溺れ 乱れ 蜜地獄

璃鵺〜RIYA〜

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溺れ 乱れ 蜜地獄

溺れ 乱れ 蜜地獄 3



「・・・今日・・・泊まってけば・・・」

聞こえるか聞こえないかの、小さな声でボソボソと緋音さんが言った。

出会ってから8年が経って、初めてキスをしてから3年が経っていた頃だった。

緋音さんの家にほぼ毎日家政婦状態で通い続け、家事が一切できないし、する時間もない緋音さんに変わって、オレは全ての家事をこなすようになっていた。

代わりに自分の家はほとんど寝るだけの家になっていたので、家事がほぼ必要なかったし、オレの私物は少しずつ緋音家に移動していた。

そんな状況でも、泊まることはできなかったので、夜遅くて電車がなくてもタクシーで帰ったりしていた。

泊まらせてくれない理由はたった1つ。

絶対に確実に襲うから。
キスやハグなんかじゃ抑えられないことを、オレもわかっていた。
緋音さんもわかっているから、絶対に泊まらせてくれなかった。

そんな緋音さんが、泊まってけばって・・・泊まっていいって・・・それってそれはそういうことだよね?!

オレが今まで空想して、妄想して、夢にも見た、ありとあらゆる事を、してもいいってこと・・・。

目の前には緋音さんの体を考えた、和食中心の夕飯が並んでいる。

カレイの煮付け、小松菜のおひたしシラス和え、出汁巻き卵、根菜たっぷりのお味噌汁、玄米ご飯。
体型維持のため、夜はあまりお肉を食べない人なので、自然と和食中心になる。

ちゃんと帰ってくる時間を考えて作ったので、全部出来たてで、白い湯気を立てている。

オレはとりあえずお箸を持って両手の親指で挟みこむと、

「・・・いただきます」

と言ってお茶碗を手に取った。
緋音さんも少し慌てたようにいただきますをして、同じようにお茶碗を持って、食事を開始する。

しばらく無言で食事を進める。

思考が止まっていた。緋音さんの言葉を、何度も何度も、咀嚼(そしゃく)して飲み込んで、吐き戻してはまた咀嚼して・・・。

泊まってもいい=オレとセックスしてもいい

に思考が流れた瞬間。

「・・・ゲホッ・・・ゴホッ・・・!!」

口の中の食べ物が、気管の方へ流れていた。

「大丈夫か?!」

緋音さんがびっくりして、慌ててオレの後ろに回って背中をさすってくれる。
オレは慌てて、いつも用意しているお茶を飲み干した。

「珀英、大丈夫か?」
「はあ・・・はあ・・・大丈夫です・・・ってか、緋音さん・・・」
「ん?」
「本気ですか?」

呼吸が整ったので、オレはまだ背中をさすってくれている緋音さんを、見上げた。

むせながら見上げると、緋音さんはきょとんと目を丸くしてオレを見ていたが、オレが何を言いたいのかわかったらしく、瞬間的に顔を真っ赤にさせた。

「ちが・・・っじゃなくて・・・違くないけど違くて・・・だから・・・その・・・知らない!!」

緋音さんは顔を真っ赤にしたまま、オレから離れると向かいの自分の席に座り直す。
そして、オレを無視してもりもりと夕飯を食べ始める。

『違くないけど』ってことは、やっぱり、もしかしてもしかする?!

オレは心臓がドキドキして、めっちゃ早くて逆に止まりそうになりながら、どうしたらいいのかわからなくて、緋音さんにならって夕飯をかきこむ。

だもんだから、すぐに二人とも食べ終わってしまって、この後どうしたらいいのか、今までどうしてたのかわからなくなってしまって。

とりあえず食器を洗って、ゆっくりと食後のお茶なんか飲みながら、いつもなら緋音さんに明日のスケジュール確認して、朝食の準備をして帰るんだけど、今日は泊まるわけだし。

なら朝食は明日の朝起きてからでいいわけで。
スケジュールは、まあ聞いたほうがいいか。そうだな聞いたほうがいいな。

「・・・緋音さんっ!」
「ぇ・・・な、何だよ?!」

お互いに顔を見ることができなくて、テーブルに座って顔を伏せたまま、湯呑みを両手で握りしめていた。

「明日のっ、スケジュールぅを」
「あああ・・・明日は・・・何もない」
「え?オフですか?」

緋音さんが小さくコクリと頷いた。

耳まで真っ赤にして、絶対にオレに顔をみられないように伏せて、残り少ないお茶を飲もうと、両手で湯呑みを持って口元へ持っていく。

ああ、可愛い。ヤバイ、可愛い。

語彙力のない最近の若者並みに、ヤバイと可愛いしか出てこない。
あとは何て言うんだ?色っぽい?尊い?エロイ?

何にせよ、緋音さんの魅力を100%伝えることも、読み解くこともできない。
どんな言葉も足りない。

桜色の頬と、赤い口唇と、潤んだ漆黒の瞳と、整った眉毛と、長く量の多い睫毛と、高く通った鼻筋と、白くほっそりした首と、流れる鎖骨と・・・

全てが、完璧だった。

オレにとっては、完璧に美しくて、狂いそうに艶(つや)やかで、いやらしくて、苛々するほど清らかで。

口吻けて抱きしめて目を潰して頬に触れて舐めて髪を撫ぜて手を繋いで脚を切り落として舌を搦めて躰を繋いで

変わらない欲望が、醜い願いが、相変わらずオレを支配していた。
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