それではまた、どこかでお会いしましょう。

スイ

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 私と湊斗はそれから急速に仲良くなりました。

 驚いたのは、チューボーが私の事を認識していたことです。勿論、コメントも残さない一視聴者の私を知ることは出来ません。彼が認識していたのは、引退動画に残した私のメッセージでした。

「大げさな事を書く人がいるなぁ、って。人生だもん。でも、それがすごい嬉しかった」

 いつの日か、湊斗に質問したことがあります。どうして実況動画を上げようと思ったのかと。

 湊斗は、

「やっぱ、知ってほしいからかな? ほら、昔ってめっちゃ分厚い攻略本出てたじゃん? 俺、昔、ゲームやるよりああいうの読む方が好きでさ、中古で攻略本買ってからゲームやってたりしてたんだよね。そしたらストーリーとか、どこに何があるとか、そういうの全部やり尽くさないと気が済まなくて。で、ネットとか見ると案外そんなやりこまない人の方が多いってのに気付いて、勿体ないって思ったんだよね。こんなに強い武器があるのに、ストーリーにこんな真相があるのに、とか。そういうのを、知ってもらいたいってのが一番大きかったかな」

 中坊らしいでしょ? と湊斗は言いました。私は、チューボーらしいね、と言いました。

 私たちは休みの日でも連絡を取り合うようになりました。仕事帰りにご飯を食べに行ったり、買い物に行ったりしました。会社では相変わらず『白川さん』『橘さん』と呼んでいましたが、外で会うと『湊斗』『澪』と呼び合うようになりました。

 告白は、湊斗からしてくれました。ロマンチックな物では無く、帰り際に駅のホームで「そろそろ付き合わない?」と言われました。まるで明日の予定を確認するようで、湊斗らしいと思いました。私たちは正式に恋人同士になり、お互いの合鍵を交換して週末は家を行き来するようになりました。

 その時期は、私の人生の中で最も幸福な日々でした。

 週末はどちらかの家に行きます。私が湊斗の家に行くときはマックとかケンタッキーとか、そういうファーストフードを買い込んでいきました。湊斗が私の家に来るときはスイッチとか、時にPS4を持って来ました。その内私はPS5を買って、それに影響されて湊斗もPS5を買っていました。

 どちらの家に行っても、やることは決まっています。ご飯を食べながらゲームをするのです。私と一緒にやるときもありましたが、私はどちらかと言うと、湊斗がゲームしているところを見るのが好きでした。

 特にホラーゲーム。私がニコ動で見ていた時代ですらリアルだと思っていたのに、この時のゲームはそれ以上にリアルになっていました。特にバイオ7は最初から最後まで本当に本当に怖くて、湊斗もより臨場感が出るからと部屋を暗くしてやる物だから、何度も抱きついてプレイを邪魔してしまいました。

 そんな私を湊斗は鬱陶しがる事もなく、笑っていました。

「また実況しないの?」

 いつの日か、そう訊ねると、湊斗は、

「今は忙しいから。それに、もうニコ動で実況してたのは大分昔だし、今更やっても誰も見ないよ」
「YouTubeでやったらいいよ。それに、湊斗は声がすごくいいから、絶対ファンがつくと思う」
「ついて欲しいの?」

 そう言われて私は黙り込んでしまいます。そしたら湊斗は頭をくしゃくしゃと掻いて、抱きしめてくれました。

 湊斗とのセックスは、とても心地のいい物でした。私はきっと一生誰の物も受け入れることが出来ないと思っていたけれど、そういう雰囲気の時、湊斗が私に触れると、それだけで頭がぽーっと温かくなって、湊斗が欲しくなりました。初めて裸を晒し、恥ずかしくて死んでしまいたい私を、湊斗は優しく抱いてくれました。

 だけど、湊斗のが私に入ってきて、中で熱く固い物を感じると、その度にウーロン茶のおしっこをする赤ちゃんが頭に浮かんでいました。体が快感を感じる中、頭の端っこで赤ちゃんが泣いています。胆汁が流れなくて、ビタミンが取れず、今すぐにでも脳の血管が破裂しそうな、かわいそうな子供。

『子供なんて産まなければ良かった』

 湊斗の精液がコンドームに吐き出されて、私の中でゆっくり萎んでいくのを感じながら、私はほっとします。私にとってセックスは、湊斗との絆を確かめる物であって、子供を作るための物にはなり得ませんでした。

 その時の私と湊斗はまだ二十代で、少なくてもその時は、湊斗もそう考えていたと思います。

 :::

 付き合って一年経っても、私は湊斗に病気のことを言い出せずにいました。きっと湊斗なら受け入れてくれる、と思う反面、病気の事を告げたら、それっきりになってしまいそうな気がしていました。私は胸の奥に罪悪感を抱えながら、それでも湊斗との幸せを噛みしめていました。
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