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18、夏祭り
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「慎二~!えへへ、行こっか」
「うん、行こう」
(今日はいないんだ…やった)
2人で屋台を回って、食べ歩きをする。
「はい、あーん」
「あ」
たこ焼きを食べさせてあげる。恋人らしいことができて俺は大満足!
あとは花火を見ながらキスなんてできたり…はしないね。
「慎二!あれやろ!」
「射的?別にいいけど…」
俺は4回中4回とも外してしまった。だが、慎二は全部当てている。
「これ」
「え?」
慎二は俺が狙っていたクマのぬいぐるみを渡してくれる。
「嬉しい!ありがとう!取ってくれたの?」
「たまたま取れただけだし…」
「えへへ、慎二大好き!」
腕にぎゅっと抱きついて、笑うと慎二も笑ってくれた。
「はいはい」
「慎二は俺のこと好き?」
「うーん…まぁね」
「俺は1番だもんね!」
そういうと、慎二は恥ずかしそうにする。それで、俺は腕から離された。
「このぬいぐるみ、慎二に似てる」
「は?こんなブサイクに?」
「可愛いよ!なんか…雰囲気?」
「貶されてるようにしか聞こえない」
俺は慎二の頭を撫でてあげる。あの時から慎二はたまに俺に甘えるようになった。
「撫でないで…」
「いいじゃん、髪の毛フワフワで気持ちいい」
「…」
花火が始まるまで俺たちは、人混みの少ない茂みのところに来ていた。
「今日、てっきり高橋さん達が来ると思ってた」
「…なんで?」
「いつもいるし、今日は絶好のチャンスじゃん」
「チャンス?」
「慎二を落とすチャンスだよ。着物とかって特別な日にしか着ないし」
俺も今日は着物で着たけど何も言われなかった。
「別に俺のこと好きじゃないだろ、告白されてないし」
「告白しなくても分かるでしょ?どう考えても慎二のこと好きだよ…」
「ないよ、そんなの」
「あるの!もう…鈍感」
2人が黙ると静かになった。少しだけ、人の声がして、虫の声が聞こえる。
「あれ?慎二くん?!」
「あ、高橋…」
「やった!会えた~!誘おうと思ってたんだ!皆んな~!慎二くん発見したよ~!」
「え?慎二?」
「あ、本当じゃん」
慎二は一瞬戸惑ったような表情をして、すぐに皆んなのところに向かった。
「皆んな着物じゃん」
「そう!似合ってる?」
「うん、皆んな似合ってるよ」
(俺には言わなかったくせに…やっぱり女子の前だとそういうのに気づくよね)
「慎二!あっちにね、かき氷屋さんあったの!行こう!」
「あっち……わたあめあった」
「私と一緒にたこ焼き食べましょう!」
「えー!射的しに行こうよ~」
(フッフッフー!もう全部回ったのだよ!残念だったな!)
心の中で悪役のような笑みを浮かべる。あと少しで花火が始まる。
「慎二、花火始まっちゃうよ?」
「皆んなと屋台まわってくるから待っててくれる?」
「だ、ダメ!」
自分でも思ったより大きい声が出た。
「今日はダメ…ちょっとでいいから、花火一緒に見ようよ」
「でも、さっきまで一緒にいたじゃん。だから、行ってくる」
「え?あ!」
慎二は走って高橋さん達のところに向かった。
「……」
ヒューと花火が上がった。仕方なく1人で見ることにした俺はベンチから空を見上げていた。
「綺麗…」
(この花火、慎二と見たかったな)
俺はしばらく、花火を見ていた。1人で寂しい時は妄想しよう。慎二と一緒に花火を見たバージョンでいこう。
『うわぁ、綺麗だね』
『そうだね……ねぇ、雪』
『何?』
慎二の方を向くと、俺はキスをされた。軽いキスなのに俺は無性にドキドキしていた。
『慎二…好き』
『俺も、愛してる』
『慎二』
『雪…』
「うーん、絶対ありえない」
妄想しても虚しいだけだった。
「慎二…花火終わっちゃうよ」
(最後の一発だけでもいいから、一緒に見たい)
俺はなんとか来てほしくて電話をかけてみた。
『もしもし?』
「慎二!あのさ、今から戻って来れない?」
『なんで?』
「その…花火、一緒に見たいから」
『今、皆んなと屋台まわってるから終わったら行くよ』
「でも、もう終わっちゃうよ!」
『なんだよ?別に来年も見にくればいいだろ』
呆れたように言う慎二に俺は悲しくなった。
「分かった、もういいよ」
『…なんで怒ってんの?意味わかんない』
そう言って電話が切れた。電話越しに聞こえる、楽しそうな女の子の声。
2人でいたいのに分かってもくれない慎二。
「怒ってないし…」
最後の一発。空に上がった花はすぐに消えた。その儚さに俺は涙が溢れる。
「終わっちゃった…」
俺は余韻に浸りながら、帰り道を歩いた。慎二を待っていても女子がいるだろうし、俺は1人で帰った。
「…ただいま」
「おかえり、花火綺麗だったね」
「うん」
ベッドに飛び込んで、俺はひっそりと泣いたのだった。
「うん、行こう」
(今日はいないんだ…やった)
2人で屋台を回って、食べ歩きをする。
「はい、あーん」
「あ」
たこ焼きを食べさせてあげる。恋人らしいことができて俺は大満足!
あとは花火を見ながらキスなんてできたり…はしないね。
「慎二!あれやろ!」
「射的?別にいいけど…」
俺は4回中4回とも外してしまった。だが、慎二は全部当てている。
「これ」
「え?」
慎二は俺が狙っていたクマのぬいぐるみを渡してくれる。
「嬉しい!ありがとう!取ってくれたの?」
「たまたま取れただけだし…」
「えへへ、慎二大好き!」
腕にぎゅっと抱きついて、笑うと慎二も笑ってくれた。
「はいはい」
「慎二は俺のこと好き?」
「うーん…まぁね」
「俺は1番だもんね!」
そういうと、慎二は恥ずかしそうにする。それで、俺は腕から離された。
「このぬいぐるみ、慎二に似てる」
「は?こんなブサイクに?」
「可愛いよ!なんか…雰囲気?」
「貶されてるようにしか聞こえない」
俺は慎二の頭を撫でてあげる。あの時から慎二はたまに俺に甘えるようになった。
「撫でないで…」
「いいじゃん、髪の毛フワフワで気持ちいい」
「…」
花火が始まるまで俺たちは、人混みの少ない茂みのところに来ていた。
「今日、てっきり高橋さん達が来ると思ってた」
「…なんで?」
「いつもいるし、今日は絶好のチャンスじゃん」
「チャンス?」
「慎二を落とすチャンスだよ。着物とかって特別な日にしか着ないし」
俺も今日は着物で着たけど何も言われなかった。
「別に俺のこと好きじゃないだろ、告白されてないし」
「告白しなくても分かるでしょ?どう考えても慎二のこと好きだよ…」
「ないよ、そんなの」
「あるの!もう…鈍感」
2人が黙ると静かになった。少しだけ、人の声がして、虫の声が聞こえる。
「あれ?慎二くん?!」
「あ、高橋…」
「やった!会えた~!誘おうと思ってたんだ!皆んな~!慎二くん発見したよ~!」
「え?慎二?」
「あ、本当じゃん」
慎二は一瞬戸惑ったような表情をして、すぐに皆んなのところに向かった。
「皆んな着物じゃん」
「そう!似合ってる?」
「うん、皆んな似合ってるよ」
(俺には言わなかったくせに…やっぱり女子の前だとそういうのに気づくよね)
「慎二!あっちにね、かき氷屋さんあったの!行こう!」
「あっち……わたあめあった」
「私と一緒にたこ焼き食べましょう!」
「えー!射的しに行こうよ~」
(フッフッフー!もう全部回ったのだよ!残念だったな!)
心の中で悪役のような笑みを浮かべる。あと少しで花火が始まる。
「慎二、花火始まっちゃうよ?」
「皆んなと屋台まわってくるから待っててくれる?」
「だ、ダメ!」
自分でも思ったより大きい声が出た。
「今日はダメ…ちょっとでいいから、花火一緒に見ようよ」
「でも、さっきまで一緒にいたじゃん。だから、行ってくる」
「え?あ!」
慎二は走って高橋さん達のところに向かった。
「……」
ヒューと花火が上がった。仕方なく1人で見ることにした俺はベンチから空を見上げていた。
「綺麗…」
(この花火、慎二と見たかったな)
俺はしばらく、花火を見ていた。1人で寂しい時は妄想しよう。慎二と一緒に花火を見たバージョンでいこう。
『うわぁ、綺麗だね』
『そうだね……ねぇ、雪』
『何?』
慎二の方を向くと、俺はキスをされた。軽いキスなのに俺は無性にドキドキしていた。
『慎二…好き』
『俺も、愛してる』
『慎二』
『雪…』
「うーん、絶対ありえない」
妄想しても虚しいだけだった。
「慎二…花火終わっちゃうよ」
(最後の一発だけでもいいから、一緒に見たい)
俺はなんとか来てほしくて電話をかけてみた。
『もしもし?』
「慎二!あのさ、今から戻って来れない?」
『なんで?』
「その…花火、一緒に見たいから」
『今、皆んなと屋台まわってるから終わったら行くよ』
「でも、もう終わっちゃうよ!」
『なんだよ?別に来年も見にくればいいだろ』
呆れたように言う慎二に俺は悲しくなった。
「分かった、もういいよ」
『…なんで怒ってんの?意味わかんない』
そう言って電話が切れた。電話越しに聞こえる、楽しそうな女の子の声。
2人でいたいのに分かってもくれない慎二。
「怒ってないし…」
最後の一発。空に上がった花はすぐに消えた。その儚さに俺は涙が溢れる。
「終わっちゃった…」
俺は余韻に浸りながら、帰り道を歩いた。慎二を待っていても女子がいるだろうし、俺は1人で帰った。
「…ただいま」
「おかえり、花火綺麗だったね」
「うん」
ベッドに飛び込んで、俺はひっそりと泣いたのだった。
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