46 / 92
Echo41:祈りと服従
しおりを挟む
いつの間にか、陽はすっかり落ちていた。
空には色を失くした雲がかかり、風も止んで、庭はしんと静まり返っていた。
アリセルは、庭先の片隅に咲くゲンチアナを、ただ呆然と見つめていた。
青紫の花は、夕闇の中でもなお、その色をかすかに残して揺れている。
いつからここに立っていたのか分からない。気づけば、家に帰ってきていた。
帰ってきて、思考を止めたまま、立ち尽くしていた。
デイジーの家を出てから、何ひとつ考えることができなかった。
彼女の言葉も、視線も、焼けついたように胸の奥でただ疼いているのに、どこにもそれを処理する言葉が浮かばない。
「アリセル」
突然、ジョゼフの声が鼓膜を震わせた。
だがアリセルは、何も答えられず、ただ、ゲンチアナの花から視線を戻せずにいた。
家の中に入り、ソファに腰を下ろすと、ミーシャがそっとカップを手渡してくれた。
湯気を立てる温かなミルクには、微かに香辛料の香りが漂っている。
肩からは、柔らかなケープが掛けられた。ふんわりと体を包むその重みが、徐々に現実へと引き戻していく。
「何があった……?」
ジョゼフが問いかける。その声は穏やかで、重みのない優しさがあった。
アリセルは視線をカップに落とし、ぽつりと声をこぼした。
「……聞いてしまったの。……婚約のこと……」
言いながら、胸の奥がざわりと波立つ。自分が動揺している理由すら、まだうまく整理できない。
「……ルネ様と、私の……話を……」
すると隣から、そっと手が伸びてきた。
ミーシャが、アリセルの手元のカップをやさしく引き取り、卓の上に置く。
そして、アリセルの肩に腕をまわし、引き寄せた。
「本当は、まだ話すつもりはなかったの。でも……あなたが聞いてしまったのなら、もう隠せないわね」
ミーシャの声には、どこか迷いがあった。だがそれ以上に、静かな決意が滲んでいた。
「私たちは、あなたに……誰かと一緒に歩んでいく未来を、考え始めていたの。その人が、きっとあなたを大切にしてくれるだろうって、そう思える相手だったから……」
アリセルは目を伏せたまま、何も言わなかった。
ただ、心のどこかが遠く、ぼんやりとしたままだった。
「無理に納得してほしいわけじゃないの。すぐに答えを出してほしいとも思っていないわ。でも、親として……あなたの幸せを、きちんと形にしてあげたいと思ったの。今までも、これからも」
向かいにいたジョゼフが、少しだけ身を乗り出すようにして口を開いた。
「分かりにくい形で知ることになってしまって、すまなかった。……でも、これは急に決めたことではないんだ。ゆっくり、少しずつ話していくつもりだった。……お前の気持ちを置き去りにするつもりはないよ」
しばらく、沈黙が部屋を満たしていた。
アリセルは、膝の上で手を組んだまま、うつむいていた。
言葉にするまでに、心の奥を何度もなぞらなければならなかった。ようやく、小さな声が落ちる。
「……分かってはいたの。いつか、お父さまとお母さまが決めた人と結ばれるんだって……そうなるものだって」
それは昔から教えられてきたことだったし、特別な反発があったわけではない。
それが当然だと、どこかで思い込んできたのだ。
「でも……どうして、ルネ様だったの?」
その問いに、しばしの沈黙が落ちた。
ジョゼフとミーシャが目を交わす気配が、室内の空気をほんのわずかに揺らした。
先に口を開いたのはミーシャだった。
言葉を選ぶように、ゆっくりとした調子で語り出す。
「……あの方は、とても素直で、まっすぐな人よ。心の底に澱がなくて、あなたのような子には、きっと合っていると思ったの」
アリセルは返事をしなかった。
視線は膝の上に落ちたまま、ただその言葉を聞いていた。
続けて、ジョゼフが低く、落ち着いた声で補う。
「誠実で、優しい。何より、お前のことを心から信じてくれている。……それは、誰にでも持てる感情じゃない。お前自身、あの方と過ごす時間の中で、それを感じてきたんじゃないか?」
アリセルはそっと瞼を伏せた。
父の言うことは、間違っていなかった。
ルネは優しい。あたたかく、疑うことを知らない人だ。
それでも、その優しさが、そのまま答えになるとは思えなかった。
「優しいのは、分かってる……。でも、それは、理由になるの?」
声に棘はなかった。ただ、ごく小さな疑問が、真ん中に置かれたようだった。
「理由には、ならないかもしれない。でも、きっかけにはなる」
ミーシャの声は、ほんの少しだけ熱を帯びていた。
「あなたのそばにいて、あなたを必要としてくれる人がいる。……そういう関係から始まっても、いいのじゃないかしら」
アリセルは口を閉ざした。両親の言葉は、どれも尤もだった。
確かに彼はアリセルに対して誠実で、優しかった。
疑いのない無垢な眼差しで、真っ直ぐに向き合ってくれる。それは、嘘ではないと分かっている。
けれど、ふと心に不安がよぎる。その中に、本当にルネ自身の気持ちはあるのだろうか、と。
彼は誰とも比べたことがない。
選ぶ機会も、迷う自由も与えられてこなかった。
アリセルを必要としているように見えるのは、彼が他を知らないからではないか。
その一抹の不安が、どうしても拭えなかった。
それに、アリセルはどこかで気づきはじめていた。
自分の心が、本当に強く惹かれている相手は、他にいるのではないかと。
まだ確信はなかった。ただ、その人のことを考えるときだけ、胸の奥の温度が少しだけ変わる。
触れられていない何かに、そっと呼びかけられているような、そんな感覚があった。
それらの答えが出ていないまま進んでしまえば、それはルネに対しても、自分に対しても、きっと不幸な結果を招いてしまうと、そんな気がしてならなかった。
「……ごめんなさい」
ぽつりと落ちたその言葉に、ふたりの親は何も返さなかった。
アリセルは唇をかすかに噛み、ゆっくりと顔を伏せる。
ふと、ある言葉が脳裏をかすめた。
あの日、ゲンチアナの花の前でユーグが言ってくれた、あの言葉。
『親だからって、全部に従う必要はないんだ。嫌なら嫌って、言っていい』
何も否定せず、ただそのまま受け止めてくれた声が、どうしようもなく優しく感じられた。その響きに背を押されるようにして、口を開いた。
「……お父さまも、お母さまも、私のことを考えてくれているのは分かってる。本当に、感謝してるの」
アリセルは、小さく息を吸った。喉の奥がつまって、言葉がすこしだけ遅れた。
「……でも、少しだけ時間がほしいの。すぐには決められない。自分の気持ちが、どこにあるのか……ちゃんと、考えたい」
静かな願いだった。
やがて、ジョゼフが目を閉じ、わずかに頷いた。
続けて、ミーシャもゆっくりと肯きながら、アリセルの肩に触れた手をそっと引いた。
言葉はなかった。だが、ふたりの表情には、静かな落胆の色がにじんでいた。
その目元には、何かを飲み込んだあとのような陰りがあり、口元は、無理にでも微笑みを整えようとしているように見えた。
責められてはいない。声を荒げられたわけでもない。
ただ、悲しみだけが、確かにそこにあった。
まるで、自分が大切なものを裏切ってしまったかのような、説明のつかない苦しさが胸を満たしていく。
黙って、微笑みながら頷いてくれたその姿に、深く抉られるようだった。
空には色を失くした雲がかかり、風も止んで、庭はしんと静まり返っていた。
アリセルは、庭先の片隅に咲くゲンチアナを、ただ呆然と見つめていた。
青紫の花は、夕闇の中でもなお、その色をかすかに残して揺れている。
いつからここに立っていたのか分からない。気づけば、家に帰ってきていた。
帰ってきて、思考を止めたまま、立ち尽くしていた。
デイジーの家を出てから、何ひとつ考えることができなかった。
彼女の言葉も、視線も、焼けついたように胸の奥でただ疼いているのに、どこにもそれを処理する言葉が浮かばない。
「アリセル」
突然、ジョゼフの声が鼓膜を震わせた。
だがアリセルは、何も答えられず、ただ、ゲンチアナの花から視線を戻せずにいた。
家の中に入り、ソファに腰を下ろすと、ミーシャがそっとカップを手渡してくれた。
湯気を立てる温かなミルクには、微かに香辛料の香りが漂っている。
肩からは、柔らかなケープが掛けられた。ふんわりと体を包むその重みが、徐々に現実へと引き戻していく。
「何があった……?」
ジョゼフが問いかける。その声は穏やかで、重みのない優しさがあった。
アリセルは視線をカップに落とし、ぽつりと声をこぼした。
「……聞いてしまったの。……婚約のこと……」
言いながら、胸の奥がざわりと波立つ。自分が動揺している理由すら、まだうまく整理できない。
「……ルネ様と、私の……話を……」
すると隣から、そっと手が伸びてきた。
ミーシャが、アリセルの手元のカップをやさしく引き取り、卓の上に置く。
そして、アリセルの肩に腕をまわし、引き寄せた。
「本当は、まだ話すつもりはなかったの。でも……あなたが聞いてしまったのなら、もう隠せないわね」
ミーシャの声には、どこか迷いがあった。だがそれ以上に、静かな決意が滲んでいた。
「私たちは、あなたに……誰かと一緒に歩んでいく未来を、考え始めていたの。その人が、きっとあなたを大切にしてくれるだろうって、そう思える相手だったから……」
アリセルは目を伏せたまま、何も言わなかった。
ただ、心のどこかが遠く、ぼんやりとしたままだった。
「無理に納得してほしいわけじゃないの。すぐに答えを出してほしいとも思っていないわ。でも、親として……あなたの幸せを、きちんと形にしてあげたいと思ったの。今までも、これからも」
向かいにいたジョゼフが、少しだけ身を乗り出すようにして口を開いた。
「分かりにくい形で知ることになってしまって、すまなかった。……でも、これは急に決めたことではないんだ。ゆっくり、少しずつ話していくつもりだった。……お前の気持ちを置き去りにするつもりはないよ」
しばらく、沈黙が部屋を満たしていた。
アリセルは、膝の上で手を組んだまま、うつむいていた。
言葉にするまでに、心の奥を何度もなぞらなければならなかった。ようやく、小さな声が落ちる。
「……分かってはいたの。いつか、お父さまとお母さまが決めた人と結ばれるんだって……そうなるものだって」
それは昔から教えられてきたことだったし、特別な反発があったわけではない。
それが当然だと、どこかで思い込んできたのだ。
「でも……どうして、ルネ様だったの?」
その問いに、しばしの沈黙が落ちた。
ジョゼフとミーシャが目を交わす気配が、室内の空気をほんのわずかに揺らした。
先に口を開いたのはミーシャだった。
言葉を選ぶように、ゆっくりとした調子で語り出す。
「……あの方は、とても素直で、まっすぐな人よ。心の底に澱がなくて、あなたのような子には、きっと合っていると思ったの」
アリセルは返事をしなかった。
視線は膝の上に落ちたまま、ただその言葉を聞いていた。
続けて、ジョゼフが低く、落ち着いた声で補う。
「誠実で、優しい。何より、お前のことを心から信じてくれている。……それは、誰にでも持てる感情じゃない。お前自身、あの方と過ごす時間の中で、それを感じてきたんじゃないか?」
アリセルはそっと瞼を伏せた。
父の言うことは、間違っていなかった。
ルネは優しい。あたたかく、疑うことを知らない人だ。
それでも、その優しさが、そのまま答えになるとは思えなかった。
「優しいのは、分かってる……。でも、それは、理由になるの?」
声に棘はなかった。ただ、ごく小さな疑問が、真ん中に置かれたようだった。
「理由には、ならないかもしれない。でも、きっかけにはなる」
ミーシャの声は、ほんの少しだけ熱を帯びていた。
「あなたのそばにいて、あなたを必要としてくれる人がいる。……そういう関係から始まっても、いいのじゃないかしら」
アリセルは口を閉ざした。両親の言葉は、どれも尤もだった。
確かに彼はアリセルに対して誠実で、優しかった。
疑いのない無垢な眼差しで、真っ直ぐに向き合ってくれる。それは、嘘ではないと分かっている。
けれど、ふと心に不安がよぎる。その中に、本当にルネ自身の気持ちはあるのだろうか、と。
彼は誰とも比べたことがない。
選ぶ機会も、迷う自由も与えられてこなかった。
アリセルを必要としているように見えるのは、彼が他を知らないからではないか。
その一抹の不安が、どうしても拭えなかった。
それに、アリセルはどこかで気づきはじめていた。
自分の心が、本当に強く惹かれている相手は、他にいるのではないかと。
まだ確信はなかった。ただ、その人のことを考えるときだけ、胸の奥の温度が少しだけ変わる。
触れられていない何かに、そっと呼びかけられているような、そんな感覚があった。
それらの答えが出ていないまま進んでしまえば、それはルネに対しても、自分に対しても、きっと不幸な結果を招いてしまうと、そんな気がしてならなかった。
「……ごめんなさい」
ぽつりと落ちたその言葉に、ふたりの親は何も返さなかった。
アリセルは唇をかすかに噛み、ゆっくりと顔を伏せる。
ふと、ある言葉が脳裏をかすめた。
あの日、ゲンチアナの花の前でユーグが言ってくれた、あの言葉。
『親だからって、全部に従う必要はないんだ。嫌なら嫌って、言っていい』
何も否定せず、ただそのまま受け止めてくれた声が、どうしようもなく優しく感じられた。その響きに背を押されるようにして、口を開いた。
「……お父さまも、お母さまも、私のことを考えてくれているのは分かってる。本当に、感謝してるの」
アリセルは、小さく息を吸った。喉の奥がつまって、言葉がすこしだけ遅れた。
「……でも、少しだけ時間がほしいの。すぐには決められない。自分の気持ちが、どこにあるのか……ちゃんと、考えたい」
静かな願いだった。
やがて、ジョゼフが目を閉じ、わずかに頷いた。
続けて、ミーシャもゆっくりと肯きながら、アリセルの肩に触れた手をそっと引いた。
言葉はなかった。だが、ふたりの表情には、静かな落胆の色がにじんでいた。
その目元には、何かを飲み込んだあとのような陰りがあり、口元は、無理にでも微笑みを整えようとしているように見えた。
責められてはいない。声を荒げられたわけでもない。
ただ、悲しみだけが、確かにそこにあった。
まるで、自分が大切なものを裏切ってしまったかのような、説明のつかない苦しさが胸を満たしていく。
黙って、微笑みながら頷いてくれたその姿に、深く抉られるようだった。
1
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』
鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、
仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。
厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議――
最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。
だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、
結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。
そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、
次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。
同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。
数々の試練が二人を襲うが――
蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、
結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。
そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、
秘書と社長の関係を静かに越えていく。
「これからの人生も、そばで支えてほしい。」
それは、彼が初めて見せた弱さであり、
結衣だけに向けた真剣な想いだった。
秘書として。
一人の女性として。
結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。
仕事も恋も全力で駆け抜ける、
“冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
二度目の初恋は、穏やかな伯爵と
柴田はつみ
恋愛
交通事故に遭い、気がつけば18歳のアランと出会う前の自分に戻っていた伯爵令嬢リーシャン。
冷酷で傲慢な伯爵アランとの不和な結婚生活を経験した彼女は、今度こそ彼とは関わらないと固く誓う。しかし運命のいたずらか、リーシャンは再びアランと出会ってしまう。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる