せめて 抱きしめて

璃鵺〜RIYA〜

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せめて 抱きしめて〜転〜

せめて 抱きしめて〜転〜 31

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ああ・・・やめて・・・それ以上は、やめて・・・。

事実だけど、真実じゃない。
本当だけど、本心じゃない。

やめて。

それ以上、剛さんに何も言わないで!

ボクは体をゆっくり起こして、剛さんの声をする方を見た。

「・・違う・・・剛さん・・・」
「千都星・・・」

ドアの所に立ったままボクを見ている。
輪姦されたボクを、見ている。
困惑したような、どうしたらいいのかわからないような、不思議な表情をしていた。

「嘘じゃないですよ。部長のことも、ゲームだって言ってたって。部長が落ちるかどうか賭けてたんですよ」
「違う!違うっ!!」

それはボクがしつこいセフレに吐(つ)いた嘘だった。
あの時の小さな嘘が、こんなところで出て来るとは思わなかった。

部員が言い募(つの)る言葉と、ボクの否定の言葉に、剛さんが苛々したように眉根を寄せた。

「もういいっ!」

剛さんの怒鳴り声。
全員が黙り込んだ。

ボクは恐る恐る剛さんを見上げる。
剛さんはものすごく怒った表情で、口唇を噛み締めている。

「千都星。服を着なさい」
「はい・・・」

冷たい声に心が怯えた。
ボクは、何とか立ち上がって、脱がされた下着とズボンを履く。

「来い」

剛さんがそう言って外へと出て行く。
ボクは急いで後を追った。

助かった。
あそこから、あの状況から逃げることができた。

穏やかな太陽の下に出て、ボクは少しほっとしていた。
太陽の光が、今の悪夢を終わらせてくれたと思った。

もっと残酷な現実が待っているなんて、思ってもみなかった。
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