オールモイズ

石崎凛

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目の付け所4

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男性はニコニコ笑いながら
葵の顔を見ていた


「さぁ、ここまでで何か質問や分からないこと、少しでも引っかかったり理解につまづいているのであればお尋ねください」



「あー…」


彼女は目の付け所の話を突然されて
頭の理解どころか何も追いついていなかった


「えっと…目の付け所、面白いなと…そんな考え方があるのだなと…」


絞り出した回答がこれだった


「ふむふむ、まだ混乱しているようですね。

では、会社の説明に参ります。

時間は待ってくれません。時間は有限です。
人生で見ても、この貸し会議室の利用時間で見ても、ね?」


男性はウインクをして突然立ち上がり
窓辺の方へ歩き出した

彼女はよく思う
リアクションや動作が
大きい人だな…


「我が社は、何でも屋です。依頼者の要望に応えるのが仕事です。

内容は様々です。

いくつか実例を挙げましょう。
この実例は本人たちから説明会で話しても良いと勿論、許可を得たものです。


例えば
家に帰ってこない猫を探したり
夏休みの宿題が終わらないのを手伝ったり
お友達がいない子のSNSを華やかにしたり
浮気してるかも?という彼、あるいは彼女の調査をしたり
水道管が壊れたからなおしたり
年末の業務が増えるから一時的にパートナーとして雇われたり

様々ですね

多種多様の要望があちこちから寄せられます。

場所も勿論様々です。」



あちこち手を出しすぎでは?
と彼女は内心思い
何より
大丈夫か?この会社?
と思った


「これだけ様々な業務があるため、ある程度出来てもらわねば困りますね」


男性はまたニコリと笑い
窓のカーテンを閉めた

「ところで。
貴女は何ができるのですか?」


「あ…えっと、ワープロ検定は2級…秘書検定も2級…それから…」


男性は右手の人差し指を自分の口にあて
しーっと彼女を静かにさせた


「僕の質問は

貴女は何ができるのですか?
ですよ?
誰も実績や経歴をきいておりません」

男性は口元は
笑っているが目が笑っていなかった

彼女の背筋が凍る
目が泳ぐ
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