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4-1.如月さんの秘め事について
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「じゃ、僕はそろそろ戻るから。また何かあったら連絡して。明日からよろしくね」
私は頭を下げて「ありがとうございました」と言った。彼は最後に笑顔と共に手を振って、扉をしめる。階段が降りる音が遠ざかり、窓から本館へ歩いていく姿を見るまで、私は直立のままだった。
ふぅ、と息を吐き出して肩の力を抜く。
あまり緊張する方ではないはずだが、彼の無邪気な笑顔を見ているとなんだか気を張ってしまう。冷たい女だと思われていないだろうか、つまらない人間だと愛想をつかされていないだろか。
私はふとベッドの上に視線を向ける。彼が運んでくれたメイド服がそこに置かれている。まるで中の人がしぼんでいなくなったみたいに思えた。
誰もいないとわかっているのに部屋の中を見渡す。窓を閉め、カーテンを閉じる。太陽の光はカーテンを透過して、淡く部屋を照らしてくれる。
薄い光の中でティシャツとジーンズを脱ぐ。古い姿見に、キャミソールとショーツだけになった自分がいる。
ベッドに腰掛け、メイド服からハンガーを外す。面接で見たときは気づかなかったが、エプロンドレスやワンピースにはところどころフリルがあしらわれていて、きっとこれが彼の言う日本の影響を受けた部分なのだろう。ビクトリア朝風のクラシカルメイド服、っていう感じだろうか。
私は黒のワンピースを取り上げ、背中のボタンを外して頭から被るように着る。胸元はきつく、腰回りは少しブカブカだ。だけど着ていて苦になるというほどではない。
エプロンドレスを着ると一気に華やかさがました。後ろエプロンの紐を結び、左右振り向いて鏡の中の自分におかしいところがないか確認する。彼が言っていた通り、軽くて動きやすさは申し分ない。その分素材に厚みがないので寒い季節は着るのが厳しいかもしれない。ま、その時はその時考えればいい。
トイレはうまくできるだろうか。
ロングスカートを捲し上げて、ベッドに座ってみる。できないことはないが、している間はずっと裾を握っていなければいけない。汚さないよう、いろいろ気をつけなければ。そう考えながら体を倒して、ベッドに寝転がる。足は曲げてベッドの縁から下に垂らしている。黒くくすんだ天井をじっと見つめる。
不思議と彼の顔がそこに浮かんだ。
会ったときから変わった人だと思った。あまり年も変わらないのに苦労していそうというか、だけど実際話してみるとそんな気負いを感じさせない。見た目の印象と話したときの印象のギャップ、それにあまりに自然な笑顔が頭にこびりついて離れない。この感情をどうやって処理すればいいのか。
知らず知らず、指先がめくれ上がったスカートの中、足の付け根へと伸びていく。目を閉じる。風の音と自分の呼吸の音、そして部屋を出ていった時の彼の笑顔を思い出す。
私は頭を下げて「ありがとうございました」と言った。彼は最後に笑顔と共に手を振って、扉をしめる。階段が降りる音が遠ざかり、窓から本館へ歩いていく姿を見るまで、私は直立のままだった。
ふぅ、と息を吐き出して肩の力を抜く。
あまり緊張する方ではないはずだが、彼の無邪気な笑顔を見ているとなんだか気を張ってしまう。冷たい女だと思われていないだろうか、つまらない人間だと愛想をつかされていないだろか。
私はふとベッドの上に視線を向ける。彼が運んでくれたメイド服がそこに置かれている。まるで中の人がしぼんでいなくなったみたいに思えた。
誰もいないとわかっているのに部屋の中を見渡す。窓を閉め、カーテンを閉じる。太陽の光はカーテンを透過して、淡く部屋を照らしてくれる。
薄い光の中でティシャツとジーンズを脱ぐ。古い姿見に、キャミソールとショーツだけになった自分がいる。
ベッドに腰掛け、メイド服からハンガーを外す。面接で見たときは気づかなかったが、エプロンドレスやワンピースにはところどころフリルがあしらわれていて、きっとこれが彼の言う日本の影響を受けた部分なのだろう。ビクトリア朝風のクラシカルメイド服、っていう感じだろうか。
私は黒のワンピースを取り上げ、背中のボタンを外して頭から被るように着る。胸元はきつく、腰回りは少しブカブカだ。だけど着ていて苦になるというほどではない。
エプロンドレスを着ると一気に華やかさがました。後ろエプロンの紐を結び、左右振り向いて鏡の中の自分におかしいところがないか確認する。彼が言っていた通り、軽くて動きやすさは申し分ない。その分素材に厚みがないので寒い季節は着るのが厳しいかもしれない。ま、その時はその時考えればいい。
トイレはうまくできるだろうか。
ロングスカートを捲し上げて、ベッドに座ってみる。できないことはないが、している間はずっと裾を握っていなければいけない。汚さないよう、いろいろ気をつけなければ。そう考えながら体を倒して、ベッドに寝転がる。足は曲げてベッドの縁から下に垂らしている。黒くくすんだ天井をじっと見つめる。
不思議と彼の顔がそこに浮かんだ。
会ったときから変わった人だと思った。あまり年も変わらないのに苦労していそうというか、だけど実際話してみるとそんな気負いを感じさせない。見た目の印象と話したときの印象のギャップ、それにあまりに自然な笑顔が頭にこびりついて離れない。この感情をどうやって処理すればいいのか。
知らず知らず、指先がめくれ上がったスカートの中、足の付け根へと伸びていく。目を閉じる。風の音と自分の呼吸の音、そして部屋を出ていった時の彼の笑顔を思い出す。
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