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一章
2話 村長〜village mayor〜
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一体全体あの力はなんなのか。突如として聞こえた謎の男の声。それが聞こえた後に変化した黒色の宝石。拳銃へと形を変え、なぜ引き金を引いた。
そんな疑問がシーファ・トムフンの中で何千個の渦となる。蟻地獄のように一度かかったら最後。この疑問の反芻からは誰も逃れられない。
黒色の弾丸を放ったあの後、シーファは気を失った。それを救ったのは街を全壊された老ぼれ村長。立つのが精一杯な弱々しい体であるはずなのに、シーファを引きながら洞窟へ身を隠した。そこで目を覚ました彼は村長から事後のことを聞く。
まずは天使の容態。幸か不幸か、流石は世界最強戦力の天使の休息、悪い位置に当たっているはずなのに死んではいなかったそうだ。
続いて天使の仇として他のROTAがシーファを殺しにくるのではないかという疑問だが、村長が無事にシーファを洞窟まで引っ張るだけの時間があったことから、その報復の線は薄いと判断した。
そして最大の謎である、拳銃。天使を倒すほどまでの威力を持つ拳銃だがその姿は再び黒色の宝石に戻っていた。黒コートに黒Tシャツに変わっていた服装も元通りの黒カーディガン白半袖に戻っていた。まるであの時のことが幻であるかのように、あの時の事件を示す物的証拠は無くなっていた。
「…………なぁ。俺は…………人を撃ったのか…………」
「…………そうじゃ。お主は銃を放った」
「…………そうか。俺はやってしまったんだな…………。悪党である怪盗中以外は絶対犯罪をしないと決めたのに……………………。よりによって人を撃つなんて」
憔悴し切った顔色でシーファ・トムフンは弱々しく言葉を吐き出す。
「これじゃ、これじゃあ。アイツらと何も変わらねぇ。何が《神》をブン殴るだよ。殴られるべき人間は俺じゃねぇか…………」
自分の親を殺し、村長の村を、大きな罪を犯していないあの村を一瞬で消し炭にした《神》やROTAと何も変わらない。拳銃で人を撃つとはそういうことなのだ。
怪盗時に警察官を殴るとは意味が重さが全然違う。
黒色のカーディガンに身を包み、黒色の宝石を首から胸にかけて吊り下げる《怪盗》シーファ・トムフンに村長は声をかける。
「…………じゃが。お主はワシを救ってくれた」
「………………………………な」
「お主があの拳銃を撃った時にはそんなことを考えていなかったかもしれんが、ゴホゴホ。結果的にワシは救われて今生きておる。それが何と素晴らしいことか」
「何を言って…………」
「村は全壊。村人たちもワシ以外全員生き絶えた。ゴボッ…………。じゃが、ワシがまだ生きておる。ワシ1人でも生きておれば、村の復興ができる。村人は死んだが、村さえ再建できればまた人が集まる。『村』の意思は存続するのじゃ。それもこれも、お主がワシを救ってくれたからこそある唯一の望みじゃ!!」
弱々しいジイさんのはずなのに。その胸に燃やす闘志がシーファを飲み込む。
だが。
「そ、それでも!! どんなに優しい言葉をかけてくれても!! 俺は、俺は、人を撃った。その事実だけは変わらねぇ…………。俺は! 裁かれなけきゃいけねぇんだ!!!」
「たわけ!!!!」
「ッッ!!」
「ゴボッ。お主が裁かれても何も事態は進展などせんわ! 奴らの気に喰わぬモノは全て破壊するという真意が今回判明したじゃろ! そしてそんな奴らに小さきながらも一矢報いることができたのは、他でもないお主じゃ!! ゴボゴボ」
「何を…………」
「犯罪が嫌いに育った?! それはいい事じゃ! なら考え方を変えればいい!! お主さっき言ったじゃろ? 悪党である怪盗中は多少の犯罪はしてしまうと!! それならば《神》への反逆を悪党としてやってくれんか?!! 悪党としてなら《神》でも天使でも撃てるはずじゃ!!」
最後に大きな咳をあげ、血反吐すら石の地面に流す村長の言葉をシーファは噛み締める。しかしそれでも。
「そ、そんなのできるわけねぇだろ!! なんだその屁理屈は!! アホみてぇて屁理屈で俺の信念を曲げろと?!!!」
「屁理屈でも何でもいいじゃろ!! 信念? 犯罪を否定することよりも大事な…………お主の本当の望みはなんじゃ!!」
「ッッッッ???!!!!」
人を殺せば悪だが、正義の名の下ならばそれは全て善となる。
「立つんじゃ青年!!! この世を支配する神から、真の自由と平和を盗み取れ!!! 怪盗!!!!!」
雄叫びを挙げシーファは立ち上がる。体中に流れる灼熱の血液が循環の速度を上げる。枯れていたはずの花に再び鮮やかな色が燈されるように、彼の心の花に色が燈される。魂が叫び声を上げる。
黒色宝石が真っ黒な光を撃ち放つ。絶望の黒色ではない。この色は何者にも打ち負かされない意思の強さ。
黒色のカーディガンが靡く。白色半袖が黒光に染まる。
懐から出したモノを虚空へと投げる。《ジョブカード》。全ての始まり。
《神》によって与えられた傀儡の具現化。
その忌まわしき象徴を、今。
撃ッッッッッッ!!!!!!!!!!!
「今、俺は明確に《神》に叛逆した。これで俺は側から見れば完全な悪党だ」
それでも構わない。
「他からどんなふうに思われても、たとえ罪になることをしても」
これは誓いだ。
「俺は必ず《神》をブン殴る」
そして。
「奴から自由と平和を盗ってやる」
だって。
「俺は…………《怪盗》だから」
撃たれた《ジョブカード》は真っ二つに破壊された。
前に進め。
周囲に呑まれるな。
復讐、仇。
どんな理由から始まってもいい。
本当の自由と平和を盗みだぜ。
お前らならできる。
だってお前は。
1番自由な職業《怪盗》だから。
そんな疑問がシーファ・トムフンの中で何千個の渦となる。蟻地獄のように一度かかったら最後。この疑問の反芻からは誰も逃れられない。
黒色の弾丸を放ったあの後、シーファは気を失った。それを救ったのは街を全壊された老ぼれ村長。立つのが精一杯な弱々しい体であるはずなのに、シーファを引きながら洞窟へ身を隠した。そこで目を覚ました彼は村長から事後のことを聞く。
まずは天使の容態。幸か不幸か、流石は世界最強戦力の天使の休息、悪い位置に当たっているはずなのに死んではいなかったそうだ。
続いて天使の仇として他のROTAがシーファを殺しにくるのではないかという疑問だが、村長が無事にシーファを洞窟まで引っ張るだけの時間があったことから、その報復の線は薄いと判断した。
そして最大の謎である、拳銃。天使を倒すほどまでの威力を持つ拳銃だがその姿は再び黒色の宝石に戻っていた。黒コートに黒Tシャツに変わっていた服装も元通りの黒カーディガン白半袖に戻っていた。まるであの時のことが幻であるかのように、あの時の事件を示す物的証拠は無くなっていた。
「…………なぁ。俺は…………人を撃ったのか…………」
「…………そうじゃ。お主は銃を放った」
「…………そうか。俺はやってしまったんだな…………。悪党である怪盗中以外は絶対犯罪をしないと決めたのに……………………。よりによって人を撃つなんて」
憔悴し切った顔色でシーファ・トムフンは弱々しく言葉を吐き出す。
「これじゃ、これじゃあ。アイツらと何も変わらねぇ。何が《神》をブン殴るだよ。殴られるべき人間は俺じゃねぇか…………」
自分の親を殺し、村長の村を、大きな罪を犯していないあの村を一瞬で消し炭にした《神》やROTAと何も変わらない。拳銃で人を撃つとはそういうことなのだ。
怪盗時に警察官を殴るとは意味が重さが全然違う。
黒色のカーディガンに身を包み、黒色の宝石を首から胸にかけて吊り下げる《怪盗》シーファ・トムフンに村長は声をかける。
「…………じゃが。お主はワシを救ってくれた」
「………………………………な」
「お主があの拳銃を撃った時にはそんなことを考えていなかったかもしれんが、ゴホゴホ。結果的にワシは救われて今生きておる。それが何と素晴らしいことか」
「何を言って…………」
「村は全壊。村人たちもワシ以外全員生き絶えた。ゴボッ…………。じゃが、ワシがまだ生きておる。ワシ1人でも生きておれば、村の復興ができる。村人は死んだが、村さえ再建できればまた人が集まる。『村』の意思は存続するのじゃ。それもこれも、お主がワシを救ってくれたからこそある唯一の望みじゃ!!」
弱々しいジイさんのはずなのに。その胸に燃やす闘志がシーファを飲み込む。
だが。
「そ、それでも!! どんなに優しい言葉をかけてくれても!! 俺は、俺は、人を撃った。その事実だけは変わらねぇ…………。俺は! 裁かれなけきゃいけねぇんだ!!!」
「たわけ!!!!」
「ッッ!!」
「ゴボッ。お主が裁かれても何も事態は進展などせんわ! 奴らの気に喰わぬモノは全て破壊するという真意が今回判明したじゃろ! そしてそんな奴らに小さきながらも一矢報いることができたのは、他でもないお主じゃ!! ゴボゴボ」
「何を…………」
「犯罪が嫌いに育った?! それはいい事じゃ! なら考え方を変えればいい!! お主さっき言ったじゃろ? 悪党である怪盗中は多少の犯罪はしてしまうと!! それならば《神》への反逆を悪党としてやってくれんか?!! 悪党としてなら《神》でも天使でも撃てるはずじゃ!!」
最後に大きな咳をあげ、血反吐すら石の地面に流す村長の言葉をシーファは噛み締める。しかしそれでも。
「そ、そんなのできるわけねぇだろ!! なんだその屁理屈は!! アホみてぇて屁理屈で俺の信念を曲げろと?!!!」
「屁理屈でも何でもいいじゃろ!! 信念? 犯罪を否定することよりも大事な…………お主の本当の望みはなんじゃ!!」
「ッッッッ???!!!!」
人を殺せば悪だが、正義の名の下ならばそれは全て善となる。
「立つんじゃ青年!!! この世を支配する神から、真の自由と平和を盗み取れ!!! 怪盗!!!!!」
雄叫びを挙げシーファは立ち上がる。体中に流れる灼熱の血液が循環の速度を上げる。枯れていたはずの花に再び鮮やかな色が燈されるように、彼の心の花に色が燈される。魂が叫び声を上げる。
黒色宝石が真っ黒な光を撃ち放つ。絶望の黒色ではない。この色は何者にも打ち負かされない意思の強さ。
黒色のカーディガンが靡く。白色半袖が黒光に染まる。
懐から出したモノを虚空へと投げる。《ジョブカード》。全ての始まり。
《神》によって与えられた傀儡の具現化。
その忌まわしき象徴を、今。
撃ッッッッッッ!!!!!!!!!!!
「今、俺は明確に《神》に叛逆した。これで俺は側から見れば完全な悪党だ」
それでも構わない。
「他からどんなふうに思われても、たとえ罪になることをしても」
これは誓いだ。
「俺は必ず《神》をブン殴る」
そして。
「奴から自由と平和を盗ってやる」
だって。
「俺は…………《怪盗》だから」
撃たれた《ジョブカード》は真っ二つに破壊された。
前に進め。
周囲に呑まれるな。
復讐、仇。
どんな理由から始まってもいい。
本当の自由と平和を盗みだぜ。
お前らならできる。
だってお前は。
1番自由な職業《怪盗》だから。
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