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第1章
最後の夜の贖罪⚠️
しおりを挟むついに、卒業式が明日に迫った日がやってきた。
正式な卒業の日まではあと三ヶ月あるが、全てのカリキュラムが終了し、これから生徒たちはそれぞれの将来に向けた準備期間に入るため、式典自体は前倒しで行われるのだ。
その日、最後の授業を終え、名残惜しそうなカイエンと夕食を共にしてから部屋へ戻ると、予想外の光景が待っていた。
すでに、レオナルドが帰宅していたのだ。
いつもなら、彼はもっと遅い時間に、ユリウスが就寝しようとするタイミングを見計らったかのように帰ってきて、事務的な行為だけをして眠るのが常だった。
それなのに、その日だけは久しぶりに、まだ就寝時間には早い時刻に彼が部屋にいた。
ドクン、とユリウスの心臓が不吉に跳ねた。
顔には動揺を出さないよう努めながら、ユリウスは無言で自分のベッドに腰を下ろした。
ユリウスは心に決めていた。明日、卒業式の日に、自分からこの関係を終わらせると宣言することを。
だから、こうして不意にゆっくりと話ができる時間が出来てしまったことに、ひどく狼狽していた。
(……今、レオから切り出されたらどうしよう)
もし、彼が口を開いてこう言ったら?
『明日が卒業式だな。俺たちの関係も今日までだ。俺のフェロモンはしっかり役に立ったよな?これで終わりだ、卒業後もしっかり国に尽くそう』
そんなふうに、爽やかに、そして残酷に告げられてしまったら。
ユリウスの心は、音を立てて壊れてしまうだろう。
今までの関係の中にはっきりと、レオナルドの個人的な感情などなく、ただの事務的な協力だったと明言されてしまったら。
ユリウスが、彼のふとした視線や優しさから「もしかしたら」と見出していた淡い期待さえも、全て勘違いだったと線引きされてしまったら、もう二度と立ち直れない。
その言葉を聞く前に、自分から明日終わらせるつもりなのに。
怖い。何も言わないでくれ。
かつて「氷の女王様」と揶揄され、誰も寄せ付けなかった孤高のユリウスとは全く別の、女々しくて臆病な部分が脳を支配していた。
沈黙を破り、レオナルドがついに口を開いた。
「……なぁ、ユーリ。そっちに行ってもいいか?」
「…………、あぁ」
ユリウスは強張った声で、それだけを返すのが精一杯だった。
すると、レオナルドはゆっくりと近づいてきて、抗う間もなくユリウスの肩を押し、ベッドへと仰向けに倒した。
「……んッ」
驚いている暇もなかった。覆いかぶさってきたレオナルドが、深い口づけを落としてくる。
指を絡められ、逃げ場を塞がれる。ちゅ、ちゅ、と甘い水音が部屋に響く。
なんだか、いつもよりもさらに優しくて、丁寧だ。まるで壊れ物を慈しむような愛撫に、身体が熱くなる。
唇が離れた瞬間に、ユリウスは切なさに耐えきれずその名を呼んだ。
「……レオ?」
「…………ユーリ」
レオナルドが耳元で、甘く名前を囁く。
ただそれだけで感じてしまう。ゾクゾクと背筋に快感が走り、あられもない声が漏れた。
レオナルドの手が、ユリウスの服を次々と脱がしていく。
いつもなら下半身だけなのに、今夜は違った。シャツのボタンが弾かれ、肌着も剥ぎ取られ、あっという間に全裸にされてしまう。
「は、恥ずかしい……っ」
ユリウスが腕で身体を隠そうとするが、レオナルドはそれを優しく押さえ込み、強引に足を開かせた。
そして、顔を埋めるようにして、ユリウスの昂った部分を口いっぱいに咥え込んだ。
「ぁ、や、ぁあ……!」
舐められたことは何度かあった。
だが、こんなにも深く、喉の奥まで使って扱かれたことはない。
温かく湿った口腔内の刺激と、吸い上げられる強烈な快感に、ユリウスは獣のような声を上げてのけ反った。
耐えられるはずもなく、あっという間に口の中へと射精してしまう。
だが、終わりではなかった。
絶頂の余韻で震えている間に、身体を反転させられ、四つん這いにされる。
そして、レオナルドの指が――今までの「処置」行為では一度も触れられたことのない、ユリウスの秘所、後孔に触れた。
くちゅり。
卑猥な音がした。
オメガとして、番の対象となるアルファに触れられたことで無意識に分泌されていた愛液が、粘つく音を立てたのだ。
濡れている感覚はいつもあったが、直接触れられたのは初めてで、そのいやらしい音にユリウスは羞恥で耳を塞ぎたくなる。
だが、その暇も与えられなかった。
すでにとろとろに柔らかくなっている蕾に、レオナルドの太い指が容赦なく挿入され、的確に弱点を攻め立てた。
「ひ、あ、あぁっ!や、だ、ぁっ!」
出したことがない嬌声が、勝手に喉から迸る。
自分の声だとは思えないくらいに甘くて、高い声。
怖いくらいに感じてしまう。
ユリウスはその快感の渦中で気づいた。今までは「アルファフェロモンを摂取するため」という名目の行為だった。
けれど今夜は違う。これは、レオナルドがユリウスの身体を味わい、貪り尽くすためのセックスだ。
彼の瞳は理性を失っているわけでは無さそうなのに、なぜ今夜に限ってここまで踏み込んでくるのか。
その答えが出ないまま、体内の指が二本に増やされ、さらに奥深くの敏感な場所を抉るように攻められた。
「あッ、あっ、……イッ、ァ!」
四つん這いのまま、ユリウスの身体がビク! と大きく跳ねた。
射精ではない。もっと大量の、水のような何かが勢いよく噴き出した。
「は、ぁ、あっ……?」
快感の許容量を超え、ユリウスは自分の意思とは関係なく潮を吹いてしまったのだ。
「…………潮吹きしたんだな、ユーリ。気持ちいいか?」
レオナルドの声が耳元で低く、甘く囁く。
潮吹きの意味なんて、今のユリウスには分からない。ただ、快楽に脳を焼かれ、素直に答えることしかできなかった。
「……き、気持ちいい……っ、レオ、も、もっとして……」
言ってしまった。
ヒート中でもないのに。ただ、ユリウスはレオナルドに与えられる快感に翻弄されて、一人だけ理性を失っていた。
そう、一人きりで。
レオナルドはユリウスを好きなわけじゃない。これは卒業前の最後の奉仕か、気まぐれだ。
それなのに自分だけが愛し合っているような気になって、浅ましく快楽を貪っている。
「……ッ、ぁあ……」
四つん這いのまま、指で執拗に攻め立てられ、中イキを繰り返しながら、その惨めな事実にユリウスは静かに涙を流した。
そして、意識が焼き切れて気絶するまで、それは続けられた。
意識を完全に手放す直前。
レオナルドの唇が、震えるユリウスの耳元に触れ、一言だけ囁いた。
「…………すまない」
と。
それだけ。
愛の言葉でも、さよならでもなく、謝罪。
その言葉だけが頭に残ったまま、ユリウスはガクンと首を垂れ、完全に意識を闇の中へと手放した。
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