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第3章
寝たふりの獣
しおりを挟む「……もう少しだけ」
エリアスはそう心の中で言い訳をしながら、しばらくの間、ヴォルフの熱い口腔内を指で弄るのをやめられずにいた。
指先で上顎の粘膜をなぞるように触れると、ヴォルフが眠っているはずなのに、くすぐったいのかビクリと小さく反応する。
その無防備な反応を見て、エリアスの背筋にゾクゾクとした背徳的な震えが走った。
ヴォルフが反応を見せてから、エリアスの指の動きはさらに大胆になった。
濡れた舌の上を撫でたり、その厚みや弾力、そして火傷しそうなほどの熱さを確かめるように執拗に触れたり。
(……もう、だめだ)
理性の限界を感じる頃には、エリアスはすっかり興奮しきってしまっていた。
エリアスは濡れた指を引き抜くと、突き動かされるように身を寄せ、眠っているヴォルフの唇に自分の唇を重ねた。
触れるだけの軽いキスではない。
先ほどまで指を入れていたように、今度は自身の舌を侵入させ、一方的にヴォルフの口の中を味わい始めた。
じゅる、ちゅぷ……。
改めて感じる芳醇なウィスキーの香りと味、そしてヴォルフの唾液に含まれるアルファ特有のフェロモンが、舌先で混ざり合って甘美な蜜のように感じられる。
それらを貪るように味わい、エリアスの思考もとろとろに溶けて酔い痴れていく。
しばらくの間、夢中でキスを続けていると――。
ガシッ。
いきなり、強い力で腰を掴まれ、引き寄せられた。
「んっ!?」
驚く間もなく、重なっていた唇が角度を変え、さらに深く押し付けられた。
「ん、んんっー!?」
エリアスが懸命に動かしていた舌の動きなど子供騙しに思えるほど、激しく、巧みなヴォルフの舌が絡みつき、口腔内を蹂躙し始める。
逃げ場はない。
呼吸さえも奪うような、貪欲で、それでいてテクニカルなキスに、エリアスは酸素を失い、頭が真っ白になった。
(くるし、い……でも、気持ちいい……甘い……)
美味しい唾液と圧倒的な支配感に、エリアスは呆然としながらそのキスに酔いしれた。
「ぷ、はぁっ……!」
しばらくして、エリアスが完全に酸欠になりかけて身体から力が抜けた頃、ようやくヴォルフが唇を離して解放してくれた。
「はぁ、はぁ……っ」
肩で息をしながら、涙目でヴォルフを見る。
至近距離にあるそのアイスブルーの瞳は、眠気など微塵もなく、明らかな「欲」を浮かべてギラギラとエリアスを見つめていた。
「……途中で起きたんだがね」
ヴォルフはまだ息が整わないエリアスの唇や頬に、チュ、チュ、と啄むようなキスを繰り返しながら、低く囁いた。
「しばらく君の好きにさせていたら……あまりにも可愛くキスしてくるから、我慢できなくなってしまったよ」
「お、起きて……っ」
「ああ。全部、分かっていたよ」
エリアスはカッと顔を赤らめた。
指で弄っていたことも、自分から舌を入れて貪っていたことも、全て知られていたなんて。
「ご、ごめんなさい……どうしても、触りたくなってしまって……」
エリアスが恥ずかしさで消え入りそうになりながら謝ると、ヴォルフは至近距離でふっ、と妖艶に笑った。
「謝ることはない。……目覚めた時、愛しい妻に悪戯されていて、ものすごく興奮したよ」
「ひゃ……っ」
ヴォルフの瞳孔が開いているのが分かる。
「……責任は、取ってもらうよ?」
ヴォルフはエリアスの腰をさらに強く抱き寄せると、逃がさないとばかりに再び唇を塞いだ。
お酒の酔いと、ヴォルフの濃厚な甘い唾液に酔わされたエリアスは、くらくらと目が回るような快感の中で、ただ熱い愛撫を受け入れ続けた。
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