普通の会社員の異世界冒険物語〜程々に強いがちやほやされる訳でもなく、悪い奴もそんないない異世界で必死に生きる〜

ときすでにおすし(サビ抜き)

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第3章 王都ラーメン編

09.それぞれの旅立ち

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 とくに問題もなく、数日がすぎる。

 チロさんは、もともとラーメン店で働いていたので、店の動線も踏まえた観点で意見をくれた。彼女の知識には助けられることが多かった。ほんと良い人がきてくれてよかった。
 というわけで、ついにオープン当日となった。

 店の名前が「味噌ラーメン」という、え、正気?っておもう物になったが、アガリさんがこれしかないと押しているので仕方ない。
 麺屋アガリとかでもいいと思うんだけどなぁ・・・そもそも、味噌ラーメンってジャンル名にしちゃうと、いろいろ問題出るんじゃないかな・・・

 そういえば、あの俺の純情を弄んだリンさんは、結局来なかった。まじで、どうなってんの。焦らすの?焦らすやりかたなの?
 いまだに、リンさんのことを考えると、ドキドキするのと同時に苦い気持ちになる。ちくしょう。


 そして、昼前にオープン。

 匂いについられて、何人か入ってきた。まだ、席は埋まってないが、食べた人の反応は凄まじかった。
 これは、いけると確信する。

 ラーメンだけでなく、チャーハンも飛ぶように売れる。速攻で、味噌ラーメン&半チャーハンセットを前面に出したところバカ売れした。
 それと、デンジャーチキンのソース唐揚げもバカ売れているのが個人的に嬉しい。この唐揚げを持ち帰りで頼む人まで出てきている。これは、サイドメニューのバリエーションを考えている時に、フライヤーが設備としてあったので何か作ろうと考えていたら、チロさんが提案してくれたものだ。デンジャーチキンという大型の鶏の肉を使った唐揚げだ。それをこの世界のウスターソースに似たソースにつけて提供している。


 昼を過ぎても、どんどん客が増える。

 あと、チロさんには、昔馴染みが結構いるようで「チロちゃんの唐揚げが食べれるのかい!うれしいねぇ」などと微笑ましい会話をしている。
 よし、看板娘決定だな。

 あっという間に満席になり、俺とアガリさんチロさんとフル稼働で迎えうつ。外に列ができている。

 俺が用意したスープの入った器に、アガリさんがものすごいスピードで麺を茹でて入れて行く。
 それを受け取り、俺がトッピングを載せてチロさんに渡す。チロさんが会計やってるときは、カウンターからお客さんに提供。めまぐるしく動いていると、スープの残量が少なくなってきたので、スープ切れにつき終了の看板をだして、今並んでる人までで終了となった。

 怒涛の1日が終わった。
 終わると、リンさんが訪ねてきた。い、いまさら何しにきやがった。

「タケシごめーん、くるの遅くなって。初日にまにあってよかった。すごく美味しかったよ!」

 さんは、どした。さんは!
 キ、キスしたぐらいで、もう彼女きどりか!決して悪い気はしない、もっとそうゆうのください。


 どうやらリンさんは普通にならんで食べてくれていたようだ。帽子被ってたから、まったく気がつかなかった。

 出来上がった、改訂版ラーメンマップと激戦区ラーメンランキングなどが掲載される情報紙の試し刷りを持ってきて俺に見せてくれた。ラーメンランキングは、何かしらの方法で統計をとって、順位付けさせてこの激戦区をさらに盛り上げようとしていた。改訂版ラーメンマップには、この店が載っていた。いつのまに店名をきいたのだろうか、店名もちゃんと「味噌ラーメン」になっていた。

 その後、アガリさんがインタビューを受けている。これが情報紙に載るそうだ。
 それが終わると、俺のところにきて報酬の件を取り決めた。提示額がすごいことになっていた。すぐに真似できちゃうアイデア提供だけで、こんなにもらっていいのだろうかと正直思う。
 貰えるものは、貰らっとこう。余ったら、どっかに寄付でもすればいいし。

 あと、クーポンという仕組みをリンさんに教えると、「タケシあなた最高よ」と、またほっぺにチューして速攻で帰っていった。

「ま、ままままま、まったく、いいい、忙しい人だなぁ」

 アガリさんとチロさんがいたので、いつもあーなんですよという雰囲気をだして同様してない余裕のある大人のふりをした。



 さて、連日大賑わいで正直やばい。
 開店から数日で、激戦区の有名店入りを果たした。

 3人のうち、誰か1人でも倒れたら破綻するレベルに回転し始めた。
 すぐにバイトもチロさんの知り合いを紹介してもらって、増員して対応。チロさんのお姉さんが厨房経験者だったので、アガリさん指導のもと厨房に入ってもらって頑張ってもらっている。

 1日に捌けるお客さんの量を増やすために、仕入れ量を増やし、スープ用の鍋もさらに大きい物を用意した。
 売り上げもすごいことになり、バイト数も報酬もどんどん増えていった。
 人数を増やしたおかげで無理なく休みもとれ報酬も激戦区で一番となった。みんな幸せな職場環境が用意できている状態になったのがすごく嬉しい。
 アガリさんへ弟子入り願いも絶えない。店が狭いため何人も雇えないが、好きに学んでくれというスタイルだ。希望者には、閉店後に教えているようだ。


 そういえば、激戦区内の麺の評価基準に変化がみられスープに絡むというところが評価され縮れ麺が、濃い目のスープの店を中心に流行り始めた。
 潰れそうだった製麺屋のおじさんの所に今では、大量の注文が行くようになり、王都の縮れ麺といったらおじさんの所の麺というまでになった。

 あと、激戦区内の情報誌に全店舗で使えるクーポンが導入されて、その使用を追うことで、次週の情報紙のラーメンランキングに反映されることになった。
 数日で、この仕組みを作りあげたリンさんは、マジでやり手だと思う。また、クーポンについても、報酬がもらえた。
 なにか、思いついたら、またリンさんに教えることになっている。


 その後、ラーメンランキングでは、初回の週からトップ3の常連になり、この激戦区で成功したと言えるだろう。
 3ヶ月が経つ頃には、店がチロさん率いるバイトの数名人と、厨房はチロさんのお姉さんとアガリさんのお弟子1号さんで完全に回り始めた。

 そして、俺とアガリさんに時間ができるようになった。その時間で、次の行動の話をよくするようになった。
 アガリさんは、この成功をもとに味噌ラーメンの普及につとめたいとのこと、メディアへの露出や、ラーメンイベントの主催や、本の出版など、幅広く活動を行うとのことだ。この辺はリンさんとやりとりしているのを知っている。べ、べつに、気にしてなんかいない!

 俺も、依頼をこなすために、何度か店を空けたがとくに問題なかった。
 遠征する依頼は受けれないので、近場のばかりこなしている。気がつけば、Dランクになっていた。Cランクの試験とかどんなだろうな。店と両立は難しいかもしれないな。
 初めてまさか数ヶ月で、ここまでくるとは思わなかったが、そろそろ誰かに託して、自分たちはそれぞれやるべきことをやる時がきてるのかもしれない。

 誰が良いか考えることになったが、すぐに決まった。
 むしろ、だいぶ前から決まっていた。

 チロさんだ。

 オープン前からの参戦で、麺がきまらなくてアガリさんがダメになりかけた時も離れずにずっと俺たちと一緒に走ってくれた、チロさんだ。
 彼女は真面目で、愛嬌があって、いつも一生懸命で笑顔でいてくれた素晴らしい人だ。お客さんの中にファンがいて、店の顔とも言えるだろう。
 彼女以外に、俺とアガリさんの店は任せられない。

 もちろん、チロさんに急にお願いしちゃうと、あたふたしちゃうので、サポートとして、チロさんのお姉さんとチロさんのお姉さんといい感じになっている厨房にいる弟子1号さんにも頼もう。


 翌日、店が終わったあと、3人を呼ぶ。
 そして、この店をチロさんに任せたい伝えた。
 この店のオーナーをチロさんにして、俺とアガリさんは完全に手を引くことになる。特に売り上げとか渡さなくていいから、自分たちでうまくやってくれと。時々、手伝いはくるから安心してと伝える。

 チロさんは、口をパクパクさせて、驚いている。
 いきなり大繁盛している店を譲り受けることになり、どうしていいかわからない様子。まぁ、そうだよね。明日からとかじゃなくて、いいからとなだめる。
 徐々に、落ち着き始め涙を流しながら、笑顔で了承してくれた。


 チロさんのうちは、ご両親とチロさん姉妹の4人家族でラーメン屋をやっていたそうだ。お父さんが腰悪くして寝たきりになりお母さんは看病のため家に入り、お店はチロさんとお姉さんで必死で切り盛りしていたが、激戦区の中では生き残れなかったそうだ。
 決して不味くはないが普通のお店だった。デンジャーチキンのソース唐揚げは、ギリギリまでお店を支えてくれた、看板メニューだったそうだ。あと、なんと、この店がチロさん家のラーメン屋だったようだ。何代か別のオーナーが入ったが、居抜きでほとんどが内装にお金をかけなかったため、ほとんど当時のままだったそうだ。
 自分の家の店だった場所で、また働けることが毎日ただ嬉しかったそうだ。


 まって、お父さん、腰悪くしてんの?
 なんで、そうゆうこと言ってくれないの?
 俺、そうゆうの得意だから、治療とか得意だから!

 速攻で、おうちにお邪魔して、お父さんの腰を直す。念のため数日通ってリハビリをする。以前よりも健康体になり、またチロさんに泣かれた、そしてすごい感謝された。今ではラーメン屋の厨房に立っている。
 お姉さんとお弟子1号さんとの関係に関して、思い悩む余裕すらあるようだ。


 また数ヶ月が過ぎても店も相変わらず大盛況。
 アガリさんが教えたお弟子さんの何人かが故郷に帰り味噌ラーメンの店をオープンした。その時は、アガリさんも俺も、現地に行って手伝った。


 さて、引き継ぎも順調に終わり、俺とアガリさんは、店から離れる日となった。
 王都から離れる訳じゃないけども、これからはよほどのことがない限り、店には客としてくることになる。アガリさんは、しばらくリンさんと執筆活動をするそうだ。嫉妬なんてしてない。
 俺は、とりあえず、冒険者でCランクに上がれるように頑張ろうと思う。

 そういえば、あれから何度かマークとエリサと一緒に依頼をこなしているうちに、固定パーティに誘われたんだった。
 格闘家と僧侶とは、冒険者性が合わなかったそうで、別の街に行ってしまったらしい。まだ回答してないが、あいつら嫌いじゃないから、しばらくパーティ組んでやるか。

 あと、マークとエリサは付き合ってないというか、エリサがマークのことを一方的に好きなようで、マークはそれに気が付いていないようだ。

 まじで、マークお前なんなの。エリサがかわいそうじゃん。
 とりあえず、ちょっとエリサを手伝ってやるつもりだ。
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