上 下
38 / 46
第6章 色恋沙汰編

01.カルディアとのデート 前編

しおりを挟む
 翌日。いつものようにカルディアに起こされ、のそのそ支度して食堂でぼーっとコーヒーを飲む。
 みんなが起きてきて、同じテーブルについた。

 今後どうしようかという話を始める。
 ダンジョンの41階に挑むか、ランクをあげるか。

「ダンジョンは、急ぐ必要無いと俺はおもうんだけど、みんなどうかな。まずランクを上げて上位ランクの依頼を受けないか?」

 皆、どっちでもいいよという顔をしている。

「じゃあ、ランクを上げるでいいな。今日からランク上げのために依頼をバンバンこなそう」

 マークが手をあげる。めずらしい。

「はい、マーク」

「申し訳ないんだが、2日ほど休んでもいいか?」

「お、どうした?休みは全然いいけど」

「ちょっと個人的なことなんだ。申し訳ない」

「わかった。じゃあ、今週は休みにしよう。最近ずっと休み取ってなかったしな。資金も問題ない。一息つこう」

 皆、了承する。

「じゃぁ、今日からお休みだ。解散」

 マークとエリサは部屋に戻っていった。



 カルディアは、席に残ってる。

「よし、タケシ。せっかくの長めの休暇だ。修行しよう。この前私が修行した次元に連れてってやる」

「聞いてなかったのか?休むんだって。修行とかダンジョンとかで、休みとってなかったろ?だから、長めに休み取ろうって話したでしょーが。なんで修行しようとしてんだよ」

「私はいつも休みの日、修行しているぞ」

「確かにお前いつも修行したりなんか作ってるけど」

「だろ?じゃあ、修行しよう」

「まてまて、だろじゃなくて。今回は、修行とか製作依頼とかやらないで、のんびりしよう」

「別にいいが、なにするんだ?」

「そ、そうだな」

 どうしよう。一緒になにかする流れになったぞ。
 ちょっとドキドキする。


「・・・街をぶらぶら歩いたり、公園でぼーっとしたり」

 なんとなく夢でみたカルディアとのデートが思い浮かんだ。

「それ楽しいのか?」

「た、楽しいかどうは人それぞれだが、俺は楽しいかな」

「ならいいぞ。今から行くか?」

「え、いいの!?ちょ、まって、雰囲気が大切なんだって。街を歩く服装だから防具とかいらないし、あと、待ち合わせとかしよう」

「待ち合わせ?ここで待ち合わせじゃないのか?」

「いや、中央地区の噴水の前に、10時に待ち合わせにしよう」

「なんでわざわざ、別の場所なんだ」

 面倒そうなカルディアを強引に説得して部屋に送り出す。一人テーブルに残り、コーヒーを一気に飲む。
 これ、デートだよな?これはもうデートだ。
 うっきうきで、部屋に戻る。そうだ、風呂入ろう。ヒゲもしっかり剃って。
 身だしなみ揃えて、比較的くたびれてない服装に着替えて。もちろん下着も俺が持ってるやつの一番新鮮なのにした。 





 そして、待ち合わせ場所に到着。
 まだ30分もある・・・だいぶ早くついてしまった。
 やっべ、めっちゃ緊張してきた。別のことを考えよう。


 ここからは、王都中層への門がよく見える。

 噴水に腰掛けて、ぼーっと門を見る。
 ん?あれはマークかな。門の方に向かっていった。
 そういえば、あいつどうしたんだろ。聞けばよかったかな。
 まぁ、個人的なことって言ってたし、深く聞かない方がいいんだろうな。
 なんかあれば、相談してくるだろうし。
 
 また、ぼーっとする。
 忙しなく人が行き来する。結構人多いな。さすが王都の中央地区。
 今日もいい天気だ。空の雲を見ながら、なんの形に見えるかを考え始めた時、声をかけられた。
 

「お、おい。タケシ。待たせてすまん」

 カルディアの声が聞こえて振り向くと、すごく可愛らしい女神の方がいらっしゃいました。
 え、ど、どしたの?どうしちゃったの?そんな可愛い服もってなかったでしょ?
 あれ、お化粧してない?うっすらお化粧してない?髪にも編み込みはいってるし・・・。
 うわ、直視できない。この子に、何がおこったの。

「お、おい。ジロジロ見ないでくれ。恥ずかしいから」

 女神様が照れておられる。ありがてぇありがてぇ。拝みそうになった。いや、拝み始めてる。

「あの、そ、そのお姿は」

「こ、これは、エリサがやってくれたんだ。タケシと出かけるって言いに行ったら、いろいろ聞かれて・・・それで・・・服とか貸してくれたんだ」

 エリサ。今までごめん。お前は素晴らしいやつだ。お前は病んでなんかいない。あの黒いのは、誰がなんと言おうとルーさんだよ。
 あとで、なんかお礼しないと。なんか、黒いもの買ってけば喜ぶかな。

「化粧だって戦闘化粧ぐらいしかしたことなかったし、今まで髪とかもそのままだったから、急にやると変だよな」

「す、すごい可愛いです。全部いい、全部すっごくいい。その服もすごく似合ってる。髪型も、お化粧も全部がすばらしい。素晴らしいよカルディア」

「あ、ありがとう。あんまり変なこと言わないでくれ。恥ずかしいから」

 恥かしがってる。ここまで恥かしがってるカルディア初めて見た。




 とりあえず、市場に向けて歩き始める。
 チロさんの唐揚げ専門店がプレオープンしてるので、そこに行く予定だ。
 
 結構人通りが多く、さらにすれ違う人がカルディアを見てるのがわかる。
 こんな可愛ければ、誰でも見ちゃうよな。

 あれ、カルディアが静かだ。そうか、恥ずかしいのか。

「カルディア大丈夫か?」

「そ、その、人に見られるの慣れてなくて」

 気が付いてないだろうけど、お前いつもギルドで大声出して注目集めてるからな。今更だぞ。
 そういえば、こいつ知らない人が苦手なんだった。

「俺の後ろに隠れながら歩くか?あと道の端っこ歩こう」

 カルディアが小さく頷いて、俺の後ろを下向きながら歩きはじめた。
 なにその動き、そんな動きもカルディアさんできるんですか!!動きが可愛い。

 しかし、可哀想なことをしちゃったな。これは2回目のデートはできなそうだな。

 

 しばらく歩いていると、俺の服の裾が引っ張られ始めた。

 こ、これは・・・全身に緊張がはしる。俺は全神経を服の裾に集中する。
 間違いない。裾を持たれている。デート系鉄板ネタじゃないっすか!!!

 待てよ。これは、手を繋いだ方がいいかもしれない。
 きっとカルディアは、はぐれないように裾を持ったんだし。
 それの進化系は、手を繋ぐことだと思うんだ。
 市場は人がごった返している。そこでは裾だけでは心もとないよな常識的に。
 結論、手を繋ぐべきだ。 


 頑張れ俺。
 勇気を振り絞って、言うんだ!俺。
しおりを挟む

処理中です...