コインランドリー

三重蓮太

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図書館

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駅から少し離れた場所に、いつの間にか見知らぬ建物が現れていた。薄暗い街灯の下で見るそれは、古びた図書館だった。入り口の看板には、金色の文字で「深夜図書館」とだけ書かれている。

仕事帰りのOL、三谷紗月は、その異様な雰囲気に惹かれて扉を押した。中に入ると、外観とは異なり、豪華で荘厳な空間が広がっていた。無数の本棚が天井までそびえ立ち、その隙間から柔らかなランプの光が漏れている。

カウンターに座る男性司書が紗月に声をかけた。「いらっしゃいませ。この図書館では、人生に迷う方々に特別な本をご提供しています。」

紗月が半信半疑で「どんな本ですか?」と尋ねると、司書は静かに手を差し出した。「あなたの記憶を一部閲覧できる本です。ただし、読めるのは一冊だけ。選び方が重要です。」

案内された棚には、分厚い本が並んでいた。それぞれの背表紙には、抽象的なタイトルが書かれている。「選ばなかった道」「隠された真実」「忘れた感情」「未来のかけら」。

紗月は迷いに迷った末、「選ばなかった道」という本を手に取った。表紙を開くと、中には高校時代の恋人、健太の記憶が鮮やかに蘇った。

二人で行った夏祭りの帰り道、紗月は健太の告白を「友達のままでいたい」と断った。その瞬間が何度も映し出され、ページをめくるたびに異なる未来が現れる。告白を受け入れていれば、二人は大学に進学しても連絡を取り合い、最終的には結婚していた未来の姿もあった。

目の前の映像に紗月は胸を締めつけられた。今はもう別の人生を歩む健太の姿を思い出し、涙がこぼれた。だが同時に、彼女は自分が選んだ道を後悔していないとも感じた。「今の私も、これが私自身の選択だったからこそ。」

本を閉じると、司書が柔らかく微笑んでいた。「お分かりいただけましたか?選ばなかった道にも価値があります。後悔は未来の糧になるのです。」

紗月は深く一礼し、図書館を後にした。気づくと、図書館は跡形もなく消えていた。けれども、心に残る暖かな感覚とともに、彼女は明日を前向きに迎える準備ができていた。
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