるよ」


 そう言うとイシャールまでもが、俺を置いて行ってしまった。
 しかもイシャールに関しては、時魔法で一瞬で。


「おい……それアリか?!」


 俺も急いでみんなの後を追って森林を抜けた。
 そう遠くはないが、走るとなると結構大変だ。

 森林を駆け抜けている最中、あるものを見た。
 なんだったんだろうか。


「――あれは?」


 一瞬俺の足を止めるも、俺はすかさず走り出した。
 ご飯抜きは嫌だからな。

 人のように見えたような気がしたが、この時はそんな事気にもしていなかった。

 そして向こう側の浜辺に着くと――
 既にみんなは着いていて、一番最後だったのは結局俺だった。


「はぁっ……はぁっ……みんな早いな」
「エデン最後だからご飯抜き」


 俺が息を切らしながらみんなの元に行くと、ニカは冷たくそう言い放った。
 話を聞くとイシャールは転移魔法で一番、ニカは持ち前の素早さで二番、チャチャとユミールは協力して一緒にゴールで三番。
 で、俺が五番だという。

 結局、俺だけ仲間外れ……トホホ。


「約束だからな、仕方ない」


 俺はガッカリしながらそう言うと、ニカが珍しく眉間にしわを寄せて口を開いた。


「あれ――見て」


 ニカが指を指す方を見ると、向こうの森林が燃えている。
 俺たちのキャンプの方だ。

 俺の頭には嫌な予感が過った。


「急ごう」
「みんな僕に触れて」


 俺が走って戻ろうとすると、イシャールは魔法陣の中に入り手を伸ばしている。
 これ、みんなも連れていけたのかよ!
 っていうツッコミは置いといて、俺たちはイシャールに触れると一瞬でキャンプに戻った。

 ――そして。


「……キャンプが燃えてる」
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