ジャンヌ・ダルクがいなくなった後

碧流

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もう後には引けない

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目を瞑ったマリーに、ヨランドは小さくため息をついた。

「ついてくるがよい。」

マリーは驚いた。
しかし、顔には出さず、母の後について行った。
無言で廊下を歩く。
かなりの距離を歩き、庭に面した壁についた。

母が触れるとドアが現れる。
「入れ。」

母に続いて入った。

そこは城内を見渡せる隠し部屋で、マリーは初めて入る部屋だった。

「見よ。」

母が扇で指し示す方を見ると、ある一定の距離を保ちつつも向かい合って立つシャルルとあの少女がいた。
離れても分かるほど少女は、真っ直ぐにシャルルを見つめている。

「……っ」
マリーは小さく息を呑んだ。

(この間より、距離が近づいている…)

「あれか?」
母が短く問う。

母の目はごまかせない。

こくん

マリーは頷いた。
この肯定が何に繋がるのか、マリーにはわからない。

でも、これだけははっきりとわかる。

…母は必ず動く。
マリーのためではなく、フランスのために。

母はそれ以上何も聞かなかった。

しばらくして、母は黙って部屋を出た。
マリーも後に続こうとして、もう一度振り向いた。

そこには、もう誰もいなかった。

(…どこに…?)

嫌な予感がする。
近くには廃屋がある。

考えすぎたかもしれない。

母が知ったとなれぱ、母の影も動いたはずだ。

知りたくないことを知るかもしれない。

マリーはもう後には引けなかった。
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