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第2章
ここでしていいよ⚠️
しおりを挟む窓の隙間から差し込む朝日で、エリアスは目を覚ました。
今日で、ヒート期間の7日目を迎える。
昨日はヒート特有の微熱と倦怠感が酷く、一日中ベッドの上で唸っていたが、今朝は驚くほど体が軽い。
嵐が去った後の静けさのように、頭も冴えており、いつもの日常が戻りつつあることを実感していた。
ヴォルフと共に豪奢な朝食を楽しみ、食後の紅茶を飲み干すと、ふと彼が立ち上がり、エリアスの方へと手を差し出した。
「エリアス、少しあちらへ行こうか」
「……?はい」
何だろうと思いながらも、エリアスはその大きな手に自らの手を重ねた。
ヒートも終わりかけの今、もう激しい行為はないだろうと高を括っていたエリアスは、素直にヴォルフに引かれていく。
連れて行かれたのは、この七日間を過ごした寝室のベッドだった。
ただ、いつもと少し様子が違う。
元々防水使用になっていたシーツが、少し硬質な、カサカサとした手触りのものに変えられていたのだ。
「ヴォルフ、これは……?」
「座って」
質問には答えず、ヴォルフはベッドの端に腰掛け、自分の膝の間をポンと叩いた。
おいで、と優しく促され、エリアスは吸い寄せられるようにその間に収まる。
背中をヴォルフの広い胸板に預けると、安心感と共に、これから何が始まるのかという一抹の不安がよぎった。
すると、不意にヴォルフの手がエリアスの腰元に伸びた。
カチャリ、とベルトのバックルが外される音が響く。
「えっ、あ、あの、ヴォルフ……?」
エリアスが驚いて声を上げる間もなく、ズボンは下着ごと無造作に引き下ろされた。
真っ白な太腿が露わになり、冷たい空気に晒される。
ヴォルフはエリアスの足を無言で大きく開かせると、耳元に唇を寄せ、とろけるような低音で囁いた。
「今日で最後だし……このシーツは防水だから」
「……え?」
防水だから、何だというのか。
エリアスが意味を理解できずに戸惑っていると、ヴォルフはエリアスの下腹を愛おしげに撫でながら、信じられない言葉を口にした。
「だから、ここで出していいよ」
その言葉の意味が脳に浸透した瞬間、エリアスの顔から血の気が引いたかと思えば、次は瞬時に沸騰したように真っ赤になった。
「――っ!?」
ここで、排泄しろと言っているのだ。
トイレではなく、このベッドの上で。
防水シーツだから、そのまま漏らしてしまっても構わない。
後でシーツを取り替えればいいだけだ、と。
あまりの提案に、エリアスはパニックに陥った。
「い、いやっ……!」
エリアスは必死に首を振り、ヴォルフの足の間から逃げ出そうともがく。
だが、背後から回された強靭な腕は、逃げることを決して許してはくれない。
「だめだ。逃がさないよ」
ヴォルフは楽しげにさえ聞こえる声でそう言うと、開かれた足の間の、無防備な部分に手を這わせた。
「ひっ……!」
さらに、もう片方の手が下腹部をじわりと圧迫するように撫で回す。
昨夜、ヴォルフの策略によって飲まされた利尿作用のある紅茶。
そして今朝の食事で摂取した水分。
それらが今、出口を求めて膀胱を刺激していた。
確かに、出したい。今すぐにでもトイレに駆け込みたいほどの尿意がある。
だが、便器にならまだしも、こんな場所でなんて。
しかも今は、理性を失っているヒートの最中ではない。
完全に意識がはっきりしている状態で、シーツの上に垂れ流すなんて、貴族としての矜持どころか、人としての尊厳に関わる。
「む、無理です……っ、お願い、許してください……っ!」
エリアスは涙目で振り返り、必死に懇願した。
しかしヴォルフは、そんなエリアスの涙さえも愛おしそうに見つめ、甘く優しく囁くだけだ。
「いい子だ。大丈夫だよ、エリアス」
「だ、だめ、そんなの……っ」
「我慢しなくていい。私の前で、全てを解放してごらん」
ヴォルフの手つきは優しく、それでいて的確に排泄を促してくる。
尿意は限界に達しつつあった。
膀胱が悲鳴を上げ、括約筋がひくひくと震える。
「い、いや、こんなところで、お、……おしっこ、できません……っ、だめぇ……!」
ボロボロと涙をこぼしながら、エリアスは子供のように泣きじゃくった。
恥ずかしい言葉を口にしてしまっても、ヴォルフの手は止まらない。
彼はいつまでも待つ気だ。エリアスが屈服し、その理性ごと決壊するのを。
「うぅ、ぐすっ、やだ、したくない……っ」
抵抗の言葉とは裏腹に、身体はもう限界だった。
ヴォルフの手が、一度強く下腹を押し込んだ瞬間。
「あっ――」
プツリ、と理性の糸が切れた。
「あ、ぁ……っ、ああぁ……っ!」
熱い液体が、自分の意思とは無関係に溢れ出した。
これまでのヒート中のように、ヴォルフに補助されて出すのとは訳が違う。
完全にコントロールを失い、ただただ漏らしてしまう、お漏らしに近い排泄だった。
ジョロジョロと断続的な音が静かな部屋に響き、防水シーツの上に温かい水溜まりが広がっていく。
臀部や太腿、そして後ろにいるヴォルフの衣服までをも濡らしていく感覚が、エリアスを絶望的な羞恥へと叩き落とした。
「うわぁぁぁん……っ!」
出し切った後、エリアスは震えながら声を上げて号泣した。
こんな恥ずかしい姿を見られたくないのに、他に縋る相手もいない。
この酷い状況を強いたのはヴォルフその人なのに、エリアスは泣きじゃくりながら、後ろから抱きしめるその身体に必死にしがみついた。
「うぅ、ひっ、ぐぅ……っ」
子供のようにしゃくりあげ、ヴォルフの胸に顔を埋める。
ヴォルフはそんなエリアスを、まるで宝物でも扱うかのように優しく抱きしめ、頭を撫でた。
「よしよし、いい子だねエリアス。よく出来た」
「うぅ……っ」
「可愛いよ。君の全てが愛おしい」
ヴォルフの穏やかな声と体温に包まれ、エリアスは混乱と羞恥の中で、それでも安心感を覚えてしまう自分にまた泣いた。
しばらくの間、エリアスが泣き止むまで、ヴォルフはずっと背中をさすり続けた。
ようやく嗚咽が落ち着いてきた頃、ヴォルフは濡れた身体を気にする様子もなく、軽々とエリアスを抱き上げた。
「さあ、綺麗にしようか」
優しくソファに座らせると、ヴォルフは手際よく防水シーツを剥がし、片付けを始めた。
その甲斐甲斐しい背中を見つめながら、エリアスはぼんやりとした頭で、もうこの人には一生敵わないのだと、心の底から思い知らされていた。
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