コインランドリー

エレベーター

エレベーター

ビルの屋上に設置された展望台は、都会の夜景を眺める特等席だった。だが、そこに行くには不思議なエレベーターを使わなければならない。そのエレベーターは、ただの移動手段ではなかった。

青年は、仕事帰りにそのエレベーターに乗り込んだ。扉が閉まり、階数を選ぶパネルを見上げると、数字の代わりに奇妙な言葉が並んでいた。
「過去」
「現在」
「未来」

彼は半信半疑で「未来」のボタンを押した。エレベーターが音もなく動き出し、数秒後に扉が開いた。そこは見慣れたオフィスの光景だったが、デスクには自分の名刺があり、彼自身が部長として働いていた。周囲の人々は彼を尊敬の眼差しで見ている。

しかし、ふと時計を見ると、時間が異常に速く進んでいることに気付いた。仕事に追われる日々、家族との疎遠、孤独な老後――未来の映像が次々と現れ、悠真は恐怖を感じた。「これが自分の未来なのか？」と疑問を抱きながら、慌ててエレベーターに戻った。

次に彼は「過去」のボタンを押した。扉が開くと、小学校の教室が広がっていた。そこでは、子供時代の自分が笑顔で友達と遊んでいる光景があった。忘れていた大切な記憶に触れると、悠真の目に涙が浮かぶ。しかし、そこにずっと留まることはできないと感じ、再びエレベーターに乗り込む。

最後に彼は「現在」のボタンを押した。扉が開くと、普段の仕事帰りの自分がいた。何の変哲もない光景だったが、これまでの体験を通じて悠真は何かを悟った。「今」の積み重ねが未来を作り、「過去」はそれを支える土台だと。

エレベーターを降りた悠真は深呼吸をし、夜空を見上げた。「今をもっと大切に生きよう」――そう心に誓い、彼は家路に着いた。