銀色の商人と贋作の妻

真大(mahiro)

文字の大きさ
174 / 251
第3章

誓いの前夜

しおりを挟む

エリアスが意識を取り戻した時、身体はふわふわとした心地よい浮遊感に包まれていた。
湯殿でヴォルフに洗われ、芯まで温まった身体は、今まさにヴォルフの腕の中にあり、ゆっくりと部屋へ向かって運ばれている最中だった。

「……ん」

うっすらと目を開けると、歩きながらヴォルフが顔を寄せ、エリアスの額に優しくキスを落とした。

「起きたかい? もうすぐベッドだ」

ぼんやりとした思考のまま、エリアスはヴォルフの逞しい腕に頭を預けた。
自分で歩く必要もなく、ただこの絶対的な安心感に身を任せていればいい。
起きてなお、警戒心のかけらもなく全身を預けてくるエリアスの重みに、ヴォルフは愛おしそうに微笑み、
確かな足取りで廊下を進んでいった。

部屋に到着すると、ヴォルフはエリアスを慎重にベッドへと下ろした。
そのまま、湯殿で着せたバスローブの紐を解き、手際よくシルクのナイトウェアへと着替えさせる。
まるで子供を世話するように布団を肩までかけ、ヴォルフ自身もさっと揃いのナイトウェアに着替えて隣に来た。

「……ヴォルフ」

エリアスはゆっくりと目を開け、毛布の中から手を伸ばした。
甘えるように差し出されたその手を、ヴォルフはすぐに取り、エリアスごと優しく抱きしめた。

「明日……君の美しい姿を見るのが、とても楽しみだよ」

耳元で囁かれた言葉に、エリアスも胸が温かくなる。

「……私も、楽しみです。もう貴方のものなのに、改めて貴方の妻になるみたいで……なんだか、不思議な気持ちです」

エリアスが小さく笑うと、ヴォルフは「そうだな」と頷き、抱きしめる腕にぎゅっと力を込めた。

「明日は、これからの二人の未来のために、新しい誓いを立てる日だ。……過去を塗り替え、共に歩むためのね」

ヴォルフはそう言うと、エリアスに覆い被さるようにして顔を近づけ、唇を重ねた。
チュ、チュ……と、リップ音が静かな部屋に響く。
唇が離れるたび、至近距離でお互いの瞳を見つめ合う。
そこには、隠しようのない愛情と、明日の誓いへの期待が揺らめいている。

「ん……」

エリアスはヴォルフの首に腕を回し、離れようとする唇を「もっと」とねだるように自分から引き寄せた。
その可愛い誘いに応えるように、ヴォルフは目を細め、再び深くキスを落とす。

「……んぅ、ふ、ぁ……」

角度を変え、舌を絡め、互いの味を確かめ合う。

「……明日は早いから、もう寝ないと……」
「……はい、寝ないと……んん、……っ、は、」

口ではそう言い合いながらも、どちらも離れようとはしない。

唇が触れ合うたびに熱が増し、名残惜しさが募る。
結局、二人はしばらくの間キスの雨を降らせ続け、これ以上続けたら理性が崩壊するというギリギリのところまで、貪るように求め合ってしまった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

僕の、しあわせ辺境暮らし

  *  ゆるゆ
BL
雪のなか僕を、ひろってくれたのは、やさしい男の子でした。 ふたりの、しあわせな辺境暮らし、はじまります! ふたりの動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵もあがります YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

【完結】重ねた手

ivy
BL
とても短いお話です。

抑制剤の効かない薬師オメガは森に隠れる。最強騎士団長に見つかり、聖なるフェロモンで理性を溶かされ、国を捨てた逃避行の果てに番となる

水凪しおん
BL
「この香りを嗅いだ瞬間、俺の本能は二つに引き裂かれた」 人里離れた森で暮らす薬師のエリアルは、抑制剤が効かない特異体質のオメガ。彼から放たれるフェロモンは万病を癒やす聖なる力を持つが、同時に理性を失わせる劇薬でもあった。 ある日、流行り病の特効薬を求めて森を訪れた最強の騎士団長・ジークフリートに見つかってしまう。エリアルの香りに強烈に反応しながらも、鋼の理性で耐え抜くジークフリート。 「俺が、貴方の剣となり盾となる」 国を救うための道具として狙われるエリアルを守るため、最強の騎士は地位も名誉も投げ捨て、国を敵に回す逃避行へと旅立つ。 シリアスから始まり、最後は辺境での幸せなスローライフへ。一途な騎士と健気な薬師の、運命のBLファンタジー。

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *不定期連載です。

そばにいられるだけで十分だから僕の気持ちに気付かないでいて

千環
BL
大学生の先輩×後輩。両片想い。 本編完結済みで、番外編をのんびり更新します。

今からレンタルアルファシステムを利用します

夜鳥すぱり
BL
大学2年の鳴水《なるみ》は、ずっと自分がオメガであることを隠して生きてきた。でも、年々つらくなる発情期にもう一人は耐えられない。恋愛対象は男性だし、男のアルファに会ってみたい。誰でも良いから、定期的に安全に話し相手をしてくれる人が欲しい。でもそんな都合のいい人いなくて、考えあぐねた結果たどり着いた、アプリ、レンタルアルファシステム。安全……だと思う、評価も星5で良いし。うん、じゃ、お問い合わせをしてみるか。なるみは、恐る恐るボタンを押すが───。 ◆完結済みです。ありがとうございました。 ◆表紙絵を花々緒さんが描いてくださりました。カッコいい雪夜君と、おどおど鳴水くんです。可愛すぎますね!

僕の事を嫌いな騎士の一途すぎる最愛は…

BL
記憶喪失の中目覚めると、知らない騎士の家で寝ていた。だけど騎士は受けを酷く嫌っているらしい。 騎士×???

処理中です...