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Echo11:ちくりと、やわらかく
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町では教会の前の広場に、週末だけ市が立つ。
石造りの小さな教会は、尖った屋根が控えめに空へ伸び、鐘楼には素朴な十字架が掲げられている。
その教会を背に、朝早くから色とりどりの屋台や露店がずらりと並ぶ。
籠いっぱいの果物や山積みの野菜、新鮮な牛乳に、香草の束、パンや焼き菓子、蜂蜜漬けの木の実、塩漬けの肉や燻製の魚、編みかごや布袋、素朴な木彫りの人形や、町の子どもたちが摘んできた野花の束まで――手作りの細工物と一緒に、さまざまな品が机や箱の上に並べられている。
広場はいつもより賑やかで、人々が挨拶を交わしながら店先を巡っている。
年配の男たちは椅子を持ち寄って談笑し、子どもたちは手をつないで行き交い、時折、犬の鳴き声や赤ん坊の泣き声が混じる。婦人たちは野菜の品定めに余念がない。
「でね、今の統領エリック・ジルベールのこと、お父様もお母様も良く思ってないみたい。独裁で、冷酷な人間だって言ってたの。……ユーグはどう思う?」
屋台で買ったブルーベリーは、薄い樹皮を折り曲げた即席の皿に盛られている。
それをひと粒、口に運びながら、アリセルはユーグに目を向けた。羊肉の串焼きを片手に、ユーグは少しだけ首を傾ける。
「確かに、そうかもなぁ」
気の抜けたような調子で相槌を返しながら、ユーグは羊肉の串に齧りついた。アリセルは言葉を続ける。
「国を統治するのは王族でなければならないって言うのが、お父様とお母様も信条みたい」
「でも王族って言ったって、残されているのはルネだけだろ?」
「そう。そこが問題。たとえ王政に戻ったとしても、ルネ様が国を治めるなんて、とても無理でしょう。だから結局、夢物語みたいなものよね」
「いや、無理じゃないかも知れない」
ユーグは何かを企むような顔で口元を歪め、にやりと笑った。
「また悪い顔してる……」
思わずそう呟いたアリセルに、ユーグはそのまま続けた。
「別に、王がまともに国を治められる必要なんてないんだ。昔からあるだろ。子どもが王になって、実権は宰相が握るって話。要するに「王」ってのは、見せかけでもいいんだ。ルネが玉座にさえつけば、後は裏で誰が操ろうが関係ない」
「なんかそれって、ルネ様がただ利用されているだけじゃない」
「それだけの価値があるんだよ、王族の血には」
「でも、今は違うでしょ? 誰が統治するかは、血じゃなくて民意で決められているもの」
「……だからこそ、その血を利用しようとする奴は許されない」
ユーグは淡々と語りながら、ふと視線を上げた。
その双眸に獲物を狩る肉食獣のような光がともるのを見て、アリセルはゾクリとした。こんな目をした彼を見るのは、初めてだった。
だがその光は、一瞬ののちにふっと揺らぎ、溶けるように消えていった。
「ま、そんなことにならないように願うけどな」
先程までの険しさは跡形もなく、普段の気の良い兄のような表情に戻っていた。
なんだか幻でも見たかのような気分になり、アリセルはブルーベリーをひと粒口に運んだ。
甘酸っぱさがじんわりと舌に広がる。
その余韻の中、視線の先に目に入ったのは、露店の奥に積まれた毛布の山だった。
手前の札には「羊毛」と記されている。アリセルは思わず足を止める。
「これ、あたたかそうだね」
先ほどのユーグの表情を胸の奥にしまい込み、アリセルは言った。
「そうだな」
ユーグは頷いた。
アリセルは短く笑ってから、羊毛の毛布に手を伸ばす。ふんわりとした手触りに、自然と頬が緩んだ。並んでいるのは毛布だけではなかった。隣には、厚手の帽子や、素朴な模様の編みマフラー、小さな子ども用の手袋まで揃っている。
「わあ……どれもいいなぁ。これから冷えるもんね」
「ルネに、持ってってやるか。あいつ、薄い毛布一枚だけだったしな」
そう言いながら、ユーグは淡い生成り色の毛布を一枚手にとった。
アリセルはふと視線を横に向ける。
小物が並ぶ木箱の上に、灰青色の糸で編まれたマフラーが置かれていた。どこかユーグの目の色を思わせるその色合いに、きっと彼に似合うだろうと思った。
ユーグが毛布の代金を店主に渡そうとしたとき、アリセルが慌てて手を伸ばした。
「それ、私が払う。ルネ様のためなんだし、お父様も必要なものなら構わないって言ってたから」
「別にいいって。俺がルネに買ってやるんだから」
軽く笑いながらそう言って、ユーグはそのまま銀貨を渡してしまった。
アリセルは少し唇を尖らせてから、手にしたマフラーを店主にわたす。
「これ買います」
アリセルが差し出したマフラーを、店主は受け取った。手慣れた仕草で花模様の紙に包みながら、言う。
「いいねえ、お嬢ちゃん。横にいる恋人に贈り物か?」
「えっ!? ちがっ、なんで!?」
たしかに、ユーグに渡そうと思っていた。
だがそれを見抜かれるなど思わず、ましてや恋人などという言葉まで飛び出してきて、頭の中が真っ白になる。混乱のあまり、思わず変な声をあげるアリセルの頭をユーグはぽんっと撫でた。
「この子、俺の妹だから」
「仲の良い兄妹だね。てっきり恋人かと思ったよ」
「毎度あり」と笑って渡されたマフラーを受け取りながら、アリセルはなんとも言えない複雑な気持ちになった。
ユーグは困っている自分を助けようと、妹だと言ってくれたのだ。
そうと分かっている筈なのに、胸の奥に、ちくりと棘が刺さったような感覚が不可解でもあった。
店を後にして、マフラーの包みを抱えながら、軽く小石を蹴る。
「これ、ユーグに渡そうと思ったの」
マフラーを差し出すと、ユーグが少し驚いた顔をした。
「嬉しいけど、なんで?」
「なんでって、ユーグはいつも手伝ってくれるでしょう。だから、そのお礼。別に変な意味はないんだから」
「変な意味って……」
思わずといったように笑うユーグだが、その眼差しは優しかった。「ありがとな」と礼を言われて、アリセルは、こくんと頷いた。背で手を組みながら、彼を見上げる。
「マフラー、必要じゃなかったら、無理に使わなくていいからね。私がユーグにあげたかっただけだから」
「本当、お前変なところで気をつかうよなぁ」
「だって、変に思われると嫌だから」
「アリセルは俺と恋人に見られたのが、そんなに嫌だった?」
不意に、ユーグの口調が真剣なものに変わった。
その瞳がまっすぐこちらを射抜いてくるのを前に、アリセルは一瞬、言葉を失う。
嫌な訳ではなかった。
ただこれまで一度も、ユーグを異性として意識したことがなかった。
そこへ突然「恋人」などという言葉を投げかけられ、頭の中が追いつかず、混乱しているだけだった。息の詰まるような沈黙に、何か答えなければとアリセルは焦る。
だが次の瞬間、ユーグは楽しげに吹き出した。
からかわれたのだと知り、アリセルは片眉をあげる。
「からかったのね。バカ!」
「バカは酷いんじゃないか?」
「知らない」
アリセルはぷりぷり怒りながら背を向け、足早に歩き出した。ユーグは苦笑いを浮かべながら、その背を追いかける。
「悪かったよ、怒るなって。ほら、せっかくマフラーまで買ってくれたんだし」
「……だからこそ、バカなのよ」
唇を尖らせたまま返してしまい、アリセルは内心で肩を落とす。
怒っているはずなのに、気づけば口が勝手に動いていた。
そのまま背を向けて歩き出すと、後ろから足音が追いかけてくる。アリセルの足どりは、いつの間にかわずかに緩んでいた。
やがて隣に並んだ彼の気配に、胸の奥がほんのりと温かくなる。
怒っているはずなのに、気がつけばユーグと歩幅が揃っていた。
石造りの小さな教会は、尖った屋根が控えめに空へ伸び、鐘楼には素朴な十字架が掲げられている。
その教会を背に、朝早くから色とりどりの屋台や露店がずらりと並ぶ。
籠いっぱいの果物や山積みの野菜、新鮮な牛乳に、香草の束、パンや焼き菓子、蜂蜜漬けの木の実、塩漬けの肉や燻製の魚、編みかごや布袋、素朴な木彫りの人形や、町の子どもたちが摘んできた野花の束まで――手作りの細工物と一緒に、さまざまな品が机や箱の上に並べられている。
広場はいつもより賑やかで、人々が挨拶を交わしながら店先を巡っている。
年配の男たちは椅子を持ち寄って談笑し、子どもたちは手をつないで行き交い、時折、犬の鳴き声や赤ん坊の泣き声が混じる。婦人たちは野菜の品定めに余念がない。
「でね、今の統領エリック・ジルベールのこと、お父様もお母様も良く思ってないみたい。独裁で、冷酷な人間だって言ってたの。……ユーグはどう思う?」
屋台で買ったブルーベリーは、薄い樹皮を折り曲げた即席の皿に盛られている。
それをひと粒、口に運びながら、アリセルはユーグに目を向けた。羊肉の串焼きを片手に、ユーグは少しだけ首を傾ける。
「確かに、そうかもなぁ」
気の抜けたような調子で相槌を返しながら、ユーグは羊肉の串に齧りついた。アリセルは言葉を続ける。
「国を統治するのは王族でなければならないって言うのが、お父様とお母様も信条みたい」
「でも王族って言ったって、残されているのはルネだけだろ?」
「そう。そこが問題。たとえ王政に戻ったとしても、ルネ様が国を治めるなんて、とても無理でしょう。だから結局、夢物語みたいなものよね」
「いや、無理じゃないかも知れない」
ユーグは何かを企むような顔で口元を歪め、にやりと笑った。
「また悪い顔してる……」
思わずそう呟いたアリセルに、ユーグはそのまま続けた。
「別に、王がまともに国を治められる必要なんてないんだ。昔からあるだろ。子どもが王になって、実権は宰相が握るって話。要するに「王」ってのは、見せかけでもいいんだ。ルネが玉座にさえつけば、後は裏で誰が操ろうが関係ない」
「なんかそれって、ルネ様がただ利用されているだけじゃない」
「それだけの価値があるんだよ、王族の血には」
「でも、今は違うでしょ? 誰が統治するかは、血じゃなくて民意で決められているもの」
「……だからこそ、その血を利用しようとする奴は許されない」
ユーグは淡々と語りながら、ふと視線を上げた。
その双眸に獲物を狩る肉食獣のような光がともるのを見て、アリセルはゾクリとした。こんな目をした彼を見るのは、初めてだった。
だがその光は、一瞬ののちにふっと揺らぎ、溶けるように消えていった。
「ま、そんなことにならないように願うけどな」
先程までの険しさは跡形もなく、普段の気の良い兄のような表情に戻っていた。
なんだか幻でも見たかのような気分になり、アリセルはブルーベリーをひと粒口に運んだ。
甘酸っぱさがじんわりと舌に広がる。
その余韻の中、視線の先に目に入ったのは、露店の奥に積まれた毛布の山だった。
手前の札には「羊毛」と記されている。アリセルは思わず足を止める。
「これ、あたたかそうだね」
先ほどのユーグの表情を胸の奥にしまい込み、アリセルは言った。
「そうだな」
ユーグは頷いた。
アリセルは短く笑ってから、羊毛の毛布に手を伸ばす。ふんわりとした手触りに、自然と頬が緩んだ。並んでいるのは毛布だけではなかった。隣には、厚手の帽子や、素朴な模様の編みマフラー、小さな子ども用の手袋まで揃っている。
「わあ……どれもいいなぁ。これから冷えるもんね」
「ルネに、持ってってやるか。あいつ、薄い毛布一枚だけだったしな」
そう言いながら、ユーグは淡い生成り色の毛布を一枚手にとった。
アリセルはふと視線を横に向ける。
小物が並ぶ木箱の上に、灰青色の糸で編まれたマフラーが置かれていた。どこかユーグの目の色を思わせるその色合いに、きっと彼に似合うだろうと思った。
ユーグが毛布の代金を店主に渡そうとしたとき、アリセルが慌てて手を伸ばした。
「それ、私が払う。ルネ様のためなんだし、お父様も必要なものなら構わないって言ってたから」
「別にいいって。俺がルネに買ってやるんだから」
軽く笑いながらそう言って、ユーグはそのまま銀貨を渡してしまった。
アリセルは少し唇を尖らせてから、手にしたマフラーを店主にわたす。
「これ買います」
アリセルが差し出したマフラーを、店主は受け取った。手慣れた仕草で花模様の紙に包みながら、言う。
「いいねえ、お嬢ちゃん。横にいる恋人に贈り物か?」
「えっ!? ちがっ、なんで!?」
たしかに、ユーグに渡そうと思っていた。
だがそれを見抜かれるなど思わず、ましてや恋人などという言葉まで飛び出してきて、頭の中が真っ白になる。混乱のあまり、思わず変な声をあげるアリセルの頭をユーグはぽんっと撫でた。
「この子、俺の妹だから」
「仲の良い兄妹だね。てっきり恋人かと思ったよ」
「毎度あり」と笑って渡されたマフラーを受け取りながら、アリセルはなんとも言えない複雑な気持ちになった。
ユーグは困っている自分を助けようと、妹だと言ってくれたのだ。
そうと分かっている筈なのに、胸の奥に、ちくりと棘が刺さったような感覚が不可解でもあった。
店を後にして、マフラーの包みを抱えながら、軽く小石を蹴る。
「これ、ユーグに渡そうと思ったの」
マフラーを差し出すと、ユーグが少し驚いた顔をした。
「嬉しいけど、なんで?」
「なんでって、ユーグはいつも手伝ってくれるでしょう。だから、そのお礼。別に変な意味はないんだから」
「変な意味って……」
思わずといったように笑うユーグだが、その眼差しは優しかった。「ありがとな」と礼を言われて、アリセルは、こくんと頷いた。背で手を組みながら、彼を見上げる。
「マフラー、必要じゃなかったら、無理に使わなくていいからね。私がユーグにあげたかっただけだから」
「本当、お前変なところで気をつかうよなぁ」
「だって、変に思われると嫌だから」
「アリセルは俺と恋人に見られたのが、そんなに嫌だった?」
不意に、ユーグの口調が真剣なものに変わった。
その瞳がまっすぐこちらを射抜いてくるのを前に、アリセルは一瞬、言葉を失う。
嫌な訳ではなかった。
ただこれまで一度も、ユーグを異性として意識したことがなかった。
そこへ突然「恋人」などという言葉を投げかけられ、頭の中が追いつかず、混乱しているだけだった。息の詰まるような沈黙に、何か答えなければとアリセルは焦る。
だが次の瞬間、ユーグは楽しげに吹き出した。
からかわれたのだと知り、アリセルは片眉をあげる。
「からかったのね。バカ!」
「バカは酷いんじゃないか?」
「知らない」
アリセルはぷりぷり怒りながら背を向け、足早に歩き出した。ユーグは苦笑いを浮かべながら、その背を追いかける。
「悪かったよ、怒るなって。ほら、せっかくマフラーまで買ってくれたんだし」
「……だからこそ、バカなのよ」
唇を尖らせたまま返してしまい、アリセルは内心で肩を落とす。
怒っているはずなのに、気づけば口が勝手に動いていた。
そのまま背を向けて歩き出すと、後ろから足音が追いかけてくる。アリセルの足どりは、いつの間にかわずかに緩んでいた。
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