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第2章
死という名誉
しおりを挟むユリウスが目覚めた時、そこは温かいレオナルドの腕の中だった。
隣で眠る彼は、昨夜のあまりに激しすぎる行為に煽られ、気絶に近い形で意識を落としたのか、泥のように深く眠り、ぐったりとしている。
わずかに身じろぎすると、ユリウスの身体中は悲鳴を上げた。
ルシエルに連日貪られ、すでにボロボロだった身体を、ヒート状態のまま、強烈なフェロモンに煽られて獣のようにレオナルドと交わった代償だ。
腰も、あの場所も、感覚が麻痺するほどに酷使されていた。
ユリウスは、あまりにも幸せで……けれど、幸せだけが理由ではない涙を、静かに流した。
昨夜、レオナルドは先にキスをして、「全て任せて欲しい」と囁いた。
その真意は未だに分からない。
けれどその後、ユリウスが懇願したことにより、その願いを叶えるためにレオナルドはフェロモンに理性を焼かれ、煽られる形で抱いてくれた。
レオナルドに、望まぬことをさせてしまった。
その罪の意識は、愛する人と結ばれた幸せな気持ちを凌駕し、毒のように心を蝕んだ。
(……浅ましい)
しかも、その手で殺して欲しいなんてことまで願いながら、快楽に溺れてイキ続けていたなんて。
自己嫌悪で胸が潰れそうになる。
だが、ユリウスはそれでも、昨夜の全てを美しい思い出として棺桶に持っていくべく、その先を考えることをやめた。
このあと目覚めたレオナルドに、汚らわしいとベッドから蹴り落とされたとしても、それを受け入れられるくらいには、今の心は満たされていた。
冷静な頭で、時間を計算する。
ルシエルが帰還するのは三日目、つまり明日の夜には帰ってくる。
レオナルドの計画の全貌は分からないが、ルシエルが戻り、ユリウスの不在に気づいて騒ぎになる前に、カイエンを奪還した方がいいのは確かだった。
(……目覚めたら、私をどう『使う』つもりなのかを聞こう)
具体的な指示を今言われていないということは、もしかしたら……ユリウスが、そのまま死んでしまうような計画なのかもしれないな、とふと思った。
例えば、敵の注意を引きつけるための特攻や、盾としての役割。生還を前提としない駒としての動き。
(……それなら、良い)
カイエンを無事奪還した後、ルシエルに加担した裏切り者として、第二王子派の人間として惨めに処刑されるよりも。
カイエンを奪還する途中で、彼らを守って死ぬ方が、ユリウスにとっては遥かに本望だ。
それは、裏切り者のユリウスに与えられる、最高の救いであり名誉だ。
レオナルドは、その名誉をユリウスにくれるつもりなのだろうか。
かつての友に対する、それが最後の情けなのだろうか。
いまだ規則正しい寝息を立て、深い眠りに落ちているレオナルドの逞しい腕の中で。
ユリウスは、いずれにしても自分の身にすぐ訪れるであろう「死」という終わりの瞬間を想像し、安らかな気持ちで時を待った。
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