銀色の商人と贋作の妻

真大(mahiro)

文字の大きさ
235 / 251
第4章

愛のゆりかご

しおりを挟む

安定期を過ぎ、体調も落ち着いてきたため、エリアスは文通を続けていたナンキンス夫人にも、ついに妊娠の報告をした。
すると、手紙を送ってすぐに、夫人の屋敷から熱烈なお祝いの手紙と共に、たくさんのベビー用品が贈られてきた。

中身は、おむつや肌触りの良いシーツ、そして妊婦であるエリアスが食べやすそうな旬の果物など、実用的な消耗品ばかりだ。

「さすが、ナンキンス夫人ですね……」

ベビー服やおもちゃといった好みが出る主要なものは、両親である本人たちが選びたいだろうという配慮なのだろう。その細やかな気遣いが、エリアスにはとてもありがたく、心に染みた。

そして、そのすぐあとに、ヨハンとジョセヌからもお祝いが届いた。
わざわざ早馬で届けられたその荷物を開けると、中から現れたのは、息を呑むほど美しい花籠だった。
色とりどりの花々は、どれも生命力に溢れ、日持ちするものばかりが選ばれている。きっと、二人がエリアスの体調と安産を願いながら、心を込めて作ってくれたのだろう。

ベッドサイドに飾ると、ふわりと懐かしい花の香りが広がり、まるで二人がそばで見守ってくれているような気持ちになる。
エリアスは胸がいっぱいになりながら、それぞれにお礼と、最近の近況を綴った手紙を送った。

一方、ヴォルフはというと、もうすぐ父親になる準備に大忙しだった。
お腹が大きくなっても着やすいゆったりとした服を調達したり、エリアスがその時々で食べられそうなものを探してきたりと、甲斐甲斐しく動き回っている。
さらに、ベビーベッドや哺乳瓶、産着といった重要なアイテム選びには、余念がない。

「素材はこちらのほうが肌に優しいな……いや、機能性ならこちらか」

カタログや実物を前に真剣な眼差しで吟味する姿は、敏腕商人と謳われた彼そのものだ。
愛する妻と子供が使うものだからこそ、商人としての目利きを最大限に活かし、最高品質のものを選び抜きたいのだろう。

また、アンナも最近は暇さえあれば、エリアスのために着心地の良い部屋着を縫ったり、生まれてくる子どもたちのために小さな靴下や帽子を編んでいたりする。

「奥様、見てください。今度はこんな可愛い色が手に入ったんですよ」

嬉しそうに見せてくれるアンナの笑顔を見るたびに、エリアスの心は温かくなる。
エリアスは、自分がみんなに大事にされ、深く愛されていることを毎日肌で感じることができて、本当に幸せだった。

かつて孤独だった自分が、こんなにも多くの愛に囲まれている。
エリアスは、ベッドに横たわりながら、日に日に大きく、重くなっていくお腹を優しく撫でた。

「……ふふ」

掌を通して、トク、トク、と力強い二つの命の鼓動が伝わってくる。
エリアスは、まだ見ぬ我が子たちに向かって、慈しむように語りかけた。

「……元気に出ておいで。ここは、貴方たちを愛してくれる人たちがたくさんいる世界だよ。だから……安心してね」

優しい声が、陽だまりのような部屋に溶けていく。
エリアスは満ち足りた笑顔で、愛の詰まったお腹を抱きしめた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

僕の、しあわせ辺境暮らし

  *  ゆるゆ
BL
雪のなか僕を、ひろってくれたのは、やさしい男の子でした。 ふたりの、しあわせな辺境暮らし、はじまります! ふたりの動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵もあがります YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

抑制剤の効かない薬師オメガは森に隠れる。最強騎士団長に見つかり、聖なるフェロモンで理性を溶かされ、国を捨てた逃避行の果てに番となる

水凪しおん
BL
「この香りを嗅いだ瞬間、俺の本能は二つに引き裂かれた」 人里離れた森で暮らす薬師のエリアルは、抑制剤が効かない特異体質のオメガ。彼から放たれるフェロモンは万病を癒やす聖なる力を持つが、同時に理性を失わせる劇薬でもあった。 ある日、流行り病の特効薬を求めて森を訪れた最強の騎士団長・ジークフリートに見つかってしまう。エリアルの香りに強烈に反応しながらも、鋼の理性で耐え抜くジークフリート。 「俺が、貴方の剣となり盾となる」 国を救うための道具として狙われるエリアルを守るため、最強の騎士は地位も名誉も投げ捨て、国を敵に回す逃避行へと旅立つ。 シリアスから始まり、最後は辺境での幸せなスローライフへ。一途な騎士と健気な薬師の、運命のBLファンタジー。

【完結】重ねた手

ivy
BL
とても短いお話です。

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *不定期連載です。

そばにいられるだけで十分だから僕の気持ちに気付かないでいて

千環
BL
大学生の先輩×後輩。両片想い。 本編完結済みで、番外編をのんびり更新します。

僕の事を嫌いな騎士の一途すぎる最愛は…

BL
記憶喪失の中目覚めると、知らない騎士の家で寝ていた。だけど騎士は受けを酷く嫌っているらしい。 騎士×???

今からレンタルアルファシステムを利用します

夜鳥すぱり
BL
大学2年の鳴水《なるみ》は、ずっと自分がオメガであることを隠して生きてきた。でも、年々つらくなる発情期にもう一人は耐えられない。恋愛対象は男性だし、男のアルファに会ってみたい。誰でも良いから、定期的に安全に話し相手をしてくれる人が欲しい。でもそんな都合のいい人いなくて、考えあぐねた結果たどり着いた、アプリ、レンタルアルファシステム。安全……だと思う、評価も星5で良いし。うん、じゃ、お問い合わせをしてみるか。なるみは、恐る恐るボタンを押すが───。 ◆完結済みです。ありがとうございました。 ◆表紙絵を花々緒さんが描いてくださりました。カッコいい雪夜君と、おどおど鳴水くんです。可愛すぎますね!

処理中です...