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番外編
悩める弟5
しおりを挟む一旦家を飛び出してから、ヨハンは興奮冷めやらぬ身体と、混乱した思考をどうすることもできず、無我夢中で走ってきてしまった道を戻り、ジョセヌに助けを求めて花屋の裏口から転がり込んだ。
「はぁ、はぁ……っ!」
「おや、ヨハン?どうしたんだい、そんなに慌てて」
すでに店じまいを終え、明日の準備をしていたジョセヌが、息を切らして飛び込んできたヨハンを見て目を丸くした。
ヨハンは靴も履かずに靴下だけで走ってきたようで、髪も服も乱れている。
「……っ、……おばあちゃん……」
ヨハンは泣きそうな顔で、震える唇を開いた。
「カイのこと……僕の部屋に、置いてきちゃった……。ど、どうしよ……」
困惑したまま、茹で上がったように真っ赤な顔でそれだけを伝えると、ジョセヌは事態を察したように、ふふと優しく笑った。
「そうかい。……ここで待ってなさい」
ジョセヌは手拭いで手を拭くと、ヨハンを店の中に残し、一旦外へと出て行った。
ヨハンが心臓をバクバクさせながら待っていると、しばらくしてジョセヌが戻ってきた。
「……カイには、家に帰ってもらったよ」
ジョセヌは苦笑しながら報告した。
「ふふ、あの子も凄く慌てていたわよ。『ヨハンが急に出て行っちゃったんです、俺、何か悪いことしたかな』って、青い顔をしてね」
「うあぁぁ……」
ヨハンはそれを聞いて、しゃがみ込んで頭を抱えた。
「どうしよ……おばあちゃん……僕、嫌われたかな……変だと思われたかな……」
パニック状態で細かく事情を相談できないままのヨハンに、ジョセヌは何もかも分かったような顔で近づき、その背中をぽんぽんと撫でてくれた。
「大丈夫だよ。あの子の顔を見れば、あんたを嫌ったりしていないことくらい分かるさ」
「……ほんと?」
「ああ。……でも、あんた自身が自分の身体や気持ちのことで困っているなら……エリアスに相談したらどうだい?」
ジョセヌは的確なアドバイスをくれた。
「兄さんに……」
「そうしな。……明日は一日、店をお休みしていいよ。元々はこの店は私一人でやってたんだ。一日くらい大丈夫だよ」
「……うん、ありがとう……」
ジョセヌにそう言われて、少し落ち着きを取り戻したヨハンは、深くお礼を言い、トボトボと自分の部屋へと戻った。
恐る恐る扉を開けると、ジョセヌが言った通り、もう部屋にはカイはいなかった。
けれど、部屋の空気はさっきとはまるで違っていた。
「……っ」
ベッドにそのままダイブして寝転ぶと、シーツや枕に、カイの匂いが色濃く残っている。
日向のような、男らしい匂い。
「……カイ……」
カイの匂いはすごく落ち着くのに、嗅いでいると身体の奥が疼き、どこかむずむずする。
さっきの快感が蘇り、また熱くなりそうだ。
(やっぱり……僕は変態なのかもしれない……)
「ううう……」
枕に顔を埋めて頭を悩ませたまま、ヨハンはガバッと起き上がった。
このままでは埒が明かない。
とりあえず、唯一の相談相手である兄に助けを求めよう。
ヨハンは机に向かい、震える手で急いでエリアスへの手紙を書き始めた。
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