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第2章
汚れた人形⚠️
しおりを挟むそれから数日経ったある日の夜。
苛立ちを隠せない足取りで、ルシエルがユリウスの部屋へとやってきた。
ルシエルは最近、レオナルドという巨大な脅威を前にして、明らかな焦りを抱えていた。
公の場では虚勢を張っているが、ユリウスという「所有物」の前では、その余裕のなさを隠そうともしない。
自身の揺らぐ自尊心を埋めるために、より強く、より惨めな形でユリウスを支配しようとするのだ。
その夜、ユリウスは全裸にされ、部屋の中央に立たされた。
ルシエルはソファに深々と腰掛け、酒を煽りながら、曝け出されたユリウスの身体を舐めるようにねっとりと見つめた。
「……いい眺めだ。ユリウス」
裸にされると、ユリウスの神経は張り詰める。
先日、レオナルドと再会したことで、オメガとしての本能が呼び覚まされかけている。
もし今、この緊張感の中でヒートが誘発されたら。
あるいは、ヒートまでいかずとも、アルファにはあり得ない愛液が後孔から分泌されたら。
それがきっかけで、隠し通してきたオメガの性が露見してしまうのではないかという恐怖が、常に付きまとっていた。
だが、幸か不幸か、ユリウスの身体はルシエルの視線や接触に対して、オメガとしての本能を見せることはなかった。
ルシエルの手が肌を這い、弄んでも、あの日レオナルドの指が触れた時のような、熱く濡れる感覚は一切ない。
身体は冷たく乾いたままだ。
確信まではいかないが、やはり自分の身体はレオナルドにしか反応しないようできているらしい。
ルシエルは冷たいローションを手に取り、ユリウスの秘所に塗りたくると、立ったままの体勢で、ユリウスの自身を何度も手でくちゅくちゅと扱き上げた。
「……っ、あ……」
快感というよりは、摩擦と刺激による強制的な排泄行為に近い。
膝が震え、立っていられなくなりそうになっても、ルシエルは冷酷に「立て」と命じ、行為を続けた。
「……ッ、ぁ……ぐ、」
ユリウスが辛さに耐えかねて泣きそうになると、ルシエルは「可愛い」と歪んだ笑みを浮かべ、さらに酷く、乱暴に攻め立てた。
五回。
短時間のうちに五回も強制的に射精させられ、もう出るものは何も無かった。
精も根も尽き果て、ガクガクと痙攣するユリウスを見て、ルシエルはようやく満足したように息を吐いた。
「次は俺を慰めろ」
そう命じられ、ユリウスは崩れ落ちるようにその場に跪いた。
目の前には、サディスティックな行為によって限界まで昂り、バキバキに硬直したルシエルの欲望があった。
全裸のまま、床に這いつくばり、それを口に含む。
ルシエルは容赦なくユリウスの頭を鷲掴みにし、喉の奥深くまで、限界ギリギリを攻めるように腰を突き上げてきた。
「ぐ、ぅ……っ、ぉ……!」
呼吸ができず、気絶しそうになる。
涙で滲む視界の中で、自分はルシエルの「性の道具」なのだと、改めて骨の髄まで分からされる。
だが、こんなふうに物として扱われることにも、この十年で慣れてしまった自分がいた。
そして、意識が飛びそうになるギリギリの中で、喉の奥に熱い塊が放たれた。
ビクリと喉が痙攣するが、吐き出すことは許されない。濃厚で不快な精液を、いつも通り、薬を飲むようにごくりと飲み込んだ。
「……ッ、けほ、……」
荒い呼吸を整え、ユリウスは涙に濡れた顔を上げ、震える唇で微笑を作った。
「……美味しい、です……ルシエル様……ッ、ありがとう、ございます……」
完璧な愛玩具としての言葉。
それを聞くと、ルシエルは心から満足した様子で、「いい子だ」とユリウスの頭を撫でた。
こんな非道な扱いに慣れてしまっている自分。
こんな汚らわしい演技が板についてしまっている自分。
(ああ……やはり)
日中考えた通りだ。レオナルドが危惧した通りだ。
自分は、なんて浅ましく、醜悪な存在なのだろう。
昨夜、レオナルドはユリウスに触れることすら嫌だったに違いない。
用件だけを伝え、一秒でも早くこの汚れた空気から立ち去りたかったのだろう。
そう考えるだけで、今飲み込んだものと一緒に胃の中身をすべて吐き出してしまいそうなくらいに辛くて、虚しくて、悲しかった。
それでも。
十年かけて皮膚と同化してしまった「仮面」は、決して剥がれることはない。
ユリウスはルシエルに対し、嫌悪も絶望も、何の感情も見せることなく、ただ美しく壊れた人形のように微笑み続けていた。
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