VRMMOで素早さを極限まで伸ばしてみた~当たらなければどうってことはない精神でゲームライフを楽しみます~

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六話 イノシシ肉のキャベツ巻きとろ~り煮込み

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「――フライ?」


 声のする方を見上げると、二階でテーブルを囲んでいるメルティの姿があった。
 他にもパーティメンバーだろうか、小さな女の子と目付きの悪い男性が隣に座っていた。今度こそフレンドになろう。そう覚悟を決め俺は二階に上がりテーブルに近づいた。


「また……会ったな」
「フライは何していたの?」


 俺が近づくとそう言って再び席についた。そして俺に手で合図するように、空いている席に座ってと笑顔を見せた。
 俺は目付きの悪い男性の前の席に、目線を気にしながらゆっくりと座った。すると、男性は俺に手を出し低い声で口を開いた。


「――グレッツだ」


 そしてグレッツという男性は、俺が握手に応えると俺の手を必要以上に強く……"ギィィィ"という音がしそうな程強く……握ってきた。
 俺は睨まれているような気がして目線を下から動かすことは出来なかった。


「キャシーだよぉ」


 俺の横に座っている小さな女の子は、運ばれてきた料理を次々と口にしながらそう言った。口の周りを真っ赤にしながら笑顔を向けるキャシー。


「私のパーティーメンバーなんだ。よろしくね」


 メルティ―はニコッと笑いそう語りかけた。個性豊かなパーティーだな……そう思い、苦笑いする俺であった。

 そして――


「ねぇフライはカウンターで何してたのぉ?」


 キャシーは無邪気にそう問う。実際本当に興味があるのかは謎だ。キャシーは料理にしか興味がないように見える。
 まぁ……いいか。

 ホーンドラゴンのコアを換金しに来たと伝えると、メルティは驚きを隠せないで俺に詰め寄った。そしてキャシーは箸を止めグレッツは目を見開いた。


「あのドラゴンを一人で? すごいね」
「た、たまたまだよ……あはは」


 お世辞だとわかっていながらも俺は、褒められてまんざらでもない表情で目線をずらし、頬をポリポリと人差し指でかき照れて見せた。


「あのドラゴンを……か」


 グレッツは俺のほうを一瞬見ると再びそっぽ向き、テーブルに置いてあったジョッキを乱暴に手に取った。
 カタっと音をさせると、一気に中身を飲み干して再びテーブルに乱暴に置いた。



「二人とも、顔怖いよぉ? ねぇ、フライ! せっかくなんだしさ、何か食べなよぉ。キャシーがご馳走するからさぁ」
「いや、悪いよ……」


 俺は両手を前に出し全力で断った。この場を立ち去ろうと立ち上がると、キャシーは俺の腕を掴み再び席にドスンと座らせた。


「うわっ……」
「いいじゃん、いいじゃん。何食べる? キャシーのおすすめはねぇ……」


 キャシーは俺の返答を待たずに勝手に話を進めている。


「フライ……ごめんね」


 見かねたメルティが眉毛をハの時にさせ、申し訳なさそうに笑顔を向けた。俺は大丈夫と合図すると、キャシーは再び喋り始めた。


「イノシシ肉のキャベツ巻きとろ~り煮込みがおいしいよぉ」
「じゃ、じゃあ……それにしようかな」


 俺はキャシーの押しに負け、ご飯をご馳走してもらうことにした。
 そしてキャシーのおすすめとやらを注文した。



「おまちどうさまで~す」


 もうきたのか? 早すぎるだろ……。
 しかしそれは手抜きには見えず、むしろよだれが滴るほどに美味しそうでいい匂いの料理だった。

 しんなりしたキャベツに巻かれて中から出てきたのは、肉団子のような塊の肉だ。これがイノシシ肉なんだろうけど、ちょっと抵抗あったがこれがびっくりするほど美味い。
 しんなりしているが、形はきちんと保たれている。それの上からかけられたであろうトマト煮込みのスープが、またなんとも言えない。酸味とコクがあり、しょっぱすぎないからスープまで飲み干せそうだ。

 現代でいうと、ロールキャベツに近いものだろうか。
 まぁイノシシ肉というのは違うだろうが。

 しかしこんなにも美味しい料理があっていいのだろうか? しかもこの美味さで銅貨三枚だなんて、現実じゃ絶対に食べられないコストパフォーマンスだな。

 今はキャシーにご馳走になったけど、今度は自分でも来てみよう。色んなご飯が食べてみたくなったよ。


「キャシー、ご馳走様。すごく美味しかったよ」


 俺は素直な感想を言うと、キャシーは喜び目をキラキラさせながら訴えている。


「でしょでしょぉ? キャシーはねぇ、ここのイノシシ肉のキャベツ巻きとろ~り煮込みが一番好きなんだよぉ」


 キャシーの机の上をよく見ると、俺と同じものを食べていた。とても美味しそうに食べている。どうやら一番好きというのも本当らしい。


「では今度食べるときは、私のおすすめを食べてみてねフライ」
「それでは、その次は俺のおすすめを食べてくれ」
「う、うん……そうするよ」


 キャシーに続き、メルティとグレッツまでもがそう言ってきた。これは自分で食べる日は遠いな……と、ガクっと首を落とした。



 そして俺は満腹感と満足感に満たされ、背もたれに寄りかかるとキャシーが食べ終わったのか、唐突にこっちを向き口周りをトマトだらけにして口を開いた。


「ねぇねぇフライ、キャシーとフレンドになろうよぉ」


 その言葉にメルティも同意しニッコリと笑い俺を見つめた。
 そしてグレッツ含む三人は、メニューを開き登録する準備は万全だと言わんばかりに俺に注目した。俺は焦りながらもメニューを開き準備をした。


「よしっと、これで登録完了だねぇッ! 何かあったらいつでも呼び出してねん。フレンドなんだから」


 キャシーが無邪気な笑顔でそう言うと、それに続きメルティとグレッツも口を開いた。


「私もいつでも連絡を待っているわ」
「メルが行くなら俺も行く。いつでも歓迎だ」


 そう言ってグレッツは、再び手を差し出すとよろしくと引きつった笑顔で俺に握手を求めてきた。俺は苦笑いでグレッツの手を軽く握ると、グレッツはさっきよりも強く、力いっぱい俺の手を握り返した。メルティを横目で見ながら……。
 もしかしてメルティとグレッツはそういう関係なんだろうか? だとしたらメルティは諦めないとな……。
 俺はまるで、メルティは俺のもんだから手を出すなって言われているような気がしてならなかった。


「よろしく……あはは」


 俺は当たり障りない感じで軽く流すと、グレッツは手をゆっくりと離し再び席についた。

 それにしてもグレッツ、威嚇の仕方が怖いよ……。初めて出来たフレンドなのに、こんな個性的な人たちなんて……トホホ。



 俺はしばらくキャシーの話に付き合う事になり、その後ゆっくりと席を立ち三人に背を向け宿酒場を後にした。
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