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第2章
焦らされる刻印⚠️
しおりを挟むヒート4日目の朝。目覚めた時は、まだ激しい波は来ていなかった。
嵐の前の静けさのような穏やかな朝だ。
3日目のヒートがあまりに激しく、昨夜はまともに湯浴みができていなかったため、ヴォルフは目覚めるとすぐにエリアスを抱き上げ、浴室へと連れて行ってくれた。
「……気持ちいい」
身体を綺麗に洗ってもらい、ヴォルフの膝に乗せられたまま温かい湯船に浸かる。
お湯の浮力とヴォルフの腕に支えられ、こわばっていた筋肉がほぐれていく。
今はヒートの熱に浮かされているわけではない。
ただ、愛おしくて、したくてたまらなくて、エリアスは自分からヴォルフの唇にキスをした。
「ん……ん、ぅ……」
ちゅ、ちゅ、と音を立てて軽いキスを繰り返す。
湯気の中でリラックスしながら触れ合う時間は、とろけるように気持ちよかった。
「お腹は空いたかい?ゼリーと一緒に、スープも食べるか?」
「……うん。食べます」
エリアスが頷くと、ヴォルフは満足そうに微笑んだ。
十分に温まった後、湯船から上がり、用意されていたふかふかの大きなバスタオルで包むように丁寧に拭われる。
そのままお姫様抱っこで部屋のソファへと運ばれ、濡れた髪を拭き、肌触りの良いバスローブを着せてもらった。
二人が湯に入っている間に、テーブルには朝食が用意されていた。
エリアスはヴォルフの膝の上に抱かれたまま、ゼリー飲料と温かい野菜スープを、ヴォルフの手によって口へと運んでもらう。
(……今日は、自分でも食べられそうなのに)
手足の感覚もしっかりしている。
けれど、ヴォルフはエリアスにスプーンを持たせるつもりなど毛頭ないようで、甲斐甲斐しく世話を焼き続けている。
その過保護さが嬉しくて、エリアスは素直に口を開けて従った。
エリアスが食べ終わると、今度はヴォルフが自身の食事を摂り始めた。
その間も膝の上から降ろされることはなく、ヴォルフは片手で食事をしながら、もう片方の手でエリアスの背中や腰を優しく撫で続けてくれた。
その一定のリズムと温もりに甘えて抱きついていると、じわじわと、身体の奥底から熱が昂ってくるのを感じた。
「……ん、ぁ……」
昨日のような、脳を焼き切るような暴力的な熱ではないことにほっとする。
けれど、確実にヒートの波が戻ってきている。
息が荒くなり、身体が芯から熱を帯びていく。
密着しているし、立ち昇るフェロモンの濃さで、ヴォルフもすぐにそれに気づいた。
「……来たな」
食事を終えたヴォルフは、ナプキンで口を拭うと、ぐったりと熱を帯び始めたエリアスを抱き上げた。
しかし、向かったのはベッドではなかった。
そのままエリアスをソファの背もたれに手をつかせ、背後から抱き込むような体勢を取らせた。
「ヴォル、フ……?」
「ここでいい」
ヴォルフの手がバスローブの裾を捲り上げ、すでに熱を帯びて湿り気を帯びたエリアスの太ももを、這い上がるように撫でていく。
「ひゃっ、あ……っ!」
ただの手のひらの感触なのに、過敏になった肌には電流のような刺激となる。
それだけで感じてしまい、エリアスの膝がガクガクと震えた。
「いい反応だ」
ヴォルフは背後から覆いかぶさり、エリアスの耳朶をねっとりと舐め上げた。
「んあっ!みみ、だめぇ……っ!」
どこもかしこもが性感帯になってしまっているエリアスは、高い声を上げて身をよじった。
気持ちいい。もっと触れてほしい。
「……いい匂いだ」
ヴォルフはエリアスのうなじに顔を埋め、首筋を舌で長く舐め上げた。
そこは、オメガにとって最も重要な場所――腺がある場所だ。
「ヒート期間の終わりに……ここを噛んで、君を番にするのが楽しみだ」
ヴォルフが耳元で低く囁いた。
その言葉に、エリアスの背筋がゾクゾクと粟立った。
待ち焦がれていた瞬間。
「……もう、噛んでいいのに……早く、貴方のものに……っ」
エリアスが切なげに訴えると、ヴォルフは首を振った。
「だめだ。愛咬の儀式は一生に一度だからね。……最高のフィナーレにとっておきたいんだ」
そう言いながらも、ヴォルフの息遣いは荒い。
目の前の無防備な首筋に、我慢できなさそうに軽く歯を立て、カリと甘噛みをしてきた。
「あ、ひぁぁっ!!」
鋭い牙が皮膚に当たる感触。
それだけの刺激で、エリアスの目の前が白く弾け、イキそうになってしまった。
「うぅ……っ、焦らさないで……ヴォルフぅ……」
快感と焦燥感に、エリアスは泣きそうな声で喘いだ。
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