オールモイズ

石崎凛

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目の付け所5

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「あ、その…」


彼女の頭の中は
さらにパニックになる

男性は彼女に近づき
両肩に手を置き
顔を覗き込み
突然


はい!深呼吸!
と大きな声を出した

ビクッと動く彼女
目がかっぴらき先ほどまで
泳いでいた目は男性の目を真っ直ぐに
見ており

男性に合わせて大きく深呼吸をした


「はい、僕は難しい質問をしているつもりはないんだけどなぁ。

やはり距離感は難しいですね。


貴女に何ができるのか。 

例えば僕なら、まず文字を書くことができます。文章を読むことができます。ご飯を食べることができます。歩くことができます。相手の目を見て話すことができます。計算ができます。タイピングができます。


このように小さいことが積み重なり
大きなこと

例えば
会社を経営できるほどの人脈や経済力に恵まれることができました。
難しい文章を読み、書きすることができるようになりました。
味がよく分かるようになったから料理が上手にできるようになりました。

と現在できたことが多く存在します。


できることとはできた事です。

そのできた事とは
必ず小さいことの積み重ねから
できたもののはずだと思います。


だって
突然、難しい計算や何ヶ国語も話せたりミシュランレベルの料理ができたりプロのスポーツ選手になる人なんていないでしょ?

できたまでの時間が短い人はいますが
必ず一つ一つ積み重ねているものが
あると思いますが

特に人間はそうじゃありませんか?」


男性は柔らかい笑顔になり
それで?貴女は?
と質問を投げかけた
(もちろん作り笑いで)


「えっと…絵が描けます、英語は話せませんが読むことができます、なんとか話すことができます、文字が書けます…


だから…
絵が上手に描くことができるから一度だけ賞をとることができました。
英語は…資格はないですが、論文くらいならスラスラ読むことができました。


あとは…」


彼女が話そうとすると
男性がまたしーっと彼女が
言うのを妨げた


「充分です。とても良いことです。できた事があってそれを伝えることができましたね」


男性は彼女から離れ
またスクリーンの前へと
戻っていった


「貴女のことが少しずつ分かってきました。最初に比べて。

目の付け所から始まり
貴女のできた事が聞ければ
あとは大丈夫。

僕は実績や経歴でなく
貴女に何ができるのか
何をしてきたのか
これが聞きたかったのです。


これも目の付け所ですかね?」


「あの…」


彼女はマスクを外し
立ち上がった

「これは…会社説明会ですよね?
なんといいますか、他所と違いすぎて…


正直、入った瞬間から
私のこと見透かしてるような
上から目線のような
私はわかってるって
謎の持論ばかりで…

会社のこと全く分からないんですけど」


そして彼女は男性を睨みつけた
男性はニコニコと笑いながら


「早速質問、嬉しいですね。
貴女は本当に面白い方ですね」


と言った。


果たして彼女は何を思ったのだろう
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