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第2章
夫の特権
しおりを挟むヒート6日目の夜。
豪奢な夕食を終えた後も、エリアスは当然のように定位置となったヴォルフの膝の上に収まっていた。
ヴォルフが手ずから淹れてくれた食後の紅茶の香りが、部屋にふわりと漂う。
温かいカップを両手で包み、それを飲んで休んでいる間も、ヴォルフの腕はエリアスの腰にしっかりと回されたままだ。
どうやら彼は、片時もエリアスと離れるつもりがないらしい。
「ん……っ」
背後から包み込まれる安心感に浸っていると、時折、ヴォルフの唇がうなじや耳、頬をくすぐるように落とされる。
そのたびにエリアスの心臓はドキドキと高鳴り、身体が小さく跳ねる。
くすぐったくて、甘やかで、幸せな時間。
そう思って緩んでいたエリアスの耳元で、ヴォルフが不意に真剣な声色で囁いた。
「……紅茶には、強い利尿作用があるらしい」
「え?」
唐突な話題にエリアスが首を傾げると、ヴォルフはエリアスの手の中にあるカップを見て、楽しそうに続けた。
「これをたっぷり飲んだら……また後で、エリアスの排泄の世話ができるな」
「っ!?」
サラッと言われた内容に、エリアスは顔を真っ赤にしてカップを取り落としそうになった。
まだやるつもりなのか。
ヒートの熱も引き、身体も自由に動くのに、またあの屈辱的で恥ずかしい行為をさせられるなんて。
「も、もうそれだけは……許してください……っ」
エリアスは潤んだ瞳で振り返り、必死に懇願した。
しかし、ヴォルフは全く聞き入れる様子がない。
エリアスの腹部――下腹のあたりに後ろから手を回し、意地悪そうな、それでいてとろけるように甘く低い声で告げた。
「だめだ。……恥ずかしがっている君を見るのは、夫である私の特権だ」
ヴォルフの手が、服の上から膀胱のあたりをわざとらしく、ゆっくりと撫で回す。
「それを奪うことは、君にも出来ないよ」
「うぅ……っ」
的確に急所を愛撫され、エリアスは逃げ場のない羞恥に震えた。
この人は、紳士の皮を被っているけれど、中身はとんでもない。
「ヴォルフの……へんたい……」
エリアスが涙目で、精一杯の抗議を込めて呟くと、ヴォルフは傷つくどころか、さらに嬉しそうに目を細めた。
「ああ、そうだよ」
ヴォルフは開き直り、誇らしげにさえ見える笑顔で断言した。
「私はエリアスのことなら、どれだけでも変態になれるんだ」
「……っ」
あまりの潔さに、エリアスはもう何も言い返すことができなかった。
呆気にとられるエリアスに、ヴォルフは「分かったね?」と言わんばかりに顔を寄せ、甘いキスを落とした。
エリアスは抗議の声を唇で塞がれ、涙目のまま、その理不尽で愛おしい口づけに応えることしかできなかった。
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