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二話 置き去りからの窮地
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「んじゃ時雄、よろしく」
「おいおい、今はコーメイな。ゲームの中では本名で呼ぶなよ」
「そうか。悪い」
そう、時雄……もといコーメイに俺は、戦闘の基礎を学ぼうとしていたのだ。
それにしてもコーメイって。策士にでもなった気かよ。
辺り一面深緑の大地、踏まれて薄くなった緑色の草木が風に揺れる。一歩一歩踏みしめる度、地面の草がダメージを受けしなびていく。
大抵の草は一定時間で回復するようだが、草の生命が削られていくのは少し悪い気になる。
そして晴天の青空の下、太陽に照らされ俺たちは魔物を待ち構えていた。
「お前は……フライだっけ?」
「あ、あぁ……」
とくに由来はないが俺の名前が飛鳥だからだ。飛ぶ鳥……ってことでフライだ。
コイツには単純だとか言われそうだが。
「ふん、単純だなお前は」
ほらきた。
というか、コイツにだけは言われたくないがな。
まぁいい。今は俺のほうが後輩だ。コイツに従ってやろうじゃないか。
「んで、どうすりゃいいんだ?」
俺は、こんなくだらない話をしている暇に早く教えてくれと言わんばかりに、奴を急かした。
「あーそうだったな……って……ッ?! キラたんだぁぁぁ!」
「……は? キラ……たん?」
コーメイの目線の先を見ると一人の女性が、内股で手を振りながら近寄ってくる。
なんだこの絵にかいたようなブリブリした女は……。
まさかコイツの? 俺はコーメイと女を交互に見て驚きを隠せなかった。
いやいや、まさかな。コイツはリアルでも女っけ一つないちゃらんぽらんだからな。コイツに限ってそんな……。
俺が唖然としていると、コーメイはにやけ顔で得意げに口を開いた。
「あーごめんごめん。このちょーかわいい子はキラたん。そして俺の嫁」
一瞬時が止まった……。
「コーたんの嫁でーっすぅ! よろしくお願いしまーっすぅ」
コーメイに嫁が出来るという事実を受け止めきれずにいると、話がどんどん進んでいき――
「あ、そうだ! 俺たちこれから行くとこあるからよ。わりぃなフライ」
そう言ってコーメイと嫁は、何かに包まれると俺の目の前から一瞬で消えて行った。
「うわっ! え? お、おい! どこ……行くんだよ」
その言葉もコーメイに届くことはなく、風に乗り遠くへいった。そして一人ポツンと草原に取り残される俺だった。
ガサガサ――
「え……何?」
風の音に紛れて草木が揺れる。
見渡すと嫌な気配がする……ような気がする。肌寒い風が俺の背中を押す。
一瞬だった。気が付くと俺の周りを複数のイノシシが囲んでいた。
「う、嘘だろ……逃げないと」
俺は我に返り、イノシシの間をかいくぐり一目散に振り返らずに走り続けた。
予想外にどこまでも追ってくるイノシシたち。俺はイノシシの声と音が聞こえなくなるまで逃げ続けよう、そう考えていた。
だが……甘かったようだ。
俺がそんなにうまそうに見えたのか、本当にどこまでも追ってきやがる……。このままでは俺の体力のほうが先に尽きてしまう。
「――あいてッ!」
そう思った矢先、疲れからか足がもつれて転んでしまった。
振り返るとイノシシは、一直線に俺目掛けて突進してくるではないか。
駄目だ……終わった。俺の短いゲーム人生に終わりを告げる……ところだった。
もう目の前までイノシシが迫って来ていたその時――
「――はぁぁぁ!」
シュパン――
目の前で何かが斬られるような音がした。
ゆっくりと目を開けるとそこには、綺麗なサラサラの金髪を風になびかせた、絵に描いたような美少女が、剣を持ちこちらを向いていた。
すぐそこには先ほどまで俺を追ってきていたイノシシの死体が転がっている。少しするとその死体も跡形もなく消え去った。
「大丈夫ですか?」
その可憐な仕草と声からは想像がつかないほどに手練れのようだ。
腰には剣を背中には盾を背負っている。白を基調とした鎧に身を包み、髪をかき上げる仕草は見ほれるほどに美しい。
ゲームにはあまり詳しくないが、これは騎士とかそういう類なのだろうか。マンガやアニメでは、多少見た事がある程度の知識だが。
「あ、ありがとう」
「いいえ」
何の躊躇もない笑顔を俺に向け、そのまま何かに身を包まれ目の前から消えて行ってしまった。
「あっ待って……」
あぁあ、せっかくだから友達になりたかったな。すごい美人だったし。あのコーメイにだけ嫁がいるなんて許せないし。
まぁ……またどこかで会えるかな。
俺はそんな淡い期待を胸に街へ戻った。
初心者中の初心者だったため、コーメイやさっきの人みたく飛ぶ魔法なんてわからない俺は、敵から逃げつつ街を探すのは一苦労だった。
《危機一髪を習得しました》
なんだこれ?
その詳細を確認すると――
危機一髪――習得条件 死ぬ寸前に他の女性プレイヤーに助けられる。効果 死ぬような攻撃を稀にHP1で踏みとどまる。
「……は? ――はぁぁぁ? 全っ然嬉しくないし!」
「おいおい、今はコーメイな。ゲームの中では本名で呼ぶなよ」
「そうか。悪い」
そう、時雄……もといコーメイに俺は、戦闘の基礎を学ぼうとしていたのだ。
それにしてもコーメイって。策士にでもなった気かよ。
辺り一面深緑の大地、踏まれて薄くなった緑色の草木が風に揺れる。一歩一歩踏みしめる度、地面の草がダメージを受けしなびていく。
大抵の草は一定時間で回復するようだが、草の生命が削られていくのは少し悪い気になる。
そして晴天の青空の下、太陽に照らされ俺たちは魔物を待ち構えていた。
「お前は……フライだっけ?」
「あ、あぁ……」
とくに由来はないが俺の名前が飛鳥だからだ。飛ぶ鳥……ってことでフライだ。
コイツには単純だとか言われそうだが。
「ふん、単純だなお前は」
ほらきた。
というか、コイツにだけは言われたくないがな。
まぁいい。今は俺のほうが後輩だ。コイツに従ってやろうじゃないか。
「んで、どうすりゃいいんだ?」
俺は、こんなくだらない話をしている暇に早く教えてくれと言わんばかりに、奴を急かした。
「あーそうだったな……って……ッ?! キラたんだぁぁぁ!」
「……は? キラ……たん?」
コーメイの目線の先を見ると一人の女性が、内股で手を振りながら近寄ってくる。
なんだこの絵にかいたようなブリブリした女は……。
まさかコイツの? 俺はコーメイと女を交互に見て驚きを隠せなかった。
いやいや、まさかな。コイツはリアルでも女っけ一つないちゃらんぽらんだからな。コイツに限ってそんな……。
俺が唖然としていると、コーメイはにやけ顔で得意げに口を開いた。
「あーごめんごめん。このちょーかわいい子はキラたん。そして俺の嫁」
一瞬時が止まった……。
「コーたんの嫁でーっすぅ! よろしくお願いしまーっすぅ」
コーメイに嫁が出来るという事実を受け止めきれずにいると、話がどんどん進んでいき――
「あ、そうだ! 俺たちこれから行くとこあるからよ。わりぃなフライ」
そう言ってコーメイと嫁は、何かに包まれると俺の目の前から一瞬で消えて行った。
「うわっ! え? お、おい! どこ……行くんだよ」
その言葉もコーメイに届くことはなく、風に乗り遠くへいった。そして一人ポツンと草原に取り残される俺だった。
ガサガサ――
「え……何?」
風の音に紛れて草木が揺れる。
見渡すと嫌な気配がする……ような気がする。肌寒い風が俺の背中を押す。
一瞬だった。気が付くと俺の周りを複数のイノシシが囲んでいた。
「う、嘘だろ……逃げないと」
俺は我に返り、イノシシの間をかいくぐり一目散に振り返らずに走り続けた。
予想外にどこまでも追ってくるイノシシたち。俺はイノシシの声と音が聞こえなくなるまで逃げ続けよう、そう考えていた。
だが……甘かったようだ。
俺がそんなにうまそうに見えたのか、本当にどこまでも追ってきやがる……。このままでは俺の体力のほうが先に尽きてしまう。
「――あいてッ!」
そう思った矢先、疲れからか足がもつれて転んでしまった。
振り返るとイノシシは、一直線に俺目掛けて突進してくるではないか。
駄目だ……終わった。俺の短いゲーム人生に終わりを告げる……ところだった。
もう目の前までイノシシが迫って来ていたその時――
「――はぁぁぁ!」
シュパン――
目の前で何かが斬られるような音がした。
ゆっくりと目を開けるとそこには、綺麗なサラサラの金髪を風になびかせた、絵に描いたような美少女が、剣を持ちこちらを向いていた。
すぐそこには先ほどまで俺を追ってきていたイノシシの死体が転がっている。少しするとその死体も跡形もなく消え去った。
「大丈夫ですか?」
その可憐な仕草と声からは想像がつかないほどに手練れのようだ。
腰には剣を背中には盾を背負っている。白を基調とした鎧に身を包み、髪をかき上げる仕草は見ほれるほどに美しい。
ゲームにはあまり詳しくないが、これは騎士とかそういう類なのだろうか。マンガやアニメでは、多少見た事がある程度の知識だが。
「あ、ありがとう」
「いいえ」
何の躊躇もない笑顔を俺に向け、そのまま何かに身を包まれ目の前から消えて行ってしまった。
「あっ待って……」
あぁあ、せっかくだから友達になりたかったな。すごい美人だったし。あのコーメイにだけ嫁がいるなんて許せないし。
まぁ……またどこかで会えるかな。
俺はそんな淡い期待を胸に街へ戻った。
初心者中の初心者だったため、コーメイやさっきの人みたく飛ぶ魔法なんてわからない俺は、敵から逃げつつ街を探すのは一苦労だった。
《危機一髪を習得しました》
なんだこれ?
その詳細を確認すると――
危機一髪――習得条件 死ぬ寸前に他の女性プレイヤーに助けられる。効果 死ぬような攻撃を稀にHP1で踏みとどまる。
「……は? ――はぁぁぁ? 全っ然嬉しくないし!」
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