銀色の商人と贋作の妻

真大(mahiro)

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第4章

4つの瞳

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それからまたしばらくして、医師は「別室で待機しておりますので、何か異変を感じましたらすぐにお呼びください」と言い残し、静かに退室していった。

入れ替わりで、赤ちゃんのお世話をフォローしてくれるベテランの看護師が入ってくる。
時間が経ち、麻酔のぼんやりとした感覚が少し抜けてきたのか、エリアスの意識も先程よりははっきりとしてきていた。
看護師は手際良く二人の赤ちゃんを柔らかいおくるみに包むと、器用に二人同時に抱き上げた。

「さあ、抱っこしてあげてください」

看護師はまず立っているヴォルフに視線を向けたが、ヴォルフは首を横に振った。

「いや……まずは、エリアスに抱かせてあげてほしい」

ヴォルフはエリアスの元へ歩み寄ると、負担がかからないようにゆっくりと抱き起こし、身体を支えるように背中や腰にふかふかのクッションを挟み込んだ。

「大丈夫か?苦しくないかい?」
「はい……ありがとう、ヴォルフ」

エリアスの体勢が安定したのを確認してから、看護師がそっと二人の赤ちゃんをエリアスの腕の中に下ろしてくれた。

生まれたばかりの双子はとても小さく、華奢なエリアスの腕の中でも、二人同時にすっぽりと収まった。
その重みと温かさを感じた瞬間、エリアスの視界が滲んだ。

「あ……」

腕の中の二人が、ふにゃ、とあくびをするように顔を歪め、そしてふと、ゆっくりと目を開けた。

「……!」

銀髪の女の子は、エリアスと同じ、温かみのあるセピア色の瞳。
黒髪の男の子は、ヴォルフと同じ、透き通るようなアイスブルーの瞳をしていた。

「ヴォルフ……ふふ、それぞれ私たちと、お揃いですね……」

エリアスは愛おしそうに呟きながら、ぼろぼろと涙をこぼした。
嬉しくて、先ほどまでの死ぬかもしれないと覚悟した怖かった気持ちも蘇って、いろんな感情で心がぐちゃぐちゃになる。

だが、一番強く胸を占めていたのは、我が子を無事に抱っこできたこと。
そして、生きて、愛する人の元に帰って来れたことへの圧倒的な喜びだった。

ヴォルフが、震える手でエリアスの髪を優しく撫でる。
そのアイスブルーの瞳には、エリアスと同じくらい、大粒の涙が光っていた。

「エリアス……本当に、ありがとう……」

ヴォルフは声を震わせた。

「信じていたよ。君なら、必ず帰ってきてくれると」
「……はい」

エリアスは微笑み、名残惜しそうに、けれど満足げに腕の中の宝物をヴォルフへと差し出した。

「ヴォルフ……抱いてあげてください。貴方の、子どもたちです」

ヴォルフは恐る恐る手を伸ばした。
エリアスとは対照的な太く逞しい腕で、壊れ物を扱うように慎重に、震えながら可愛い我が子を初めてその腕に抱いた。

ヴォルフの大きな腕の中にすっぽりと包まれた二人は、おとなしく、泣いたりもせずに、ふにゃふにゃと安心したように笑っている。

「……あぁ……」

あまりに小さく、可愛くて、愛しくて。
ヴォルフは顔をくしゃくしゃに歪め、さらに涙を流して泣いてしまった。

あの冷静沈着で完璧なヴォルフが、ただの父親として、愛に打ち震えている。
それを、エリアスはベッドの上から微笑ましく見つめた。

あまりにも幸せで、光に満ちていて。
エリアスは胸が詰まりそうで、ただ静かに、夫と子供たちの姿を目に焼き付けた。
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