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第4章
永遠の所有
しおりを挟む「……休むために宿に入ったはずなのにな」
ヴォルフもそう思っているのか、それとも理性などとうに消し飛んでいるのか。
エリアスは溺れそうな意識の隅でうっすらとそんなことを考えながら、次第に熱と激しさを増していくキスに翻弄されていた。
そして、ついに我慢の限界を迎えたヴォルフが、エリアスの身体を軽々と抱き上げた。
数歩先の大きなベッドへ連れて行かれ、ふかふかのシーツの上に優しく寝かされる。
すぐにヴォルフが覆い被さり、逃げ場を塞ぐように影を落とした。
「……もう、駄目だ。君の匂いを嗅いで、唾液を味わうだけで……おかしくなりそうだ」
ヴォルフは切羽詰まった声でそう言うと、なるべく優しい手つきで、けれど抑えきれない興奮を指先に滲ませながら、エリアスの服に手をかけた。
ボタンが外され、一枚、また一枚と布が剥ぎ取られていく。
耳元に熱い吐息がかかる。
「……肌を確かめると、言ったろう?」
低く囁かれ、ゾクゾクと背筋が震えた。
そのまま、ついにエリアスは全裸にされてしまった。
今まであんなに何度も見られて、何もかもされ尽くした身体なのに、こんなにも長く離れていたせいか、まるで初めての夜みたいに恥ずかしくてたまらない。
「み、見ないでください……っ」
エリアスが顔を赤くして腕で身体を隠そうとすると、ヴォルフは目を細めた。
「エリアス……なんだか、初めてみたいで可愛いな。……でもほら、隠さないで。見ないと傷がないか分からないよ。しっかり見せて」
そう言い、ヴォルフは隠そうとしているエリアスの手を優しく、けれど強引に退けた。
ヴォルフの視線が、エリアスの身体を隅々まで舐めるように這う。
ただ観察されているだけなのに、その視線には明確な熱があり、エリアスはいやらしい気分になって身体が火照っていくのを感じた。
最後にセックスしたのはいつだったろうか。
記憶を辿ると……叙任式の前夜だ。
もう何ヶ月前だ?もはや分からないくらいに久しぶりだ。
エリアスの怪我の回復を待ち続け、ヴォルフはずっとキスや愛撫だけで耐えてきてくれた。
結婚式の夜、ついに少し踏み込んだことまでしたが、それ以上の結合は、焦るエリアスをヴォルフが「回復が最優先だから一緒に頑張ろう」と抱きしめて止めてくれたのを覚えている。
けれど、今は違う。
もう二度と会えないと思っていた愛する人に触れられて、我慢できるはずがない。
エリアスの身体は、結婚式の夜よりもさらに時間が経ち、医師のお墨付きをもらうほどに回復している。
……でも。
(……前のヒート期間から三ヶ月目の時、結局ヒートは来なかった)
それを、はっきりと思い出した。
エリアスはヴォルフの瞳を見つめ、震える唇を開いた。
「ヴォルフ……。家を出てから……私は、前のヒート期間から三ヶ月目をすでに迎えましたが……ヒートは、来ませんでした」
ヴォルフの手が止まることなく、愛おしげに肌を滑る。
「……その三ヶ月目から、もう少しでまた、もう一度『本来ヒート期間が来るはずの期間』が、来ます」
エリアスは逃げずに告げた。
もし、次も来なければ、半年間生理現象が止まったことになる。それは、機能喪失の可能性をより濃厚にする事実だ。
「その時……わ、私は……」
言いかけて、エリアスは一度言葉を飲み込み、息を吐いた。
そして、真っ直ぐにヴォルフを見つめ返した。
「……その時ヒートが来なくても、……私は、貴方の妻で居たいです」
はっきりと、そう言った。
それが、今のエリアスの答えだ。
オメガだから、ヴォルフの隣にいたいんじゃない。番だからという本能のためでも、義務のためでもない。
ヴォルフという人間を愛しているから、一緒にいたい。彼を一人にしたくない。そして自分も、もう二度と一人になりたくない。
ただ、離れたくないのだ。
ヴォルフは安心したように深く息を吐き出すと、エリアスの首筋に顔を埋め、脈打つ場所に口づけを落とした。
「……もちろんだよ」
ヴォルフの声が、震えるほどの愛着を持って響く。
「君は、一生……未来永劫、私のものだ。私の大切な妻だ。それは、君の身体がどうあろうと変わらない」
ヴォルフが顔を上げ、獲物を狙う獣のような、それでいて崇拝するような瞳でエリアスを射抜いた。
「……申し訳ないが、エリアスが離れようとしたとしても……もう、絶対に離さないよ」
「……んッ!」
そう宣言すると同時に、ヴォルフはエリアスの唇に噛み付くように、所有を示す激しいキスをした。
エリアスは腕を回し、その強引で愛おしい口づけを全て受け入れた。
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